05式155mm自走榴弾砲 |
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●開発 従来、中国軍はソ連・東欧系の152mm口径を砲兵の標準口径として長く用いてきた。 そのため、中ソ対立によりソ連の技術協力が得られなくなった後に独自開発した83式自走榴弾砲なども、弾薬の互換性を考慮して152mm口径の砲身を搭載していた。 しかし1970年代になって西側との関係が改善されたことで、中国軍首脳部は1982年に砲兵の次世代口径として西側の155mm口径も採用する方針を決定した。 まず西側から45口径155mm榴弾砲の技術を導入して、輸出専用の牽引式榴弾砲と自走榴弾砲を製作することで自国技術の改善を図っていくことが計画された。 これによりまず牽引式のPLL-01とGM-45の両155mm榴弾砲が製作され、それに続いて88式(PLZ-45)155mm自走榴弾砲が開発された。 当初はこの輸出用の両者の後に中国軍向けの155mm榴弾砲を生産・配備する予定だったのだが、1980年代後半から東西冷戦の終結やソ連の崩壊など目まぐるしく国際情勢が変化したことで、中国に対するソ連軍の脅威が著しく低下し、さらに中国軍の中で海・空軍の優先度が大幅に向上したことで、陸軍の予算規模は縮小を余儀なくされていった。 中国陸軍にとってはPLL-01榴弾砲や88式自走榴弾砲などを導入した場合、それまで構築してきた152mm口径の従来型の砲兵装備を全面的に更新することになり、そのためには巨額の予算投下と砲兵科将兵の再訓練が必要となる。 さらに新口径の導入により、大量にストックしてある152mm砲弾が無駄になることなども問題とされ、結局このようなデメリットを支払ってまで新口径に移行することは得策でないと判断されてしまったのである。 だがその一方で、着実に進化を続ける各国の155mm榴弾砲の存在は中国陸軍にとって気になるものであり、自軍向けの新口径自走榴弾砲の研究開発だけは続けることにした。 そのため05式155mm自走榴弾砲は開発開始が1990年、試作車の完成が2003年、制式化が2005年と開発期間が非常に長いものとなってしまったのである。 05式自走榴弾砲は制式化された2005年に初めて存在が確認され、2007年から部隊配備が開始されている。 2015年の時点で、少なくとも276両が実戦配備されている模様である。 ちなみに本車の中国軍における制式名称は「05式155毫米自行加榴砲」(PLZ-05)であるが、「加榴砲」とは「加農榴弾砲」(長砲身の榴弾砲)のことである。 05式自走榴弾砲の派生型としては、同じコンポーネントを流用して開発された弾薬運搬車が実用化されている。 |
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●構造 05式155mm自走榴弾砲の主砲は、日本の99式自走155mm榴弾砲や韓国のK9サンダー155mm自走榴弾砲、ドイツのPz.H.2000 155mm自走榴弾砲と同様に国産の52口径155mm榴弾砲が採用されている。 主砲弾薬はNORINCO(中国北方工業公司)が開発した榴弾、ベースブリード榴弾、ロケット補助榴弾などが用意されており、ロケット補助榴弾を最大装薬で発射した場合の最大射程は50kmを超えるものと推測される。 また中国は1990年代にロシアから152mmレーザー誘導砲弾「クラスノポール」の技術提供を受けて、国産の155mmレーザー誘導砲弾GP-1を開発している。 GP-1は中間誘導は慣性航法式で、終末誘導には前線観測員によるレーザー照射を利用したセミアクティブ・レーザー誘導方式を採用しており、最大射程20kmまでの目標に対する攻撃が可能となっている。 主砲には自動装填装置が備えられており、これにより最大8〜10発/分、持続射撃では3〜4発/分の発射速度を実現している。 05式自走榴弾砲の車体と砲塔は圧延防弾鋼板の溶接構造となっており、車内レイアウトは車体前部左側が操縦室、前部右側が機関室、車体後部が全周旋回式砲塔を搭載した戦闘室という、近代的自走砲の標準的なものとなっている。 エンジンは国産の8V150 V型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力800hp)を搭載しており、路上最大速度55km/hの機動性能を発揮する。 サスペンションは油気圧懸架方式を採用しており、車体の高さを自由に変更することが可能である。 主砲射撃時にはサスペンションをロックして、車体全体で射撃時の反動を吸収するようになっている。 このため、従来の自走砲のように射撃時の反動を吸収するための駐鋤を備えていない。 05式自走榴弾砲の乗員は5名で、操縦手以外の4名は砲塔内に位置する。 砲塔内の配置は左前方に砲手、主砲を挟んで右側に車長、砲手と車長の後方に装填手が1名ずつ位置する。 砲塔の左右側面にはそれぞれ前開き式のドアが設けられており、砲塔乗員はここから乗降を行う。 砲塔の後面にはAPU(補助動力装置)が設置されており、停車時の砲塔駆動や各種電子装備の稼働に必要な電力を賄うようになっている。 05式自走榴弾砲は、大隊クラスの射撃指揮所で一括射撃できる射撃自動統制システムを中国軍の自走砲として初めて搭載しており、これにより陣地展開、各自走砲の照準・修正、射撃指揮所による一斉射撃までの過程を30秒で行うことが可能となっている。 また俯仰角を変更しつつ連続射撃を行うことで一門の砲から複数の砲弾を発射し、同時に着弾させる同時弾着射撃能力も獲得するなど、従来の中国製自走砲とは一線を画す近代的自走砲に仕上がっている。 05式自走榴弾砲は中国軍の自走砲としては初めて主砲弾薬の自動装填装置を導入しているが、その開発についてはかなり苦労したようで、開発にあたって旧ソ連製の2S19「ムスタS」152mm自走榴弾砲が搭載している自動装填装置のシステムを研究して、その技術導入を行うことで課題を解決したようである。 自動装填装置は砲塔後部のバスル内に搭載され、砲塔内に25発分、車体内に5発分の合計30発分の砲弾と装薬を搭載している。 |
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<05式155mm自走榴弾砲> 全長: 11.60m 車体長: 全幅: 3.38m 全高: 3.55m 全備重量: 35.0t 乗員: 5名 エンジン: 8V150 4ストロークV型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 800hp 最大速度: 55km/h 航続距離: 武装: 52口径155mm榴弾砲×1 (30発) 85式12.7mm重機関銃×1 装甲厚: |
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<参考文献> ・「パンツァー2010年5月号 建国60周年記念軍事パレードに見る中国軍用車輌カタログ」 アルゴノート社 ・「パンツァー2010年9月号 中国陸軍 05式155mm自走砲」 前河原雄太 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2018年4月号 ゴビ砂漠に轟く砲声 中国陸軍実弾射撃訓練」 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「世界の戦車パーフェクトBOOK」 コスミック出版 |
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