二式軽戦車 ケト
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+開発と部隊配備
二式軽戦車は「ケト車」の秘匿呼称で1941年に試作が開始された車両で、基本的には九八式軽戦車(ケニ車)の改良型である。
ケト車は車体・砲塔の開発は順調に進んだものの、搭載する主砲の開発が大幅に遅れたため主砲未搭載の状態で「二式軽戦車」として制式化され、しばらく生産されずに放置されることになった。
その後遅れていた主砲が完成したことで、ようやく1944年になって二式軽戦車の生産が開始されることになり、同年中に29両が完成したといわれる。
本車の後に開発された三式軽戦車(ケリ車)や四式軽戦車(ケヌ車)は、九五式軽戦車(ハ号車)の車体を流用した火力強化型であるため、二式軽戦車は日本陸軍が新規開発した最後の軽戦車となった。
二式軽戦車は空挺用の挺進戦車隊の主要計画戦車として開発されたため、ク-七グライダー搭載用として各部分の凹凸部を少なくするよう配慮して設計されていた。
1944年には第一挺進集団が編制されたが、その時滑空部隊も改編が行われた。
当時挺進戦車隊はまだ1個しかなかったが頭に「第一」という番号が付き、それと同時に歩兵中隊が増設され戦車、歩兵、自動車の各1個中隊と材料廠という編制になった。
二式軽戦車は軽快な戦車だったが、その能力を充分に発揮するためには歩兵と一身同体になって戦闘しなければならなかった。
そこで訓練も歩兵部隊と戦車中隊、つまり戦車1両と歩兵3名はいつでも一体となって行動するという戦法を考えて訓練に当たった。
しかし、1945年になると戦局の様相からグライダーに搭載して空中挺進するという見込みも無くなり、他の戦車と共に本土決戦に参加せざるを得なくなったのである。
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+攻撃力
前作の九八式軽戦車が搭載した一〇〇式三十七粍戦車砲はどちらかというと中途半端な主砲で、九五式軽戦車に搭載された九四式および九八式三十七粍戦車砲とそれほど威力には差が無かったが、二式軽戦車の主砲には威力が向上した新型の一式三十七粍戦車砲が採用された。
これは九八式三十七粍戦車砲の薬室を拡大し、砲身を延長したものである。
九八式三十七粍戦車砲の砲口初速が675m/秒、装甲貫徹力が25mm/500mであったのに対し、一式三十七粍戦車砲ではそれぞれ785m/秒、25mm/1,000mとなった。
なお一式三十七粍戦車砲の開発は1941年7月に着手されたが、長期に渡って様々な試験や改修が加えられた後、約2年後の1943年6月にようやく完成している。
このことが結果として二式軽戦車の生産開始を大幅に遅らせることに繋がり、二式軽戦車は登場時から性能的に時代遅れの存在になってしまった。
二式軽戦車の副武装は九八式軽戦車と同様、主砲と同軸に九七式車載重機関銃(口径7.7mm)を1挺装備していた。
弾薬搭載数は37mm砲弾が75〜93発、7.7mm機関銃弾が3,160発となっていた。
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+防御力
前作の九八式軽戦車では避弾経始を考慮して砲塔が円錐形にデザインされていたが、二式軽戦車では砲塔内容積を増やすために円筒形のデザインに変更された。
これは九八式軽戦車の砲塔が狭過ぎて、操砲操作に支障をきたすという不評に応ずる改良であった。
二式軽戦車の車体は九八式軽戦車のものがほとんどそのまま流用されており、装甲厚も変化していない。
砲塔改良の結果、二式軽戦車の重量は九八式軽戦車に比べて150kg程度増加したが、それ以外の寸法や性能には変化が無い。
九五式軽戦車に比べると全高が低く抑えられており、被弾確率と被発見率が低減したのはは防御上の進歩であった。
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+機動力
二式軽戦車の足周りは基本的に九八式軽戦車と変化は無く、エンジンも同じ統制型一〇〇式 直列6気筒空冷ディーゼル・エンジン(出力130hp)を搭載していた。
履帯は75mm幅の狭いタイプが用いられたが、これは半装軌式装甲兵員輸送車の履帯と同じものであった。
速度は草原で50km/h出すことができ、とにかく速かったという。
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<二式軽戦車>
全長: 4.10m
全幅: 2.12m
全高: 1.82m
全備重量: 7.2t
乗員: 3名
エンジン: 統制型一〇〇式 4ストローク直列6気筒空冷ディーゼル
最大出力: 130hp/2,100rpm
最大速度: 50km/h
航続距離: 300km
武装: 一式46口径37mm戦車砲×1 (75〜93発)
九七式車載7.7mm重機関銃×1 (3,160発)
装甲厚: 6〜16mm
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兵器諸元
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<参考文献>
・「パンツァー2006年11月号 空挺戦車として研究開発された九八式軽戦車と二式軽戦車」 高橋昇 著 アル
ゴノート社
・「パンツァー2013年9月号 帝国陸軍の戦車武装 戦車砲と車載機銃(下)」 高橋昇 著 アルゴノート社
・「パンツァー2002年6月号 AFV比較論 九八式軽戦車/ルクス」 斎木伸生 著 アルゴノート社
・「パンツァー2010年3月号 日本陸軍 九八式/二式軽戦車」 荒木雅也 著 アルゴノート社
・「日本の戦車と装甲車輌」 アルゴノート社
・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
・「異形戦車ものしり大百科 ビジュアル戦車発達史」 斎木伸生 著 光人社
・「帝国陸海軍の戦闘用車両」 デルタ出版
・「戦車名鑑 1939〜45」 コーエー
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