ヴィッカーズMk.7戦車は、イギリスのヴィッカーズ・ディフェンスシステムズ社が1980年代の後半期にプライヴェート・ヴェンチャーで開発した輸出向けの50t級大型MBTで、ドイツ製のレオパルト2戦車の車体に自社設計の砲塔を組み合わせたものになっている。 外国製MBTの車体と動力装置をそっくり流用したのは開発に掛かるコストを安く抑え、開発期間も短縮するためだったが、メーカーのヴィッカーズ社ではこの車体の入手経緯や条件をほとんど明らかにしていない。 本車のベース車体となったレオパルト2戦車は、1980〜90年代にかけて西欧のNATO加盟国やスウェーデンで広く採用された西側の戦後第3世代MBTのベストセラーといえるもので、この車体を用いたことでヴィッカーズMk.7戦車は優れた機動性能と信頼性が保証されている。 車体の基本構造はレオパルト2戦車と同一で動力装置にも違いは無いが、車体の前面に採用されている複合装甲はイギリス陸軍のチャレンジャー1戦車のものと同一のチョーバム・アーマーになっているという。 砲塔はヴィッカーズ社が独自に設計したもので前面と側面には分厚いチョーバム・アーマーが使用されており、平面で構成された角張った形状になっている。 主砲はチャレンジャー1戦車と同じ王立造兵廠製の55口径120mmライフル砲L11A5を採用しており、弾薬も同じ砲弾・装薬分離型になっている。 現在、西側第3世代MBTの主砲はレオパルト2戦車にも採用された120mm滑腔砲が主流になっているが、この120mmライフル砲は120mm滑腔砲用の燃焼式薬莢付きの弾薬よりも多くの主砲弾薬を車内に搭載できるメリットがあり、このために弾種も増やし易い。 ヴィッカーズMk.7戦車ではAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)やAPDS(装弾筒付徹甲弾)、HESH(粘着榴弾)など6種類の弾薬が用意されているが、これらの搭載数は全部で38発になるという。 FCS(射撃統制装置)は砲手用レーザー測遠機付き安定型昼/夜間兼用光学照準機と目標・射撃データ表示装置、砲口照合装置、車長用の安定型全周旋回式昼/夜間兼用ペリスコープ・サイトとレーザー測遠機、車長用目標・データ表示装置、装填手用全周旋回式光学ペリスコープ、マルコーニ社製のセントー16ビット弾道コンピューターから構成されており、本車に本格的な走行間射撃能力と夜間戦闘能力を与えている。 砲安定装置も電動式で、応答性と信頼性の高いことが売り文句である。 機動力はドイツのMTU社製のMB873-Ka501 V型12気筒多燃料液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力1,500hp)によって27.27hp/tという高い出力/重量比を得ており、路上最大速度68km/hという実用上充分な速力を持つが、これまでの走行試験では80km/hという路上最大速度を発揮しているという。 ヴィッカーズ社ではこのオリジナル・タイプに続いて、1990年代になるとFCSと砲塔部の装甲を新型化した改良型のヴィッカーズMk.7/2戦車を開発している。 同車ではマルコーニ社製の最新型ディジタル弾道コンピューターを中心にSFIM社製の昼間用照準機、フィリップス社製の第2世代熱線映像暗視装置などからFCSが構成されてより高精度な主砲火力を実現している他、砲塔の複合装甲が軽量化され戦闘重量が原型の55tから54.64tへとわずかながら軽くなっている。 |
<ヴィッカーズMk.7戦車> 全長: 10.95m 車体長: 7.722m 全幅: 3.42m 全高: 2.995m 全備重量: 55.0t 乗員: 4名 エンジン: MTU MB873-Ka501 4ストロークV型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 1,500hp/2,600rpm 最大速度: 68km/h 航続距離: 550km 武装: 55口径120mmライフル砲L11A5×1 (38発) 12.7mm重機関銃M2×1 (600発) 7.62mm機関銃L94A1×1 (5,000発) 装甲: 複合装甲 |
<参考文献> ・「パンツァー2016年3月号 レオパルト2車体を大胆に流用した意欲作 ヴィッカーズMBT Mk.7」 アルゴノート社 ・「パンツァー2003年6月号 ヴィッカースMBTシリーズ」 鈴木浩志 著 アルゴノート社 ・「ウォーマシン・レポート9 レオパルト1と第二世代MBT」 アルゴノート社 ・「世界AFV年鑑 2005〜2006」 アルゴノート社 ・「世界の戦車(2) 第2次世界大戦後〜現代編」 デルタ出版 ・「新・世界の主力戦車カタログ」 三修社 ・「世界の主力戦車カタログ」 三修社 |