スティングレイＩ軽戦車
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M551シェリダン空挺軽戦車以降、アメリカ陸軍は軽戦車の開発を中断していたが、アメリカの各メーカーは独自に軽戦車の研究、開発を進めており、1970年代から80年代にかけて様々な試作車が製作された。 その1つがこのスティングレイ軽戦車であり、各試作車の中で唯一量産された車両である。 本車は、キャディラック・ゲージ・テクストロン社（現テクストロン・マリーン&ランドシステムズ社）がプライヴェート・ヴェンチャーとして1970年末より検討を進めてきたもので、1983年9月より本格的な開発に着手された。 本車は元々、アメリカ陸軍が1980年代初めに企画した「AGS」（Armored Gun System：装甲砲システム）計画の候補車として開発されたもので、開発コンセプトは西側戦後第2世代MBTの標準武装ともいえるL7系105mmライフル砲と弾薬を共用でき、高い機動性と生残性や空輸能力を備え、可能な限り既存のコンポーネントを流用してコストを低減するというものであった。 さらにMBTと同等には戦えないが、歩兵戦闘車などの装甲車両に対しては充分な優位を保ち、偵察任務は無論のこと、予算的にMBTを購入できない国のMBT代わりとすることを念頭に置いて開発が進められた。 1984年2月初めには試作車体が完成し、砲塔未装備の状態で同年8月から走行試験に供されている。 一方砲塔は1983年半ばより設計に着手し、翌84年6月には試作砲塔が完成し、M551空挺軽戦車の車体に載せられて試験が始められている。 「スティングレイ」（Stingray：アカエイ）と名付けられたこの試作車は、1984年10月のアメリカ陸軍協会の展示会において初めて一般公開された。 1985年末までに試作車は5,000km以上に及ぶ走行試験を終え、試験中に明らかになった欠点を改善するため最終減速機や冷却システムの改良と、新型ショック・アブソーバーへの換装などの改良が加えられ、1986年初めには本車に関心を示したタイに送られて試験に供された。 一方、さらに問題点を改良した試作第2号車が1986年半ばに完成し、タイでの試験を終えた試作第1号車は1987年初めにマレーシアに送られて試験を実施している。 スティングレイ軽戦車はAGS計画ではFMC社のCCV-Lに敗れたが、売り込みが功を奏したのかタイ陸軍が本車の採用を決め、1987年10月に106両が発注されて生産を開始した。 本車は避弾経始に優れた車体形状を採用することによって、車体前面の装甲厚を14.5mmに抑えて車重の増加を防いでいる。 もちろん大口径砲に対する防御は考えられておらず、小口径弾への耐弾性しかない。 機関は、デトロイト・ディーゼル社製の8V-92TA V型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン（出力535hp）と、アリソン社製のXTG-411-2A自動変速機（前進4段／後進2段）を組み合わせたパワーパックが採用されている。 車体と同様に避弾経始を充分考慮した形状の砲塔には、イギリスの王立造兵廠が軽戦車用にプライヴェート・ヴェンチャーで開発した105mm低反動ライフル砲LRF（Low-Recoil Force：低反動）が装備され、ディジタルFCS（射撃統制システム）も備えており、こと射撃能力に関してはMBTに近い能力を有している。 このスティングレイ軽戦車の発展型として1996年末に完成したのがスティングレイＩＩ軽戦車で、装甲の強化やサイドスカートの装着、さらにはM1A1エイブラムズ戦車と同じFCSの採用などを盛り込んで総合性能を高めているのが特徴である。 これらの装備により外観は少々変化し車重も1t以上増加したが、機動性の低下を避けるためにエンジンの出力が550hpに強化されたので速度性能などは反対に向上している。 |
＜スティングレイＩ軽戦車＞ 全長： 9.271m 車体長： 6.299m 全幅： 2.718m 全高： 2.54m 全備重量： 20.185t 乗員： 4名 エンジン： デトロイト・ディーゼル8V-92TA 2ストロークV型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力： 535hp／2,300rpm 最大速度： 67.59km／h 航続距離： 483km 武装： 51口径105mm低反動ライフル砲LRF×1 （32発） 12.7mm重機関銃M2×1 （1,100発） 7.62mm機関銃M240×1 （2,400発） 装甲厚： 最大14.5mm |
＜参考文献＞ ・「パンツァー2010年1月号 最後の軽戦車スティングレイ AGS計画から輸出用へ」 柘植優介 著 アルゴノート 社 ・「パンツァー2007年6月号 現在注目されている低反動砲」 佐藤慎ノ亮 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2013年8月号 第二次大戦後の軽戦車の展望」 大竹勝美 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2001年8月号 アメリカのAGS試作車輌」 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「世界の戦車(2) 第2次世界大戦後〜現代編」 デルタ出版 ・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著 三修社 ・「新・世界の主力戦車カタログ」 三修社 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー |
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