38H(f) 7.5cm対戦車自走砲
|
|
+概要
ドイツ軍がフランスに侵攻してきた1940年5月10日の時点で、ソミュアS35中戦車と共にフランス軍機甲部隊の主力戦車であったオチキス軽戦車は、エンジンや主砲の違いでH35、H38、そしてH39に分類され、各型合わせて800両以上を保有しており、同年6月22日のフランス降伏後にこの大半がドイツ軍に接収された。
ドイツ軍はオチキス軽戦車の装備を自軍仕様に改めた上で、H35軽戦車に「35H 734(f)戦車」、H38、H39軽戦車に「38H 735(f)戦車」の鹵獲兵器呼称を与え、フランスにおける国内防衛や警備といった二線級任務に使用した。
オチキス軽戦車は火力も装甲も貧弱で戦車戦力としてはあまり期待できなかったため、慢性的な自走砲の不足に苦しんでいたドイツ軍はこれらを自走砲の車台に転用することを計画した。
そして1942年末にベッカー特別生産本部(ドイツ陸軍兵器局パリ支局の工場の通称)に対し、オチキス軽戦車をデュッセルドルフのラインメタル・ボルジヒ社製の46口径7.5cm対戦車砲PaK40を装備する、対戦車自走砲へ改造することが命じられた。
対戦車自走砲に転用されたのはエンジンの出力が大きい38H 735(f)戦車が大半だが、現存する写真からごく一部に35H 734(f)戦車も用いられたことが分かっている。
対戦車自走砲への改造要領であるが、まずオチキス軽戦車の砲塔と操縦室前面装甲板から後ろの上部構造を外してから、車内に架台を設けて7.5cm対戦車砲PaK40/1を搭載し、周囲を10〜20mm厚の装甲板で囲んでオープントップ式の戦闘室を構成した。
内部スペースを拡大するために戦闘室の側面装甲板は大きく外側に張り出され、車体が小型ということもあって戦闘室は車体後端まで延長されていた。
本車と同じ要領で、装軌式牽引車ロレーヌ・シュレッパーに7.5cm対戦車砲PaK40/1を搭載したマルダーI対戦車自走砲では、主砲防盾は内装式になっていたが、この38H(f)対戦車自走砲の防盾は外装式に変更されており、マルダーI対戦車自走砲よりも厳めしいスタイルとなった。
主砲の俯仰角は−5〜+22度、旋回角は左右各30度ずつとなっていた。
38H(f)対戦車自走砲は1943年半ば頃までに24両が改造されており、フランス駐留の西部快速旅団に配備された。
西部快速旅団は改造車両の寄せ集め部隊であり、オチキス軽戦車やFCM軽戦車、ロレーヌ・シュレッパー等から改造された自走砲の大半がこの部隊に配備されて実戦投入されている。
|
<38H(f) 7.5cm対戦車自走砲>
車体長: 4.22m
全幅: 1.85m
全高: 2.14m
全備重量: 12.5t
乗員: 4名
エンジン: オチキスM1938 4ストローク直列6気筒液冷ガソリン
最大出力: 120hp/2,800rpm
最大速度: 36km/h
航続距離: 150km
武装: 46口径7.5cm対戦車砲PaK40/1×1
7.92mm機関銃MG34×1
装甲厚: 10〜34mm
|
<参考文献>
・「パンツァー2010年12月号 ドイツ対戦車砲の主力 7.5cmPaK40 (1)」 稲田美秋 著 アルゴノート社
・「第2次大戦 ドイツ戦闘兵器カタログ Vol.2 AFV:1943〜45」 後藤仁 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー2017年12月号 ドイツ軍捕獲戦闘車輌」 後藤仁 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー2022年10月号 ドイツ軍自走砲(6)」 寺田光男 著 ガリレオ出版
・「第2次大戦 フランス軍用車輌」 ガリレオ出版
・「世界の軍用車輌(1) 装軌式自走砲:1917〜1945」 デルタ出版
・「ジャーマン・タンクス」 ピーター・チェンバレン/ヒラリー・ドイル 共著 大日本絵画
・「捕獲戦車」 ヴァルター・J・シュピールベルガー 著 大日本絵画
・「異形戦車ものしり大百科 ビジュアル戦車発達史」 齋木伸生 著 光人社
・「図解・ドイツ装甲師団」 高貫布士 著 並木書房
|
関連商品 |
イーティーモデル 1/35 ドイツ 7.5cm KwK40戦車砲/7.5cm Pak40対戦車砲用 マズルブレーキ タイプ1 (3個入) P35-301 |
イーティーモデル 1/35 ドイツ 7.5cm KwK40戦車砲/7.5cm Pak40対戦車砲用 マズルブレーキ タイプ2 (3個入) P35-302 |
イーティーモデル 1/35 ドイツ 7.5cm KwK40戦車砲/7.5cm Pak40対戦車砲用 マズルブレーキ タイプ3 (3個入) P35-303 |