●Sd.Kfz.223装甲無線車 Sd.Kfz.221装甲偵察車に随伴し、司令部との連絡を取るための長距離無線機を搭載したタイプとして開発されたのがSd.Kfz.223装甲無線車である。 本車もシャシーは当初IA型を使用していたが、後期生産車ではIB型を用いている。 無線機は通常、受信用としてSd.Kfz.222装甲偵察車と同じFu.Spr.Ger.a隊内無線機、および長距離連絡用のFu.10SE.30を搭載していたが、後にこれはFu.Spr.Ger.fとFu.12に変更された。 これらの無線機は、側面乗降用ドアの後ろに配置されていた。 つまり車体のほぼ中程にあったため、砲塔位置がやや後退することとなった。 主武装はSd.Kfz.221装甲偵察車と同一の7.92mm機関銃MG34に戻され、機関銃座も同一のものが装備された(副武装および携行弾薬数もSd.Kfz.221装甲偵察車と同じである)。 このため、MGの射界もSd.Kfz.221装甲偵察車と同じになっている。 砲塔もSd.Kfz.221装甲偵察車のものと同型で、ワイアーメッシュ・ドアが平面型であるのも同じであった。 装甲厚は前面が8mmで、その他は5.5mmとなっていた。 ヴィジョン・ヴァイザーはやはりSd.Kfz.221装甲偵察車と同様、側面と側面後部に2対あったが、ヴァイザーが圧延装甲板から鋳造製、そして直接スリット式へと推移し最後は完全に廃止されてしまった。 Fu.10/Fu.12無線機用のアンテナは、Kfz.14装甲無線車と同じ起倒式の4本支柱にフレーム型を取り付ける方式であった。 フレーム・アンテナは長方形であったが、そうでない車両も確認できる。 また、支柱の支持架には幾つかのヴァリエーションがあった。 隊内無線機のアンテナはロッド型で、これは砲塔の後部や側面に装備された。 車体はSd.Kfz.222装甲偵察車と共通化されていたが、砲塔を搭載する上部のデザインは独自のものとなっていた。 そのため、Sd.Kfz.222装甲偵察車とは砲塔前の跳弾板やラジエイター用の格子グリルの形状が異なっていた。 また後期においては、車体前面右側のヴィジョン・ブロックが完全に廃止されるという、Sd.Kfz.222装甲偵察車では見られない仕様車も存在した。 これは、Sd.Kfz.223装甲無線車が他の4輪装甲車に比べて最も長く生産され続けたことに原因があるようである。 生産メーカーおよびシャシー番号は、Sd.Kfz.222装甲偵察車と同じである。 生産開始は1935年で、1944年1月まで生産が続けられた。 Sd.Kfz.223装甲無線車の総生産数は、550両とされている。 性能データは全長4.80m、全幅1.95m、全高はアンテナを上げると1.83m、下げ位置の場合は1.75mであった。 戦闘重量は4.4tで、最大速度や航続距離等の諸性能はSd.Kfz.221装甲偵察車と同じである。 乗員は操縦手、無線手、車長兼機関銃手の3名であった。 |
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<Sd.Kfz.223装甲無線車> 全長: 4.80m 全幅: 1.95m 全高: 1.75m 全備重量: 4.4t 乗員: 3名 エンジン: ホルヒV8-108 4ストロークV型8気筒液冷ガソリン 最大出力: 75hp/3,600rpm 最大速度: 80km/h 航続距離: 320km 武装: 7.92mm機関銃MG34×1 (1,050発) 装甲厚: 5〜8mm |
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<参考文献> ・「パンツァー2002年12月号 AFV比較論 Sdkfz.222 & AB41装甲偵察車」 斎木伸生 著 アルゴノート社 ・「ピクトリアル ドイツ装輪装甲車」 アルゴノート社 ・「ジャーマン・タンクス」 ピーター・チェンバレン/ヒラリー・ドイル 共著 大日本絵画 ・「グランドパワー2011年10月号 ドイツ4輪装甲車」 後藤仁 著 ガリレオ出版 ・「グランドパワー1999年8月号 ドイツ4輪装甲車」 佐藤光一 著 デルタ出版 ・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904〜2000」 デルタ出版 ・「図解・ドイツ装甲師団」 高貫布士 著 並木書房 |
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