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T-95戦車





●開発

T-95戦車は2000年3月にロシア政府が存在を公表した新型MBTで、T-72/T-90戦車シリーズの開発を手掛けたニジニ・タギルのウラル貨車工場(UVZ)設計局の手で、1990年代初めに開発が開始された。
公表された側面図によればT-95戦車はT-80U戦車の車体をベースに、新規開発の異様に小型化された砲塔が組み合わされており、主砲は長大な135mm滑腔砲を装備していた。

なお「T-95戦車」というのは本車の正式な名称ではなく、メディアが勝手に付けた名前である。
UVZ設計局は本車に、「オブイェークト195」という試作名称を与えて開発を進めた。
T-95戦車はロシア陸軍の主力MBTであるT-72/T-90/T-80戦車シリーズの後継として、西側の最新鋭MBTを凌駕する性能を持つ強力なMBTを実現しようという意欲的なものであったが、本車は非常に高い性能を持つ反面、製造コストも非常に高くなってしまった。

当初の計画では、T-95戦車は2008年末もしくは2009年からロシア陸軍に導入されることになっていたが、慢性的な財政難に苦しむロシアにとって、高性能だが非常に高価なT-95戦車を広く普及させるのは不可能な話であり、結局2010年4月9日にロシア国防省国防次官であるウラジーミル・ポポフキン上級大将は、T-95戦車について主に予算面の問題から開発計画を断念すると発表した。

しかし、ロシア陸軍はT-95戦車に代わる新型MBTを必要としていたため、新規に「アルマータ」(Armata:ギリシャ語で兵器を意味する単語”Arma”の複数形)と呼ばれる戦車、自走砲、歩兵戦闘車などで共用する重装軌式プラットフォームを開発することになった。
こうして共通のプラットフォームを採用することで、新型兵器の開発・運用に掛かるコストを低減させようとしたのである。

ロシア陸軍の新型MBTは、この「アルマータ」シリーズの一環として開発が進められることになった。
この新型MBTには「オブイェークト148」の試作名称が与えられ、T-95戦車と同じくUVZ設計局が開発を担当することになった。
オブイェークト148はT-95戦車の開発過程で得られたノウハウを随所に活かして開発が進められ、「T-14戦車」としてロシア陸軍に制式採用されて、2015年からUVZで量産が開始される運びとなったのである。


●攻撃力

T-95戦車の最大の特徴といえるのが、車長、砲手、操縦手の3名の乗員が車体前部に設けられた独立した装甲カプセル内にそれぞれ搭乗し、砲塔が完全に無人化されていた点である。
戦車において砲塔は最も高い位置に存在するため一番被弾確率が高いことから、乗員の生残性を向上させるためにこのようなコンセプトを採用したものと思われる。

T-95戦車の主砲は当初、長砲身の135mm滑腔砲が搭載される予定と公表されていたが、後により大口径の152mm滑腔砲を装備するよう方針が変更されたようである。
T-95戦車に搭載される予定だった152mm滑腔砲は「2A83」と呼ばれ、APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)を使用した場合、射距離2,000mにおいてRHA(均質圧延装甲板)換算で1,000mm以上の装甲貫徹力を有するといわれる。

西側MBTの主砲の中で現在最高の威力を備えている、ドイツのラインメタル社製の55口径120mm滑腔砲の同条件における装甲貫徹力がRHA換算で810mmといわれているので、いかにT-95戦車の主砲が強力か分かる。
T-95戦車はT-72/T-90戦車シリーズと同じく、主砲の自動装填装置を導入することで装填手を省いていた。
T-95戦車の自動装填装置は、T-72/T-90戦車シリーズに採用されていた「カセートカ」(カセット)自動装填装置と同じく、砲塔バスケットの下部に円形に並べられた砲弾と装薬を装弾アームで拾い上げる構造になっていた。

T-95戦車は主砲の同軸武装として、従来のロシア製MBTが採用していた7.62mm機関銃に代えて、80.5口径30mm機関砲2A42を搭載する予定であった。
基本的に主砲の同軸武装は敵歩兵の制圧に用いられるのが普通であるが、T-95戦車は大口径機関砲を採用することで敵歩兵だけでなく、軽装甲車両や建造物、ヘリ等にも効果的なダメージを与えることを想定していたと思われる。

またT-95戦車は砲塔上面にRWS(遠隔操作式武装ステイション)を設けて、12.7mm重機関銃Kordを1挺装備する予定であった。
従来のロシア製MBTでは、12.7mm重機関銃は乗員が砲塔から身を乗り出して操作しなければならなかったが、T-95戦車では12.7mm重機関銃をRWSに装備することで、車内から安全に操作できるようにしていた。

T-95戦車の砲塔は乗員が搭乗しないため、従来のロシア製MBTの砲塔に比べて極めて小型で、形状も従来の半球形から円錐形に変更されていた。
砲塔の後部には西側MBTのようにバスルが設けられていたが、これは主砲弾薬の予備弾薬庫として用いられており、砲塔の重量バランスを取るためのカウンター・ウェイトの役割も果たしていた。


●防御力

T-95戦車の車体と砲塔は圧延防弾鋼板の全溶接構造であるが、車体と砲塔の前面には複合装甲が導入されていた。
この複合装甲の詳細については不明であるが、複合装甲部分は日本の10式戦車やフランスのルクレール戦車と同様に交換可能なモジュール構造になっていた。

特に乗員が搭乗する車体前部の装甲カプセル部分は防御力が高く、この部分の装甲防御力はRHA(均質圧延装甲板)換算で900mmに達するともいわれる。
さらにT-95戦車の車体と砲塔の主要部には、HEAT弾や対戦車ミサイル等のCE(化学エネルギー)弾対策としてモジュール式のERA(爆発反応装甲)が装着されていた。

またT-95戦車は、KBM(コロムナ機械製造設計局)が開発した「アレーナ」(Arena:円形競技場)と呼ばれるAPS(アクティブ防御システム)も装備する予定であった。
これは、砲塔上に装備されたAPSレーダーが自車に向かってくる対戦車ミサイルや砲弾を感知した際に、砲塔周囲に合計26基装備された擲弾発射機から自動的に迎撃用擲弾を発射して、これらを撃墜するようになっているシステムである。


●機動力

T-95戦車が搭載するエンジンについては、当初はT-80U戦車と同じくGTD-1250ガスタービン・エンジン(出力1,250hp)を搭載すると見られていたが、後にチェリャビンスク・トラクター工場(ChTZ)が新たに開発したA-85-3 12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力1,650hp)が搭載されることが判明した。
このエンジンは従来のロシア製MBTに採用されてきたV型ディーゼル・エンジンと異なり、X型という独特なシリンダー配置を持っており、従来のエンジンに比べて非常にコンパクトに設計されている。

T-95戦車は従来のロシア製MBTより装甲防御力が大幅に強化されたことや、様々な新型装備を導入したことにより戦闘重量が55tに増加したといわれるが、この強力な新型エンジンA-85-3のおかげで路上最大速度80km/hという、従来のロシア製MBTを上回る機動性能を発揮できたという。
T-95戦車は従来のロシア製MBTに比べて車体が大柄で、それに伴い転輪数も1個増えて片側7個になっている。

T-95戦車の足周りは片側7個の転輪、片側4個の上部支持輪、後部に配された起動輪、前部に配された誘導輪で構成されていた。
サスペンションについては一般的なトーションバー(捩り棒)方式が採用されていたようだが、一説によるとアクティブ・サスペンションを導入していたともいわれる。


<T-95戦車>

全長:    9.96m
車体長:   6.40m
全幅:    3.582m
全高:    2.30m
全備重量: 55.0t
乗員:    3名
エンジン:  A-85-3 4ストロークX型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 1,650hp
最大速度: 80km/h
航続距離: 500km
武装:    152mm滑腔砲2A83×1
        80.5口径30mm機関砲2A42×1
        12.7mm重機関銃Kord×1
装甲:    複合装甲


<参考文献>

・「パンツァー2001年3月号 ”黒鷲”の近況 最新型ロシア主力戦車についてわかってきたこと」 古是三春 著
 アルゴノート社
・「パンツァー2009年5月号 未だベールに包まれるロシアMBT T-95の情報」 柘植優介 著  アルゴノート社
・「パンツァー2012年10月号 登場なるか!? ロシアの次世代装甲車輌」 鹿内誠 著  アルゴノート社
・「パンツァー2011年6月号 ロシア陸軍 冷戦後の変化と現状」 鹿内誠 著  アルゴノート社
・「パンツァー2013年7月号 ロシアMBTの現状と今後」 古是三春 著  アルゴノート社
・「パンツァー2010年7月号 今月のトピックス」  アルゴノート社
・「パンツァー2000年6月号 海外ニュース」  アルゴノート社
・「ソビエト・ロシア 戦車王国の系譜」 古是三春 著  酣燈社
・「世界の戦車パーフェクトBOOK」  コスミック出版
・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」  洋泉社
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「世界の戦車 完全網羅カタログ」  宝島社
・「新・世界の主力戦車カタログ」  三修社


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