2S1「グヴォジーカ」122mm自走榴弾砲、2S3「アカーツィヤ」152mm自走榴弾砲と並び、これらを補う長射程の152mm自走加農砲として企図され1974年に採用、量産に入ったのが2S5「ギアツィント」(Giatsint:ヒヤシンス)である。 2S5自走加農砲は2S3自走榴弾砲と同じくウラル運輸車両工場(ウラルトランスマシュ)にて、共用車台によるファミリー化車両シリーズの一環として1950年代より開発が企図されていた。 本車は52口径152mm加農砲2A37を車体上面後部に外装式に搭載したもので、採用後はしばらく公開されず西側がはっきり存在を確認したのは1981年のことだった。 この砲は車体に搭載した状態でそのまま発射できるが、若干の準備が必要である。 これは車体が小型で砲発射のために充分安定しないためで、後部にある駐鋤を降ろし発砲時には車体を固定するようになっている。 操砲は電動式で、緊急時には手動操作が可能である。 なお砲の旋回角は左右各15度ずつで、俯仰角は−2〜+57度となっている。 面白いことに、ソ連軍は初めから2S5自走加農砲のみで必要量を満たしきることを予定しておらず、同様の仕様で牽引式の152mm加農砲2A36も同時開発しており、同時期に採用・量産化している。 そして牽引式を「ギアツィントB」、自走砲型を「ギアツィントS」と呼称していた(”B”はBuksiuruemuy:牽引式、”S”はSamokhodnuy:自走式の頭文字)。 2S5自走加農砲は、2S1自走榴弾砲や2S3自走榴弾砲が15〜18kmしか射程がないのを補うものであり、重量43.51kgの通常型榴弾(3OF-29)を最大射程28.5km、重量43.51kgのロケット噴進ブースター付き榴弾(3OF-59)を最大射程37kmまで飛ばすことができる。 なお榴弾以外に対コンクリート砲弾、核砲弾、化学砲弾も発射できる。 発射速度は、半自動装填装置を用いて5〜6発/分である。 ただしこれはバースト射撃の場合で、継続射撃だと2発/分程度となる。 砲弾および発射装薬(カートリッジ式)は30発分が車体後部のプラットフォーム下側に収納され、発射時にはベルトコンベアで取り出される。 装填手(2名)は、ベルトコンベアから砲弾と発射装薬をブリーチに装填するトレイに移し替える作業を行う。 車体の構造は前部右側にパワーユニットが搭載され、前部左側に操縦手席、その後ろにキューポラ式の車長席が設けられている。 車長席には回転銃架が設けられ、対地・対空用の7.62mm機関銃PKTが搭載されている。 同機関銃は、車内からのリモコン操作・発射が可能である。 他の操砲要員(3名)は車体後部左右の乗員コンパートメントに乗車でき、それぞれに外部視察用のペリスコープが設けられている。 本車には、NBC防護装置も装備されている。 2S5自走加農砲は、軍レベルの重砲兵旅団に配属されていると考えられている。 ロシア本国以外にはあまり輸出されていないようだが旧東ドイツには輸出されており、さらにそれをフィンランドが再輸入している。 |
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<2S5 152mm自走加農砲> 全長: 8.33m 車体長: 7.30m 全幅: 3.25m 全高: 2.76m 全備重量: 28.2t 乗員: 5名 エンジン: V-59 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル 最大出力: 520hp/2,000rpm 最大速度: 63km/h 航続距離: 500km 武装: 52口径152mm加農砲2A37×1 (30発) 7.62mm機関銃PKT×1 (1,500発) 装甲厚: 15mm |
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<参考文献> ・「パンツァー2001年9月号 ソ連・ロシア自走砲史(12) 長射程自走砲の登場」 古是三春 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2024年8月号 北朝鮮兵器カタログ」 荒木雅也 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2019年9月号 152mm自走榴弾砲 2S5」 アルゴノート社 ・「ロシア軍車輌写真集」 古是三春/真出好一 共著 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2020年5月号 赤の広場のソ連戦闘車輌写真集(5)」 山本敬一 著 ガリレオ出版 ・「グランドパワー2020年12月号 フィンランド軍の戦闘車輌(3)」 齋木伸生 著 ガリレオ出版 ・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」 ガリレオ出版 ・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」 デルタ出版 ・「異形戦車ものしり大百科 ビジュアル戦車発達史」 齋木伸生 著 光人社 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー ・「世界の装軌装甲車カタログ」 三修社 |
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