T34重戦車
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+概要
アメリカ陸軍兵器局は、1944年半ばから西部戦線に登場したドイツ陸軍の新型重戦車ティーガーIIに対抗するために、1944年9月より60口径105mm高射砲M1を原型とする、65口径105mm戦車砲T5を搭載した新型重戦車T29の開発に着手したが、さらなる火力の強化を図って1945年初めより、60口径120mm高射砲M1を戦車に搭載する研究を開始した。
この研究から開発されたのが60口径120mm戦車砲T53で、重量23kgの軽量型高速徹甲弾を、砲口初速1,230m/秒で射撃できるものと試算されて開発が進められた。
兵器局は1945年5月31日にT29重戦車と共通の車体と砲塔を用い、120mm戦車砲T53を搭載する試作車2両の製作を、「T34」の試作呼称でミシガン州ウォーレンのデトロイト工廠に発注した。
当初、T34重戦車はT29重戦車と同じく、ミシガン州ディアボーンのフォード自動車製のGAC V型12気筒液冷ガソリン・エンジン(出力770hp)を搭載することになっていた。
しかし、T29重戦車の火力支援型として開発されていたT30重戦車のエンジンが、第2次世界大戦終了後にアラバマ州モービルのコンティネンタル自動車製の、AV-1790-3
V型12気筒空冷ガソリン・エンジン(出力810hp)に変更されたことを受けて、1946年11月7日にT34重戦車のエンジンも、AV-1790-3に換装されることが決まった。
T34重戦車の車体と砲塔は、基本的にT30重戦車と同一であったが、主砲の120mm戦車砲T53の左側にはT29重戦車と同様に同軸機関銃として、ユタ州オグデンのブラウニング火器製作所製の12.7mm重機関銃M2が上下に装備されていた。
加えて主砲の砲身が長いため、前方に荷重が掛かり過ぎてバランスが狂うため、砲塔後部に4インチ(101.6mm)厚の装甲板が平衡錘として溶接された。
また120mm戦車砲T53は、原型の120mm高射砲M1と同様に分離薬莢式弾薬を用い、弾頭と薬莢の重量はいずれも約22.5kgと重かったため、装填手2名を必要とし、弾薬搭載数はT30重戦車と同じく34発とされた。
T34重戦車の試作車がいつ完成したのかは明らかにされていないが、おそらく1948年末もしくは1949年初め頃と推測され、完成した2両の試作車はメリーランド州のアバディーンと、ケンタッキー州のフォート・ノックスにそれぞれ運ばれて試験が実施された。
この際、120mm戦車砲T53の試射を行ったところ、数発射撃すると射撃時に大量の煙と、ガスが砲塔内に放出されるという問題が判明した。
この試験では乗員2名が病院に運ばれており、直ちに原因の調査が開始された。
そして、砲身内に未燃焼のパウダー・ガスが残留し、これが薬莢排出の際に、開いた開口部から後方に流れて砲塔内に排出され、砲塔内の酸素と混合することで有毒なガスが発生することが突き止められた。
この対処としてまず、射撃後に砲身内に圧搾空気を吹き出して、ガスを砲口から車外に排出する吹き出し装置が開発され、T34重戦車の砲口に装着されたが、さらなる研究の結果、砲身に円形のガス溜めを装着し、一旦ガスをこの円筒形の部分に収めて、その後砲身内部と外部の気圧差により、ガスが砲口から車外に排出されるという簡単な機構が考えられた。
これが現在、「排煙機」(Bore evacuator)と呼ばれているもので、これに従い、砲口直後の砲身に排煙機が設けられ、併せて、砲口に装着されていたガス排出装置は単作動式の砲口制退機に換装された。
結局、T34重戦車は試作車2両のみの製作に終わったが、主砲として装備された120mm戦車砲はその後も改良が続けられ、アメリカ陸軍最後の制式重戦車となったM103戦車の主砲として採用されることになる。
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<T34重戦車>
全長: 11.77m
車体長: 7.38m
全幅: 3.81m
全高: 3.223m
全備重量: 63.958t
乗員: 6名
エンジン: コンティネンタルAV-1790-3 4ストロークV型12気筒空冷ガソリン
最大出力: 810hp/2,800rpm
最大速度: 35.4km/h
航続距離: 161km
武装: 60口径120mmライフル砲T53×1 (34発)
12.7mm重機関銃M2×3 (2,420発)
7.62mm機関銃M1919A4×1 (2,500発)
装甲厚: 12.7〜279.4mm
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兵器諸元
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<参考文献>
・「パンツァー2013年5月号 アメリカのTシリーズ試作戦車(15) T29/30/32重戦車シリーズ、T34重戦車、T31デ
モリション戦車、T33火焔放射戦車」 大佐貴美彦 著 アルゴノート社
・「グランドパワー2014年5月号 最後のアメリカ重戦車 M103シリーズ」 箙浩一 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー2005年3月号 第2次大戦後のアメリカ軍重戦車」 箙浩一 著 ガリレオ出版
・「第2次大戦 米英軍戦闘兵器カタログ Vol.2 火砲/ロケット兵器」 ガリレオ出版
・「第2次大戦 米英軍戦闘兵器カタログ Vol.3 戦車」 ガリレオ出版
・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
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