2S31「ヴェーナ」(Vena:ウィーン)120mm自走迫撃砲は、1997年にアブダビで開催された国際武器見本市「IDEX'97」で初めて公開された自走砲で、BMP-3歩兵戦闘車のファミリー車両の1つである。 本車の開発を担当したのはBMP-3歩兵戦闘車と同じくクルガン機械工場で、120mm迫撃砲搭載の砲塔周りのシステムの開発にはペルミのモトビリハ企業体が協力している。 モトビリハ企業体が開発した砲塔システムは当初、ヴォルゴグラード・トラクター工場が1975〜76年にかけて試作開発を進めていたオブイェークト934水陸両用軽戦車の車体に搭載され、1993年以来試験が行われてきた。 しかし1994年からは、すでに量産が開始されていたBMP-3歩兵戦闘車の車体を利用した方が今後の量産化や兵器輸出面では有利なことから、クルガン機械工場の積極的な参画の下現在の姿にまとめられてきたものである。 そういう点ではソ連崩壊後、ロシアが商業ベースで開発を進め始めた兵器のはしりといえるものである。 本車に搭載される120mm迫撃砲2A80は、同様のシステムを持つ2S9「ノーナS」自走砲に搭載される120mm迫撃砲2A60よりも長砲身のライフル砲である。 本砲の特徴は通常の120mm迫撃砲弾ならびに通常弾を使用できることで、フランス製の120mm迫撃砲弾まで使える。 迫撃砲として使用した場合の最大射程は7.2km、通常の榴弾(3VOF55、弾頭重量19.8kg)を使用した場合の最大射程は13kmである。 また弾頭重量13.2kgのHEAT(成形炸薬弾)も用意されているが直接照準射撃のみであるため、低圧砲身から撃ち出すこともあって有効射程はわずか1,000mである。 これは、あくまで緊急時の対戦車戦闘用である。 その他に長距離精密射撃用のレーザー誘導弾「キトロフ2M」が用意されており、この有効射程は13〜14kmといわれる。 砲弾の装填はT-72戦車シリーズの「カセートカ」システムと同様の自動装填装置によって行われるが、キトロフ2M誘導弾のみがマニュアル装填である。 あくまで見本市での発表データであるが、発射速度は8〜10発/分である。 車長用キューポラにはレーザー測遠機兼誘導装置が備えられている他、リモコン式銃架に7.62mm機関銃PKTが装備されており、砲塔前面には発煙弾発射機12基とレーザー検知装置が装備されている。 |
<2S31 120mm自走迫撃砲> 全長: 7.40m 車体長: 6.75m 全幅: 3.15m 全高: 2.60m 全備重量: 19.5t 乗員: 4名 エンジン: UTD-29M 4ストロークV型10気筒液冷ディーゼル 最大出力: 500hp 最大速度: 70km/h(浮航 10km/h) 航続距離: 600km 武装: 120mm迫撃砲2A80×1 (70発) 7.62mm機関銃PKT×1 (500発) 装甲厚: 10〜45mm |
<参考文献> ・「パンツァー2001年11月号 ソ連・ロシア自走砲史(14) 新型空挺自走砲の登場」 古是三春 著 アルゴノート 社 ・「パンツァー1999年3月号 ロシア軍装備 インアクション」 小林直樹 著 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2006年12月号 歩兵戦闘車 BMP (3)」 古是三春 著 ガリレオ出版 ・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」 ガリレオ出版 ・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」 デルタ出版 ・「世界の装軌装甲車カタログ」 三修社 |