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05式水陸両用突撃砲





●開発

中国軍は旧式化した63式水陸両用軽戦車の後継車両として、1990年代末に63A式水陸両用軽戦車を開発した。
中国が新型の水陸両用軽戦車を必要とした理由は、主に台湾への上陸侵攻を想定してのことと思われる。
63A式水陸両用軽戦車は、主砲が63式水陸両用軽戦車の85mm戦車砲から105mm低反動戦車砲に換装されたことで火力が大幅に向上し、新型エンジンの採用によって水上航行速度も63式水陸両用軽戦車に比べて向上していた。

しかし63A式水陸両用軽戦車は、開発期間を短縮するために63式水陸両用軽戦車の車体設計を流用していたため基本設計が古く、性能的にやや不満足な部分があった。
そこで中国軍は、当時湖南江麓機械集団が開発を進めていた水陸両用の新型装軌式IFV(後の05式水陸両用戦闘車)の車体をベースに、新たな水陸両用突撃砲を開発することを計画した。

05式水陸両用戦闘車は開発当初から様々な派生車両のベース車体として用いることが計画されており、水陸両用突撃砲以外にも装甲指揮車型、装甲回収車型などが開発されている。
こうして誕生した新型水陸両用突撃砲は、「05式両棲突撃車」(ZTD-05)として制式化されて2006年から量産が開始され、現在陸軍の水陸両用機械化部隊に250両、海軍陸戦隊に73両配備されている。

これに伴って、63A式水陸両用軽戦車は約500両程度で生産終了となった。
なお、05式水陸両用戦闘車のファミリーは少数ながら輸出も行われており、05式水陸両用突撃砲が「VN-16」の輸出名称で10両、05式水陸両用戦闘車が「VN-18」の輸出名称で10両、05式水陸両用回収車が数両、ベネズエラ海兵隊に輸出されている。


●構造

05式水陸両用突撃砲の車体は基本的に05式水陸両用戦闘車と同様のもので、中国軍のAFVとしては珍しく防弾アルミ板の溶接構造となっている。
これは浮航性を確保するために軽量化を図る必要性があったためで、水上航行する際の安定性を確保するため車体の前部は大きく舟型にオーバーハングさせられており、水上航行時の水中抵抗を軽減するために足周りの上部はサイドスカートに覆われている。

車体の装甲防御力については不明であるが、全周に渡って7.62mm弾の直撃や至近距離で炸裂した榴弾の破片に耐える程度と思われる。
なお、車体前部のオーバーハング部は空間装甲の役割も果たしており、対戦車ミサイルやHEAT弾などの成形炸薬弾頭に対する防御力を大きく向上させている。
また、車体側面と後面の装甲板も空間装甲になっているといわれる。

水上航行時には車体前部に設置されたボウ・フラップと車体後部に設置されたトランサム・フラップを展開させ、造波抵抗を軽減させて高速航行を可能にしている。
本車に搭載されているエンジンは、中国軍の最新鋭MBTである99G式戦車に搭載されているWR703/150HB V型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力1,500hp)をベースにしており、陸上走行時には591hp、水上航行時には1,577hpの出力を発揮するように設定されている。

変速機はCH400流体トルク変換機付き自動変速機が採用されており、陸上走行も水上航行もパワーステアリング式のハンドルにより操縦を行う。
水上航行時の推進力は車体後部に装備された2基のウォーター・ジェットで得るようになっており、05式水陸両用突撃砲は水上を20〜30km/hの速度で航行することが可能である。

05式水陸両用突撃砲の砲塔は、63A式水陸両用軽戦車の砲塔と同様に平面で構成された圧延防弾鋼板の溶接構造となっているが、居住性を考慮してやや大型化されているようである。
砲塔周囲の前半部にはセラミックの付加装甲が装着されており、成形炸薬弾に対する防御力が強化されている。
また砲塔周囲の後半部には格子状の収納バスケットが設けられており、これも成形炸薬弾に対する補助装甲の役割を果たすようになっている。

05式水陸両用突撃砲の武装は63A式水陸両用軽戦車と同様で、主武装として多孔式の砲口制退機が装着された105mm低反動戦車砲を装備している他、副武装として主砲と同軸に86式7.62mm機関銃、砲塔上面右側の装填手用ハッチの前方に85式12.7mm重機関銃を装備している。
また砲塔の左右側面前部には、各4基ずつ発煙弾発射機が装備されている。

05式水陸両用突撃砲の主砲は、63A式水陸両用軽戦車のものに比べて駐退復座機が改良されて射撃時の反動が軽減されており、FCS(射撃統制システム)の改良も相まって水上航行時でも高い命中精度を発揮する。
使用弾種は射距離2,000mで460〜500mmのRHA(均質圧延装甲板)を貫徹するAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)、最大射程4,000mのHE(榴弾)、HEAT(対戦車榴弾)、最大射程5,000m、装甲穿孔力550〜600mmのGP-2砲腔内発射式対戦車ミサイルが用意されている。

05式水陸両用突撃砲の乗員は4名で砲塔内左側に砲手、その後方に車長、主砲を挟んで右側に装填手が位置し、車体前部左側に操縦手が位置する。
車体前部右側にはパワーパックが収納されており、63A式水陸両用軽戦車のようなリアドライブではなくフロントドライブ方式を採用している。

これはベース車体がIFVのものであるため、車体後部に兵員収容スペースを設ける必要があったためで、05式水陸両用突撃砲では兵員収容スペースを主砲弾薬庫に流用している。
転輪の数は63A式水陸両用軽戦車と同様に片側6個であるが、転輪のサイズがかなり小型化されているのが目立つ。
サスペンションについては、従来通りトーションバー(捩り棒)方式を採用している。


<05式水陸両用突撃砲>

全長:    9.50m
全幅:    3.364m
全高:    3.00m
全備重量: 26.0t
乗員:    4名
エンジン:  WR703/150HB 4ストロークV型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 591hp(浮航 1,577hp)
最大速度: 65km/h(浮航 20〜30km/h)
航続距離: 500km
武装:    105mm低反動ライフル砲×1
        85式12.7mm重機関銃×1
        86式7.62mm機関銃×1
        GP-2対戦車ミサイル
装甲厚:


<参考文献>

・「パンツァー2010年5月号 建国60周年記念軍事パレードに見る中国軍用車輌カタログ」  アルゴノート社
・「パンツァー2019年5月号 能勢伸之のツキイチ安全保障(3)」 能勢伸之 著  アルゴノート社
・「パンツァー2014年6月号 各国の海兵隊(9) 中国陸戦隊」 荒木雅也 著  アルゴノート社
・「パンツァー2010年7月号 中国陸軍 04式戦闘兵車」 前河原雄太 著  アルゴノート社
・「パンツァー2020年9月号 特集 水陸両用戦闘車輌」 宮永忠将 著  アルゴノート社
・「パンツァー2019年9月号 05式水陸両用軽戦車」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2021〜2022」  アルゴノート社
・「10式戦車と次世代大型戦闘車」  ジャパン・ミリタリー・レビュー
・「決定版 世界の戦車FILE」  学研


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