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FS100シンバ装甲車





FS100シンバ装甲車は、GKNディフェンス社(1998年にアルヴィス社と合併)が主に輸出を目的として、1990年代初めに自社資金で開発に着手した4×4型の装輪式装甲車である。
ちなみに車名の「シンバ」(Simba)はスワヒリ語で「ライオン」を意味し、本車がアフリカ諸国での採用を期待して開発されたことを窺わせる。
しかしアフリカ諸国からの発注はまだ無く、フィリピン陸軍に150両採用されたのみである。

シンバ装甲車の車体は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、7.62mm機関銃弾の直撃や榴弾の破片に対する防御力を有している。
操縦手席は車体前部左側に張り出して設けられており、非常に前方視界が広く運転が容易である。
操縦手席の前面と左右側面には大型の防弾ガラス製の窓が設けられており、戦闘時には装甲プレートでカバーされるようになっている。

車体前部右側は機関室となっており、パーキンズ社製の210TI 直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力210hp)と、前進4段/後進2段の自動変速機を組み合わせたパワーパックが搭載されている。
この種の車両としては珍しく駆動方式は4×4と4×2を切り替えることができ、不整地では4輪駆動、路上では2輪駆動と使い分けることで効率的な走行が可能となっている。

サスペンションは、半楕円リーフ・スプリングにテレスコピック・ダンパーを組み合わせた単純な機構が採られている。
車長は車体中央部に位置し、その上に小型キューポラあるいは各種の砲塔が搭載される。
フィリピン陸軍仕様のAPC(装甲兵員輸送車)ヴァージョンでは、12.7mm重機関銃M2を装備する全周旋回式銃塔を搭載している。

車体後部は兵員室となっているがその小柄な外観からは考えられないほど広く、キューポラ搭載型で最大10名の完全武装歩兵を収容することができ、銃塔搭載型でも8名を収容することができる。
兵員室の側面には防弾視察用ブロックとガンポートが左側に4基、右側に2基備えられている。
兵員室への出入りは普通は車体後面の大型ドアを使うが、車体左側面にも小型ドアが設けられている。

シンバ装甲車は基本のAPCヴァージョンの他にも、ベルギーのコッカリル社製の36口径90mm低圧ライフル砲Mk.3を装備する2名用のCM90砲塔を搭載した火力支援ヴァージョン、アメリカのエマーソン社製のTOW対戦車ミサイル起倒式発射機「TUA」(TOW Under Armor)を搭載する戦車駆逐車ヴァージョン、後部兵員室に81mm迫撃砲を搭載する自走迫撃砲ヴァージョン、20mmまたは25mm機関砲を備える砲塔を搭載したIFV(歩兵戦闘車)ヴァージョン、催涙ガス弾発射機やスピーカーを装備する治安維持ヴァージョンなどが提案されている。

1992年の中頃、フィリピン陸軍がシンバ装甲車を導入することを検討し始め、延べ7,000kmに及ぶ路上、路外走行試験等を行い、150両の導入を決定した。
そしてGKNディフェンス社が20%、地場資本が80%を出資するアジア装甲車両テクノロジーズ社(AAVTC)がフィリピンに設立され、シンバ装甲車のライセンス生産が開始された。
現地工場は、アメリカ海軍の基地があったスービック湾に建設された。

フィリピン陸軍が発注した150両のシンバ装甲車の内、最初の8両はGKNディフェンス社が完成車両として供給し、次の2両は部品として運び込まれて現地でノックダウン生産され、さらに2両がキットから製作された。
残りの138両に関しては現地で部品から製作生産されることになっており、1994年末までに14両がスービック工場から送り出されたという。


<FS100シンバ装甲車>

全長:    5.35m
全幅:    2.50m
全高:    2.19m
全備重量: 11.2t
乗員:    2名
兵員:    10名
エンジン:  パーキンズ210TI 直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 210hp/2,500rpm
最大速度: 100km/h
航続距離: 660km
武装:    12.7mmまたは7.62mm機関銃×1 (1,000発)
装甲厚:   最大8mm


<参考文献>

・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904〜2000」  デルタ出版
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「新・世界の装輪装甲車カタログ」  三修社
・「世界の装輪装甲車カタログ」  三修社
・「世界の軍用4WDカタログ」  三修社
・「世界の軍用4WD図鑑PART2」  スコラ


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