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VBCI歩兵戦闘車





●開発

VBCI歩兵戦闘車は、フランス陸軍が運用していた装軌式のAMX-10P歩兵戦闘車が旧式化したため、その後継として開発された8×8型装輪式のIFVである。
ちなみに名称の「VBCI」は「Véhicule Blindé de Combat 'Infanterie」の略語で、「歩兵戦闘用装甲車両」を意味する。

フランス政府は1990年代に、AMX-10P歩兵戦闘車の後継となる装輪式IFVを「VBM」(Véhicule Blindé Modulaire:モジュール式装甲車両)の名称で開発することを計画した。
ちょうどその頃、イギリスとドイツも独自に新型の装輪式装甲車の開発を進めようとしていたため、開発コストを節約するために3カ国で新型装輪式装甲車を共同開発することになり、この車両の開発・生産を行う共同事業体ARTECが1998年4月末に設立された。

新型装輪式装甲車にはフランスが「VBCI」、イギリスが「MRAV」、ドイツが「GTK」の計画名称を与えて開発が進められたが、1999年秋にフランスは他国との意見の相違によって独自にVBCI歩兵戦闘車の開発計画を進めることを決定し、ARTEC社による3カ国共同開発計画から脱退した。
VBCI歩兵戦闘車の開発は、VBM計画時代からGIAT社(現ネクスター社)とルノー社が共同で設立したサトリ軍用車両が主導していたが、途中からGIAT社が主契約者、ルノー社が副契約者となった。

VBCI歩兵戦闘車は、GIAT社が自社資金で1994年に技術実証デモンストレイターとして完成させた「ヴェクストラ」(Vextra)歩兵戦闘車をベースに2003年から開発が進められ、2004年5月に最初の試作車2両が完成した。
2005年半ばからはIFVヴァージョン4両、指揮通信車ヴァージョン1両の試作車を用いてフランス陸軍の運用試験が開始され、砲塔などの設計変更が行われている。
その後新たに3両の試作車が製作され、2007年まで試験が続けられた。

そして、2008年5月末からVBCI歩兵戦闘車のフランス陸軍への引き渡しが開始され、最終的にはIFVヴァージョン(VBCI VCI)550両、指揮通信車ヴァージョン(VBCI VPC)150両の計700両の導入が決定している。
VBCI歩兵戦闘車の車内レイアウトは車体前部右側が機関室、前部左側が操縦室、車体後部が兵員室という装輪式IFVの一般的なレイアウトを採用している。

兵員室内の容積は13m3と広く、兵員室の左右側面と兵員室後面のランプドアには車内から射撃を行えるように合計7個のガンポートとペリスコープが備えられている。
車両固有の乗員は操縦手と砲手の2名で、IFVヴァージョンのVBCI VCIではこの他に砲塔前方の指揮官用ステイションに車長兼分隊長1名、兵員室内に8名の兵員が搭乗するようになっている。

ネクスター社はVBCI歩兵戦闘車シリーズをフランス陸軍だけでなく海外への売り込みも図っているが、現時点で採用する国は現れていない。
しかしイギリス陸軍が本車に興味を示しており、2014年2月に運用試験のために少数のVBCI歩兵戦闘車を貸し出す契約がネクスター社との間に結ばれ、現在運用試験を行っている。


●攻撃力

VBCI歩兵戦闘車の基本型であるIFVヴァージョンのVBCI VCIは、車体上面に25mm機関砲M811と7.62mm機関銃F1を同軸に装備した1名用のドラガー砲塔を搭載している。
主武装の25mm機関砲M811はGIAT社が開発したもので水平・垂直の2軸が安定化されており、発射速度は125発/分または400発/分を選択できる他、単発、3連バースト、10連バーストモードも備えられている。

砲塔上面には熱線映像装置とレーザー測遠機などで構成された砲手用のマルチセンサー・サイトを搭載しているが、この砲手用サイトは車内の指揮官用ステイションとも連動しているため、ドラガー砲塔は車長が車内から遠隔操作を行うことも可能である。

VBCI歩兵戦闘車は他国のIFVのように対戦車ミサイルの発射機は装備していないが、車内に下車歩兵が用いるMBDA社製のエリックス携帯式対戦車ミサイルの発射機が搭載されており、車載発射機のキットを装着すれば車内からの発射も可能となっている。

VBCI歩兵戦闘車の最大の特徴といえるのが、BMS(戦闘マネジメント・システム)を搭載していることであろう。
GIAT社とEADSエレクトリック・システムズ社が共同で開発したこのシステムは、フランス陸軍の主力MBTであるルクレール戦車に搭載されているFINDERシステムをベースにしており、VBCI歩兵戦闘車同士はもちろんのこと、上級司令部や随伴するルクレール戦車などとも戦術情報の共有が可能となっている。


●防御力

VBCI歩兵戦闘車の基本車体は防弾アルミ板の全溶接構造で、7.62mm弾の直撃に堪える程度の防御力しか持たないが、本車はモジュール方式の装甲を採用しており、チタン合金を防弾鋼板で挟み込んだ装甲モジュールを装着すれば14.5mm重機関銃弾の直撃に堪えることができるといわれている。
また、モジュール方式の装甲を採用したことで装甲が破損しても壊れた箇所を交換するだけで済み、将来新型装甲が開発された場合にも交換可能な構造となっている。

またVBCI歩兵戦闘車は防御装置も充実しており、煙幕弾を発射して自車を隠蔽する発煙弾発射機を砲塔の左右に4基ずつ、車体最後部の左右に3基ずつ装備している他、自車に向かってくる対戦車ミサイル等を撹乱するための赤外線デコイも装備している。


●機動力

VBCI歩兵戦闘車のパワープラントはルノー社製の出力550hpの液冷ディーゼル・エンジンを採用しており、戦闘重量28tと装輪式装甲車としては重量級の車両であるにも関わらず、路上最大速度は100km/hに達する。
サスペンションは油気圧式独立懸架方式を採用しており、前輪4輪で操向を行う。
サスペンションと変速・操向機は装甲ハウジングで覆われており、地雷の爆風を緩衝することができる。

また本車はCTIS(タイア空気圧中央調整システム)を装備しており、ランフラット・タイアと組み合わせることで高い不整地踏破能力を発揮する。
水上航行能力は付与されていないが通常の状態で水深1.2m、準備を行えば水深1.5mの渡渉は可能とされている。


●派生型

VBCI歩兵戦闘車の指揮通信車ヴァージョンであるVBCI VPCは、IFVヴァージョンのVBCI VCIよりも高位な連隊レベルのBMSであるSIT(Système d'Information Terminal)の端末を2基装備しており、端末とその操作員のスペースを確保するためにドラガー砲塔が外されており、武装は自衛用の12.7mm重機関銃M2のみとなっている。
車両固有の乗員は2名で、他に端末操作員など7名が乗車する。

ネクスター社は輸出用として主武装を40mmケース・テレスコピック弾火器システムに変更したIFVヴァージョンや、81mm自走迫撃砲ヴァージョン、自動装填装置付きの120mm低反動滑腔砲を装備した戦車駆逐車ヴァージョンなども提案しているが、いずれも試作の段階に進んでおらず、APCヴァージョンのVBCI VTTのみが試作の段階に進み、2010年にパリで開催された兵器展示会「ユーロサトリ2010」で発表されている。

VBCI VTTはVBCI VPCと同様ドラガー砲塔は装備しておらず、代わりにアメリカのブラウニング社製の12.7mm重機関銃M2を搭載した遠隔操作式武装ステイションを装備している。
VBCI VTTの最大の特徴は防御力の強化で、ラーグ社製の増加装甲ブロックとネクスター社製の格子装甲を装備している。
車両固有の乗員は2名で、他に10名の完全武装歩兵の収容が可能とされている。


<VBCI VCI歩兵戦闘車>

全長:    7.80m
全幅:    2.98m
全高:    2.26m
全備重量: 28.0t
乗員:    2名
兵員:    9名
エンジン:  ルノー 液冷ディーゼル
最大出力: 550hp
最大速度: 100km/h
航続距離: 750km
武装:    25mm機関砲M811×1
        7.62mm機関銃F1×1
装甲厚:  


<参考文献>

・「パンツァー2009年11月号 就役が始まったフランスの新型装輪ICV VBCI」 前河原雄太 著  アルゴノート社
・「パンツァー2002年10月号 フランスの新装輪戦闘兵車 VBCI」 林磐男 著  アルゴノート社
・「パンツァー2003年3月号 2002年の海外戦闘車輌の動向(2)」 林磐男 著  アルゴノート社
・「パンツァー2012年6月号 フランスの新型装輪ICV VBCI」 荒木雅也 著  アルゴノート社
・「パンツァー2005年12月号 フランスの新戦闘兵車 VBCI」 坂本雅之 著  アルゴノート社
・「パンツァー2015年5月号 世界の現用装輪装甲車輌」 平田辰 著  アルゴノート社
・「パンツァー2013年5月号 フランス陸軍の現用戦闘車輌」  アルゴノート社
・「パンツァー2000年8月号 汎用装輪装甲車 ベクストラ」  アルゴノート社
・「パンツァー2017年4・5月号 IDEX2017」 竹内修 著  アルゴノート社
・「世界のAFV 2011~2012」  アルゴノート社
・「グランドパワー2006年9月号 ユーロサトリ2006 (1)」 一戸崇雄/伊吹竜太郎 共著  ガリレオ出版
・「世界の最強陸上兵器 BEST100」  成美堂出版
・「世界の最新兵器カタログ 陸軍編」  三修社
・「世界の最新装輪装甲車カタログ」  三修社
・「戦車名鑑 1946~2002 現用編」  コーエー


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