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SPz.12-3歩兵戦闘車





1950年代半ばに再編された西ドイツ陸軍は、第2次世界大戦の戦訓により装軌式APC(装甲兵員輸送車)の必要性を強く感じていたことから早急な実戦化を望んだものの、最初から新しく開発するとなるとかなりの時間を要するため、当時フランスのイスパノ・スイザ社で開発が進められていた30mm機関砲を装備する装軌式の対空自走砲を、APCに転用するという方針が採られた。

そして1956年にイスパノ・スイザ社との間に開発契約が結ばれ、西ドイツ陸軍からの要求仕様に基づいた試作車「HS30」が同年末に完成し、1957年から試験に供され、早くも1958年には3,625両という大量発注が行われた。
しかし、イスパノ・スイザ社はこのような大量生産に応じることができる工場施設を持っていなかったため、生産は西ドイツのヘンシェル、ハノマークの両社に加え、イギリスのレイランド自動車まで動員して行われることとなった。

HS30の生産型には「SPz.12-3」(Schützenpanzer 12-3:歩兵戦闘車12-3型)の制式名称が与えられ、1960年から西ドイツ陸軍への引き渡しが開始されたが、部隊レベルで運用してみると各部に不具合があることが判明し、このためか同年中に発注数は1,800両に減らされ、1962年には最終号車が引き渡されて生産を終了した。
SPz.12-3歩兵戦闘車は車体前面30mm、側面15mmの圧延防弾鋼板を用いた溶接構造が採られており、各装甲板は適度な避弾経始が付けられていた。

車体前部右側にはイスパノ・スイザ社製の86口径20mm機関砲HS820を装備する2名用砲塔を備えており、前部左側に操縦手席を配していた。
車体中央部には兵員室が設けられ、完全武装の歩兵5名を収容するようになっていた。
車体後部は機関室となっており、イギリスのロールズ・ロイス社製のB81 Mk.80 V型8気筒液冷ガソリン・エンジン(出力220hp)と、アメリカのアリソン社製のTX200-2変速機を組み合わせたパワーパックが収められていた。

サスペンションはトーションバー(捩り棒)方式を採用しており、足周りは片側5個の転輪と3個の上部支持輪、前方誘導輪と後方起動輪を組み合わせていた。
本車は水上浮航能力を備えておらず、NBC防護能力も持っていなかった。
SPz.12-3歩兵戦闘車は広義ではIFV(歩兵戦闘車)のはしりといえる車両であったが、前述のように後のマルダー歩兵戦闘車のような通常のIFVとは異なる車内レイアウトを採用していた。

これは、本車が元々兵員輸送車両ではなく対空自走砲として開発が行われたためであるが、この特殊な車内レイアウトのせいで車体後面に乗降用のランプドアを設けることができず、兵員は車体上面に設けられた観音開き式のハッチから乗降しなければならなかったのは大きな問題であった。
一応、車体後面左側にも観音開き式の小さなハッチが設けられていたが、ここからの乗降はかなり手間取るためほとんど使われなかった。

また車体後部に配された機関室は兵員室のスペースを圧迫し、兵員の居住性を悪化させるだけでなく5名の兵員しか搭乗できないというのは、軍隊の運用面にまで影響を及ぼす致命的な欠陥であった(ちなみに、マルダー歩兵戦闘車の兵員室には7名の完全武装歩兵が搭乗できる)。
このため、西ドイツ陸軍は直ちに本車の後継車両(後のマルダー歩兵戦闘車)の開発に乗り出す必要に迫られ、SPz.12-3歩兵戦闘車は短い運用期間で退役することとなった。


<SPz.12-3歩兵戦闘車>

全長:    6.31m
全幅:    2.54m
全高:    1.85m
全備重量: 14.6t
乗員:    3名
兵員:    5名
エンジン:  ロールズ・ロイスB81 Mk.80 V型8気筒液冷ガソリン
最大出力: 220hp
最大速度: 58km/h
航続距離: 270km
武装:    86口径20mm機関砲HS820×1 (500発)
        7.62mm機関銃MG3×1 (2,000発)
装甲厚:   8~30mm


<参考文献>

・「パンツァー2008年1月号 特集 マルダー戦闘兵車」 竹内修/三鷹聡/柘植優介 共著  アルゴノート社
・「パンツァー2014年6月号 創世記の西ドイツ軍AFV」 前河原雄太 著  アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート9 レオパルト1と第二世代MBT」  アルゴノート社
・「世界の軍用車輌(3) 装軌/半装軌式戦闘車輌:1918~2000」  デルタ出版
・「ヴィジュアル大全 装甲戦闘車両」 マイケル・E・ハスキュー 著  原書房
・「戦車名鑑 1946~2002 現用編」  コーエー
・「世界の戦車・装甲車」 竹内昭 著  学研
・「世界の戦車完全図鑑」  コスミック出版


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