24式装輪装甲戦闘車
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+開発
24式装輪装甲戦闘車は、現在配備が進められている陸上自衛隊初の装輪式IFV(歩兵戦闘車)である。
陸上自衛隊はこれまで、装軌式の89式装甲戦闘車(略称:89FV)を主力IFVとして運用してきたが、同車は不整地における機動性に優れる反面、装輪式車両に比べて製造・運用コストが高いため、大量調達が難しいことが問題となっていた。
本来IFVは、機甲戦力の要であるMBT(主力戦車)と密接に連携してこれを支援する役目を担うため、MBTの1.5〜2倍の数を揃えるのが望ましいが、89FVの調達数は1989〜2004年度の16年間でわずか68両に留まっており、陸上自衛隊が保有するMBTに対して全く数が足りない状況であり、不足する分は73式装甲車や96式装輪装甲車などの、武装が貧弱なAPC(装甲兵員輸送車)で代用しているのが現状である。
このため、防衛省は不整地での機動性を犠牲にしてでも、安価な装輪式IFVを大量調達する方針を決定した。
陸上自衛隊では2017年度から、初の火力支援用装輪式装甲車である16式機動戦闘車(略称:16MCV、開発・生産の主契約者は三菱重工業)の実戦部隊への配備を開始しており、退役した74式戦車に代わる機甲戦力の一翼を担わせている。
また防衛省は2014年度から小松製作所に対して、96式装輪装甲車の後継となる8輪型の新型APCを、「装輪装甲車(改)」の呼称で開発させており、この16MCVもしくは装輪装甲車(改)の車体をベースにファミリー車両を開発することで、従来運用してきた装軌式の89FVに代わる装輪式IFV、6輪型の87式偵察警戒車に代わる8輪型の偵察用装甲車、96式自走120mm迫撃砲および、牽引式の120mm迫撃砲RTに代わる装輪式自走迫撃砲を調達することを計画した。
そして、この一連のファミリー車両に「共通戦術装輪車」という呼称を与えると共に、2018年1月に三菱と「共通戦術装輪車システム設計A」、続いて同年2月にコマツと、「共通戦術装輪車システム設計B」の開発契約を締結した。
このように共通戦術装輪車は当初、三菱とコマツによる競争試作の形で開発がスタートしたが、2018年6月にコマツ側が、装輪装甲車(改)の開発を断念する意向を表明する事態となった。
装輪装甲車(改)が開発中止となったことで、そのファミリー車両である共通戦術装輪車の開発からもコマツは撤退することとなり、このため共通戦術装輪車の開発は、16MCVをベースに三菱が単独で請け負うことになった。
共通戦術装輪車の開発の細かなスケジュールは不明であるが、2022年9月28日に、共通戦術装輪車の歩兵戦闘型と機動迫撃砲型の試作車が、大分県の日出生台演習場で実施した射撃試験から帰還する様子を捉えた、スクープ写真がSNS上に流出している。
2024年9月4日に公表された、令和7(2025)年度予算概算要求の概要において、共通戦術装輪車 歩兵戦闘型の制式呼称が「24式装輪装甲戦闘車」、共通戦術装輪車 機動迫撃砲型の制式呼称が「24式機動120mm迫撃砲」であることが判明した。
なお共通戦術装輪車 偵察戦闘型については、この時点では制式呼称は与えられていなかった。
24式装輪装甲戦闘車は2024年度から調達が開始され、2024年度予算で24両、続く2025度概算要求では18両で218億円が要求された。
本車は最終的には、232両が調達される予定である。
今後は、全国の即応機動連隊に優先的に配備されるものと見られる。
前述のように、24式装輪装甲戦闘車は16MCVの車体をベースとして流用しており、105mm戦車砲を装備する16MCVの3名用砲塔を撤去し、代わりに、アメリカのNGIS(ノースロップ・グラマン・イノベーション・システムズ)社製の、30mm機関砲Mk.44ブッシュマスターIIを装備する2名用砲塔を搭載している。
また、砲塔リングの前端以降の車体後半部は天井が嵩上げされ、8名の完全武装歩兵を収容できる兵員室に改装されている。
装軌式の89FVに比べると、24式装輪装甲戦闘車は不整地での機動性に劣るが、本車は主に即応機動連隊に配備され、そこで装輪式の16MCVに随伴して行動することを主目的として開発された車両であるため、MBTに随伴できる能力はあまり求められていない。
89FVのようにATM(対戦車ミサイル)を装備していないため、対戦車戦闘能力では見劣りするが、最新のAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)を使用すれば、主武装の30mm機関砲でもMBTを撃破可能である。
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+攻撃力
24式装輪装甲戦闘車は16MCVの車体をベースとして流用しており、日本製鋼所製の52口径105mm低反動ライフル砲を装備する16MCVの3名用砲塔を撤去し、代わりに、NGIS社製の80.3口径30mmチェインガンMk.44「ブッシュマスター(Bushmaster:中南米に生息する大型の毒ヘビ)II」と、同社製の7.62mmチェインガンMk.52を同軸に装備する、2名用砲塔を搭載している。
本車の主武装であるMk.44は、アメリカ陸軍の主力IFVであるM2ブラッドリー歩兵戦闘車向けに、同国のヒューズ・ヘリコプターズ社(現NGIS社)が1978年に開発した、87口径25mmチェインガンM242ブッシュマスターを基に、アライアント・テックシステムズ社(現NGIS社)が30×173mm仕様にスケールアップしたモデルである。
構成部品の約70%はM242と共通で、給弾機構もM242と同様に二方向からの装填に対応して、異なる弾種を速やかに切り替えて使用できる。
なお、チェインガンは遊底をチェイン駆動する独特の機構を持ち、たとえ不発弾があっても強制的に排莢を行うため、射撃が途絶えることは無い。
Mk.44の発射速度は100〜200発/分で、使用弾薬は、戦後第2世代MBTの前面装甲を貫徹可能なAPFSDS、陣地制圧や火力支援に使用するHE(榴弾)、航空機に対処するHETF(時限信管付榴弾)等が用意されている。
24式装輪装甲戦闘車に搭載されているMk.44は、砲安定装置により垂直・水平の2軸が安定化されているため走行間射撃が可能で、最大射程は3,000mあり、16MCVと同等のFCS(射撃統制装置)により、全天候で2,000m先の目標を制圧できる。
一方、本車の副武装であるMk.52は、アメリカ陸軍が運用していたM60戦車シリーズの主砲同軸機関銃として、ヒューズ社が1980年に開発した7.62×51mm仕様のチェインガンである。
Mk.52は「L94A1」の制式呼称で、イギリス陸軍のチャレンジャー2戦車やウォーリア歩兵戦闘車の主砲同軸機関銃として採用された、実績のあるチェインガンであり、またこれまで、陸上自衛隊の戦闘車両の主砲同軸機関銃として採用されてきた、74式車載7.62mm機関銃の生産メーカーである住友重機械工業が、データ改竄の不祥事を理由に機関銃の生産から撤退することになったことも、Mk.52が採用された理由の1つであると考えられる。
Mk.52は発射速度520〜550発/分、銃口初速862m/秒、ベルト給弾方式を採用している。
また24式装輪装甲戦闘車は、陸上自衛隊の最新鋭MBTである10式戦車に搭載されている中隊・小隊単位のC4Iシステムである、10式戦車ネットワーク(略称:10NW、開発担当は三菱重工業)と同様のC4Iシステムを搭載しており、中隊・小隊単位でのリアルタイムな指揮統制・情報共有・射撃指揮が可能となっている。
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+防御力
24式装輪装甲戦闘車の車体と砲塔は、共に圧延防弾鋼板の全溶接構造になっているが、その防御力に関しては一切明らかにされていない。
しかし、本車のベースとなった16MCVの防御力が、車体前面で20mm機関砲弾の直撃、それ以外の部分で12.7mm重機関銃弾の直撃に耐えられる程度といわれているので、本車もそれと同程度の防御力は備えていると推測される。
24式装輪装甲戦闘車の砲塔は、16MCVの砲塔を小型化したような感じで形状が似ており、砲塔前面と側面に空間装甲が採用されている点も同様である。
これらの空間装甲は、容易に着脱できるようにモジュール式の構造になっており、こういうところも16MCVの砲塔と同じである。
また、24式装輪装甲戦闘車の車体前面と側面には16MCVと同様、基本装甲の上に防弾鋼板と思われるモジュール式の増加装甲板がボルト止めされている。
このように車体の増加装甲をモジュール式にしているのは、必要に応じてより防御力の高い増加装甲を取り付けられるように、設計したためではないかと推測される。
24式装輪装甲戦闘車の車内レイアウトは、車体前部左側がパワーパックを収納した機関室、前部右側が操縦室、車体後部が8名の完全武装歩兵を収容する兵員室となっている。
搭乗兵員の居住性を向上させるため、砲塔リングの前端以降の車体後半部は天井が嵩上げされている。
また兵員室の後面は乗員の乗降に用いるため、大型のランプドアが設けられている。
ランプドアの中央には右開き式の縦長のドアが設けられており、ランプドアを閉鎖した状態ではこのドアを使用して乗降を行う。
なお、24式装輪装甲戦闘車の固有の乗員は車長、砲手、操縦手の3名で、車長が砲塔内右側、砲手が砲塔内左側、操縦手が操縦室内に位置するようになっており、これは前作の89FVと変わらない。
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+機動力
24式装輪装甲戦闘車のパワーパックは、ベースとなった16MCVと同様、三菱重工業製の4ストローク直列4気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力570hp)と、トルク変換機付きの自動変速・操向機を組み合わせており、戦闘重量が26.0tなので出力/重量比は21.9hp/tという高い値である。
パワーパックは車体前部左側の機関室に収容され、機関室の側面には排気口とラジエイター・グリルが、上面には吸気口が設けられている。
24式装輪装甲戦闘車のサスペンションは、三菱とダイキン工業が共同開発した油気圧式サスペンションが採用されており、全輪が独立懸架されている。
駆動方式は、8×8と8×4を選択できるようになっていると推測されており、道路上では燃費効率の良い8×4方式で走行し、不整地ではグリップ力に優れる8×8方式に切り替える。
また、本車は最近の装輪式装甲車では必須の装備となっている、CTIS(タイヤ空気圧中央制御装置)も備えていると思われる。
車体の方向転換は前2軸が操向して行うようになっており、操縦手にはパワーステアリング付きの円形の操向ハンドルが用意されている。
動力伝達は、車体下部の真ん中に通った1本の推進軸から、ディファレンシャル・ギア(差動歯車)を用いて左右に分配する構造を採っており、同じ8輪装甲車ながら、96式装輪装甲車やNBC偵察車とは異なっている。
24式装輪装甲戦闘車のタイヤについては、ブリヂストン社製のL302ランフラット・タイヤ(395/85R20)を装着している。
これらの足周りによって、本車は路上最大速度100km/hという高い機動性能を発揮する。
本車の航続距離については明らかにされていないが、ベースとなった16MCVの路上航続距離が800km程度といわれていることから、それに近い値ではないかと推測される。
前作の89FVと比較すると不整地での機動性では劣るものの、路上での機動性能の高さが24式装輪装甲戦闘車の最大の長所といえるであろう。
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<24式装輪装甲戦闘車>
全長: 8.10m
全幅: 3.00m
全高: 2.90m
全備重量: 26.0t
乗員: 3名
兵員: 8名
エンジン: 三菱 4ストローク直列4気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 570hp/2,100rpm
最大速度: 100km/h
航続距離:
武装: 80.3口径30mm機関砲Mk.44ブッシュマスターII×1
7.62mm機関銃Mk.52×1
装甲厚:
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<参考文献>
・「パンツァー2023年12月号 16式機動戦闘車ファミリー 共通戦術装輪車比較」 アルゴノート社
・「パンツァー2022年12月号 共通戦術装輪車 歩兵戦闘車型&機動迫撃砲型」 アルゴノート社
・「パンツァー2023年11月号 令和6年度概算要求の注目点」 三鷹聡 著 アルゴノート社
・「パンツァー2024年12月号 陸上自衛隊 共通戦術装輪車」 アルゴノート社
・「パンツァー2024年4月号 軍事ニュース」 荒木雅也 著 アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート68 16式機動戦闘車」 アルゴノート社
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