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VCC-1カミリーノ歩兵戦闘車





オート・メラーラ社は、アメリカのFMC社からM113A1装甲兵員輸送車のライセンス生産権を取得してイタリア陸軍向けの生産を行っていたが、FMC社がM113装甲兵員輸送車の発展型として開発した「AIFV」(Armored Infantry Fighting Vehicle)歩兵戦闘車を参考に、1970年代に「IAFV」(Infantry Armored Fighting Vehicle)と呼ばれる歩兵戦闘車を開発した。

IAFVはM113A1装甲兵員輸送車の車体をベースとした歩兵戦闘車で、イタリア陸軍では「VCC-1」(Veicolo Corazzato da Combattimento 1:歩兵戦闘車1号)と呼ばれ、「カミリーノ」(Camillino)という愛称も与えられている。
VCC-1歩兵戦闘車の車内レイアウトは車体前部右側に機関室、その後方に銃手席、前部左側に操縦手席、その後方に車長席、車体後部は兵員室となっている。

後部兵員室内には、最大6名の完全武装歩兵を収容することができる。
車体はM113装甲兵員輸送車と同じく防弾アルミ製であるが、前面および左右側面には圧延防弾鋼板の増加装甲が取り付けられている。
AIFV歩兵戦闘車が25mm機関砲を装備する全周旋回式砲塔を搭載しているのと異なり、VCC-1歩兵戦闘車は砲塔を持っておらず、代わりに銃手用キューポラのリング・マウントに12.7mm重機関銃M2を装備している。

また、後部兵員室の上面に7.62mm機関銃MG42/59を装備することもできる。
兵員室の左右側面はAIFV歩兵戦闘車と同様に傾斜が付けられており、それぞれ2基ずつガンポートと専用の視察ブロックが設けられている。
また兵員室後面のランプにも、ガンポートと視察ブロックが1基設けられている。
これにより、搭乗歩兵が車内から外部を射撃することができるようになった。

VCC-1歩兵戦闘車は1982年よりイタリア陸軍への導入が開始され、改良型のVCC-2歩兵戦闘車と共に後継のVCC-80ダルド歩兵戦闘車が戦力化されるまでの繋ぎの役割を果たした。
またサウジアラビア陸軍向けに、アメリカのシステムズ&エレクトロニクス社製の「TUA」(TOW Under Armor)と呼ばれるTOW対戦車ミサイルの起倒式連装発射機を、VCC-1歩兵戦闘車の車体に搭載した戦車駆逐車型が輸出された。

イタリア陸軍のVCC-1歩兵戦闘車も224両がこのTUA発射機を装備する戦車駆逐車型とされ、通常型のVCC-1歩兵戦闘車と共に用いられている。
さらにVCC-1歩兵戦闘車の内の50両には、アメリカ海兵隊のAAV7A1水陸両用兵員輸送車で導入されたものと同じ、「EAAK」(Enhanced Applique Armour Kit:能力向上型増加装甲キット)と呼ばれる増加装甲が装着された。


<VCC-1歩兵戦闘車>

全長:    5.04m
全幅:    2.68m
全高:    2.08m
全備重量: 11.6t
乗員:    3名
兵員:    6名
エンジン:  デトロイト・ディーゼル6V-53 2ストロークV型6気筒液冷ディーゼル
最大出力: 212hp/2,800rpm
最大速度: 64km/h
航続距離: 450km
武装:    12.7mm重機関銃M2×1
        7.62mm機関銃MG42/59×1
装甲厚:


<参考文献>

・「パンツァー2012年8月号 イタリア陸軍 VCC-1カミリーノ装甲兵車」  アルゴノート社
・「パンツァー2000年5月号 イタリアのダルド戦闘兵車」 後藤仁 著  アルゴノート社
・「パンツァー2013年10月号 イタリア軍AFVの40年」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2021〜2022」  アルゴノート社
・「世界の軍用車輌(3) 装軌/半装軌式戦闘車輌:1918〜2000」  デルタ出版
・「世界の装軌装甲車カタログ」  三修社


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