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シャヒネ対空ミサイル・システム





1975年にサウジアラビア陸軍はフランスのトムソンCSF社(現タレス社)に対し、クロタル対空ミサイル・システムで用いられるR.440対空ミサイルの改良型を、AMX-30戦車のサウジアラビア向け仕様であるAMX-30S戦車の車体に搭載する自走対空ミサイル車両の開発要求を出した。
これがシャヒネ対空ミサイル・システムで1979年に試作車が完成し、36両の発注を受けて1981年から引き渡しが始められ、1982年には全車の納入を終えている。

このミサイル装備車と共に、同じAMX-30S戦車の車体を用いて捜索レーダーを装備する専用車両も発注され、引き渡しが行われている。
続いて1984年には、さらなる改良を図ったシステムの開発要求が再びサウジアラビア陸軍より出され、これに応じて1986年から引き渡しが行われた。
この改良型の登場により以前のものは「シャヒネ1」、改良型は「シャヒネ2」の呼称が与えられることになった。

この際サウジアラビア陸軍は、AMX-30S戦車に搭載する車載型シャヒネ37両に加えて、空輸が可能な牽引式トレイラーに対空ミサイル・システムを搭載した簡易型シャヒネ19両も発注しており、同時に戦車およびトレイラー搭載型の捜索レーダー・システムも追加発注を行った結果、戦車搭載型レーダー・システムは合計36両、トレイラー搭載型レーダー・システムは10両を装備することになった。

シャヒネ対空ミサイル・システムは車台こそAMX-30S戦車から流用しているが、車体上部構造は一新されて装甲兵員輸送車のような箱型構造に改められている。
この車体上部に全周旋回式ターレットを載せ、このターレットの左右にミサイルを収めるコンテナ兼用発射機を3基ずつ装備し、中央に17kmのレンジを持つモノパルス・ドップラー方式の追尾・誘導レーダーを備えている。

本システムで使用されるR.460対空ミサイルは、クロタル対空ミサイル・システム用のR.440対空ミサイルの改良型で、レーダーを用いた指令照準線方式がそのまま踏襲されており、電磁近接信管と赤外線近接信管により目標の至近距離で炸裂する方式を採っているが、最大飛翔速度はマッハ2.3からマッハ2.8に向上し、さらにECM環境下でも誘導を行えるようにTV誘導システムも装備されている。

捜索レーダー搭載車はパルス・ドップラー方式のレーダーを備え、高度6,000mまでの目標を18.5kmの距離で発見することができ、40目標以上を自動的に記録し、この内脅威度の高い順から12目標を選択して追尾することが可能である。
シャヒネ2では捜索レーダーの距離が19.5kmに延長され、データ・リンクを介して両システムが結ばれているのが相違点で、ミサイルも赤外線近接信管のみに改められている。


<R.460対空ミサイル>

全長:       3.12m
直径:       0.16m
発射重量:    100kg
最大飛翔速度: マッハ2.8
誘導方式:    指令誘導
最大有効射程: 15,000m
最大有効射高: 6,000m


<参考文献>

・「グランドパワー2016年3月号 AMX-30の開発と構造」 後藤仁 著  ガリレオ出版
・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」  デルタ出版
・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著  グランプリ出版
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「ミサイル事典」 小都元 著  新紀元社


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