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TTD試作戦車





南アフリカ陸軍は1970年代以降、旧式化の進むイギリス製のセンチュリオン戦車をベースにしてこれを近代化改修したオリファント戦車を生み出したが、こうした旧式戦車の改修によるMBT戦力の強化には元々限界がある。
このため同軍では1983年から、21世紀にも第一線での使用に耐える新世代MBTの国内開発を目指して本格的な研究・開発に着手し、1990年代にその成果を「TTD」(Tank Technology Demonstrator:戦車技術評価車両)として実体化した。

TTD戦車はその名のとおり、国内開発されたMBT技術の有効性を確認・評価するための試作車両であり、実用車種ではない。
しかし南アフリカ陸軍が本車に求めたものは、旧ソ連の支援を受けた1980年代当時のアンゴラ軍がソ連製のT-72戦車を装備し始めたために、これを撃破できる新世代MBTに必要な国内技術を確立することだった。

このためTTD戦車には、戦線後方のデポを遠く離れて自力で作戦行動を継続できる航続力と継戦能力、T-72戦車の攻撃に対抗可能な高い装甲防御力、段階的に強化が可能な主砲火力、それに本格的にコンピューター化された高度なFCS(射撃統制システム)などが盛り込まれることとなり、必然的に西側諸国の戦後第3世代MBTに比肩し得る高度な内容を備えるものとなった。

TTD戦車の車体と砲塔は共に多層式の空間装甲で構成されており、平面から成る角張った形状になっているが、これで本車には車体・砲塔の前面で、仮想敵戦車のAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)やHEAT(対戦車榴弾)に対する防御力が、その他の箇所では中口径火器への防御力が確保されているという。
主砲にはこれまでのところ、オリファント戦車と同系列の105mmライフル砲が装備されているが、これは必要に応じて将来、LIW社製の120mm滑腔砲や140mm滑腔砲に換装できる。

TTD戦車用にはこれまでにAPFSDSを始めとする4種類の弾薬が開発されているが、特筆すべきは本車のFCSで安定化された車長と砲手用の昼/夜間兼用照準機や各種のセンサー、それに砲塔と砲駆動装置が頭脳となるディジタル・コンピューターにRS-485シリアル・データバスを介して繋がれており、一体的な統合システムが形成されている。

これによってTTD戦車は2,000m先の停止したT-72戦車に対してAPFSDSを使用して84%、走行中の同車には75%という高い初弾命中率を実現したという。
TTD戦車のパワーパックはV型8気筒のツインターボ・ディーゼル・エンジンと自動変速機から成り、エンジン出力は1,230hpとなっている。

本車は片側7個の複列式転輪を持つ戦闘重量58t級の大型・大重量の車両だが、このパワーパックによって21.1hp/tという高い出力/重量比を得ており、路上では実に71km/hという最大速度と0〜30km/hまで5.1秒の良好な加速力を発揮する。

こうした外観からは窺い知れないTTD戦車の高い性能は、アームズコー社やデネルLIW社、それにロイメックOMC社といった南アフリカの開発メーカーの技術力が、すでに世界的な水準に達していることを物語っている。
しかし南アフリカ陸軍ではすでに次期MBTの導入計画が進んでいるが、これは本格的な国内開発とはならず財政事情などから外国車種の輸入になりそうだという。


<TTD試作戦車>

全長:    9.88m
車体長:   7.78m
全幅:    3.62m
全高:    2.99m
全備重量: 58.3t
乗員:    4名
エンジン:  V型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 1,230hp/2,100rpm
最大速度: 71km/h
航続距離: 400km
武装:    105mmライフル砲×1 (54発)
        7.62mm機関銃FN-MAG×2 (2,000発)
装甲:    空間装甲


<参考文献>

・「パンツァー2013年4月号 南アフリカ オリファント戦車の開発と近代化」 柘植優介 著  アルゴノート社
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「新・世界の主力戦車カタログ」  三修社
・「世界の主力戦車カタログ」  三修社


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