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04式歩兵戦闘車





●開発

中国軍は旧ソ連製のBMP-1歩兵戦闘車のコピー生産型である86式歩兵戦闘車を主力IFVとして運用してきたが、原型が1960年代に開発された車両であるため全体的に旧式化していた。
このため中国は1997年にロシアとの軍事協力プロジェクトに署名し、ロシア軍の主力IFVであるBMP-3歩兵戦闘車の技術供与を受けることに成功した。

中国軍は86式歩兵戦闘車にBMP-3の技術を採り入れた近代化改修型の86A式歩兵戦闘車などを開発する一方で、BMP-3の技術をベースに全く新規の国産IFVの開発も進め、これは1999年頃に形になった。
しかし、そのシルエットが公になったのは2003年にインターネット上に流れた走行試験中の姿が初であり、制式化は2006年にまでずれ込んだ。

本車は存在が確認された当初メディアから「97式歩兵戦闘車」の呼称で呼ばれていたが、実際の制式名称は「04式歩兵戦闘車」(WZ-502)であることが後に判明した。
04式歩兵戦闘車はロシア軍のBMP-3と外観が非常によく似ており、武装システムも同様のものを採用している。
両車の最大の違いはBMP-3の車体が防弾アルミ製であるのに対して、04式歩兵戦闘車の車体は防弾鋼板で構成されている点である。

04式歩兵戦闘車は99式戦車や96式戦車のような中国軍の最新鋭MBTと共に運用することを開発目的としているため、2009年までに生産された310両のほとんどが広州軍区の機械化師団に配備されている。
また本車は中国軍の様々な新型AFVの開発ベースとなっており、代表的なものでは07式122mm自走榴弾砲や05式水陸両用戦闘車が挙げられる。


●構造

前述のように04式歩兵戦闘車の車体構造は原型となった旧ソ連製のBMP-3歩兵戦闘車によく似ているが、両車の最大の違いはBMP-3の車体が防弾アルミ製であるのに対して、04式歩兵戦闘車の車体は防弾鋼板で構成されている点である。
車体が防弾鋼板製となったことで04式歩兵戦闘車の装甲防御力はBMP-3より向上していると思われるが、反面重量もやや増加している。

ただし、04式歩兵戦闘車はBMP-3より高出力の国産ディーゼル・エンジン8V150(出力550hp)を搭載しているため、重量が増加しているにも関わらず路上最大速度70km/hという高い機動性能を発揮する。
04式歩兵戦闘車がBMP-3に比べて特に優れている点は水上航行速度で、原型の約2倍の20km/hという高い性能を発揮するが、これは中国軍が以前から台湾への上陸侵攻を想定しているためで、今後の中国軍の主力IFVとなる04式歩兵戦闘車には台湾海峡を迅速に走破する能力が求められたのである。

水上航行時には車体前部に装着されている折り畳み式の波切り板を展開し、車体後部に2基設けられているウォーター・ジェットにより推力を得るようになっている。
なお04式歩兵戦闘車のエンジンは可変出力システムを採用しており、陸上走行時には550hpであるが水上航行時には600hpに出力が向上する。

また04式歩兵戦闘車は、原型となったBMP-3で大きな欠点となっていた搭乗兵員の乗降の便についても根本的な改善が図られている。
BMP-3も04式歩兵戦闘車も車体後部に兵員室を配置しているが、BMP-3では兵員室の後部にエンジンを配置しているために搭乗兵員の乗降の邪魔になるのに対して、04式歩兵戦闘車は車体前部右側にエンジンを移したため兵員の乗降がスムーズに行えるようになっている。

04式歩兵戦闘車の砲塔は基本的にBMP-3と同様のもので、防弾アルミ製の大型の2名用砲塔である。
砲塔前面には主武装の100mm低圧ライフル砲2A70と、副武装の99式30mm機関砲、86式7.62mm機関銃を同軸に装備している。
100mm低圧ライフル砲2A70は、最大射程4,000mのHE-FRAG(破片効果榴弾)とGP-2砲腔内発射式対戦車ミサイルを射撃でき、自動装填装置により8〜10発/分の発射速度を有する。

GP-2対戦車ミサイルは、旧ソ連製の9M117-3「バースニャ」(寓話)対戦車ミサイルをベースに国内開発された砲腔内発射式の対戦車ミサイルで、最大射程が5,000mと長く撃ち放し能力は無いものの、砲塔上の照準機から発せられるレーザービームで誘導される第2.5世代の対戦車ミサイルである。
このミサイルは射距離に関わらず550〜600mmのRHA(均質圧延装甲板)を穿孔することが可能で、戦後第2世代MBTを正面から撃破することができる。

また副武装の99式30mm機関砲(旧ソ連製の30mm機関砲2A72の国産型)は、AP(徹甲弾)とHE-FRAGを300発/分の速度で射撃できるため、軟目標や軽装甲車両に対しては非常に高い攻撃力を持っている。
なおこれらの武装を制御するFCS(射撃統制システム)は、BMP-3が搭載するものとほぼ同じものが用いられているのではないかと推測されている。


<04式歩兵戦闘車>

全長:    7.20m
全幅:    3.20m
全高:    2.50m
全備重量: 20.0t
乗員:    3名
兵員:    7名
エンジン:  8V150 4ストロークV型8気筒液冷ディーゼル
最大出力: 550hp(浮航 600hp)
最大速度: 70km/h(浮航 20km/h)
航続距離: 600km
武装:    100mm低圧ライフル砲2A70×1 (30発)
        99式80.5口径30mm機関砲×1 (500発)
        86式7.62mm機関銃×1 (2,000発)
        GP-2対戦車ミサイル (8発)
装甲厚:  


<参考文献>

・「パンツァー2010年5月号 建国60周年記念軍事パレードに見る中国軍用車輌カタログ」  アルゴノート社
・「パンツァー2010年7月号 中国陸軍 04式戦闘兵車」 前河原雄太 著  アルゴノート社
・「パンツァー2021年11月号 中国人民解放軍 08式歩兵戦闘車」  アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート25 世界の戦闘兵車」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2021〜2022」  アルゴノート社


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