以前、西側で「SO-152」と呼ばれていた2S3「アカーツィヤ」(Akatsiya:アカシヤ)152mm自走榴弾砲は、2S1「グヴォジーカ」122mm自走榴弾砲と同じく1971年にソ連軍で制式採用されたが、開発はずっと以前の1950年頃から着手されていた。 当時ウラル運輸車両工場(ウラルトランスマシュ)は、同一シャシーを用いた各種車両をシリーズ化しようと様々な試作車を製作しており、その中に152mm榴弾砲を搭載した試作自走砲SU-152Pなど2種類があった。 このファミリー車両シリーズで最も早く実用化されたのが、2K11「クルーグ」(NATOコードネーム:SA-4「ガネフ」)対空ミサイル・システム用の自走発射機2P24で1961年には実用化されたが、後は2S3自走榴弾砲にやや遅れて採用された2S5「ギアツィントS」152mm自走加農砲くらいで、なかなか陽の目を見なかった。 1950年代に試作された2種の152mm自走砲は一方が榴弾砲、もう一方が長砲身で長射程を狙った加農砲であったが、前者についてはようやく1960年代末に、25口径152mm榴弾砲D-20を改修した34口径152mm榴弾砲2A33を、360度旋回可能な完全密閉式砲塔に搭載するタイプとして形態がまとまった。 車内レイアウトは車体前部右側が機関室、前部左側が操縦室、車体後部が砲塔を搭載した戦闘室と、自走砲としては一般的であり乗員は4名である。 主砲の性能は重量43.5kgの高性能榴弾(OF-546)を使用して最大射程17.3km、ロケット補助榴弾を使用して最大射程24kmである。 152mm砲弾の搭載数は46発で装填補助装置が用意されており、最大発射速度は3発/分、継続で1時間に60発程度である。 なお徹甲弾や成形炸薬弾も用意されており、限定的ながら直接戦闘能力を有する。 1971年に制式採用された2S3 152mm自走榴弾砲は1個大隊当たり18両が配備され、牽引式の152mm榴弾砲D-1を装備していた自動車化狙撃師団の榴弾砲大隊に取って代わることになった。 また後に、戦車師団に配備されていた2S1 122mm自走榴弾砲とも交換されていった。 1975年には自動装填装置やパワーユニットの改良が図られ、以降はこの改良型「2S3M 152mm自走榴弾砲」に生産が移行した。 2S3Mと2S1両自走砲の実用化・配備により、ソ連地上軍は初めて本格的な自走榴弾砲を持つことになったが、装備化されてすぐに性能面(特に射程と発射速度)で西側自走砲に水を開けられてしまった。 このため後継車両の開発が模索され、2S3M 152mm自走榴弾砲については1989年に2S19「ムスタS」152mm自走榴弾砲が完成されたが、すでに軍は未曾有の財政難に陥っており装備改編は今日に至るもなかなか進んでいない。 2S3M自走榴弾砲はロシア軍で使用され続けている他、ポーランドやイラク、リビアに供与されて使用されている。 |
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<2S3 152mm自走榴弾砲> 全長: 8.40m 車体長: 7.765m 全幅: 3.25m 全高: 3.05m 全備重量: 27.5t 乗員: 4名 エンジン: V-59 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル 最大出力: 520hp/2,000rpm 最大速度: 60km/h 航続距離: 500km 武装: 34口径152mm榴弾砲2A33×1 (46発) 7.62mm機関銃PKT×1 (1,500発) 装甲厚: 15mm |
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<参考文献> ・「パンツァー2001年7月号 ソ連・ロシア自走砲史(10) 機甲部隊支援用自走砲の開発」 古是三春 著 アルゴ ノート社 ・「パンツァー2013年10月号 ソ連初の近代的自走砲 2S3アカーツィア」 柘植優介 著 アルゴノート社 ・「パンツァー1999年6月号 最近のロシア軍AFV」 古是三春 著 アルゴノート社 ・「ロシア軍車輌写真集」 古是三春/真出好一 共著 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2020年5月号 赤の広場のソ連戦闘車輌写真集(5)」 山本敬一 著 ガリレオ出版 ・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」 ガリレオ出版 ・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」 デルタ出版 ・「異形戦車ものしり大百科 ビジュアル戦車発達史」 齋木伸生 著 光人社 ・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著 三修社 ・「世界の装軌装甲車カタログ」 三修社 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー ・「世界の最新陸上兵器 300」 成美堂出版 |
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