HOME研究室(第2次世界大戦編)自走砲自走砲(カナダ)>セクストン25ポンド自走榴弾砲

セクストン25ポンド自走榴弾砲





セクストンはイギリス陸軍の要求に基づいてカナダで開発、生産が行われた自走榴弾砲で、カナダ製のラム巡航戦車の車台を流用している。
イギリス陸軍は第2次世界大戦当初、国産のヴァレンタイン歩兵戦車の車台を流用し、箱型の背の高い密閉式戦闘室を設けて28口径25ポンド(87.6mm)榴弾砲を搭載した「ビショップ」(Bishop:司教)自走榴弾砲を開発した。

しかし戦闘室の構造上25ポンド榴弾砲の仰角が制限されていたため(約15度)、最大射程が短く(牽引型の25ポンド榴弾砲の半分程度の5,825m)、左右の旋回角も狭かった(約4度ずつ)。
また車内は手狭で搭載弾数も少なく(32発)、最大速度も遅い(路上で15マイル(24.14km)/h)など実用性に問題があった。

そのためイギリス陸軍は、アメリカで開発されたM7 105mm自走榴弾砲の導入を決定した。
M7自走榴弾砲はM3中戦車の車台を流用してオープントップ式の戦闘室を設け、アメリカ製の22.5口径105mm榴弾砲M2A1の砲架を改造して搭載したものであった。
しかし主砲の105mm榴弾砲はイギリス陸軍の弾薬体系と互換性が無く、補給上の問題があった。

そのためイギリス陸軍は自軍で使用している25ポンド榴弾砲をM7自走榴弾砲に搭載することを計画し、M7自走榴弾砲の試作車の内の1両を用いて25ポンド榴弾砲を搭載したT51自走榴弾砲を試作した。
しかし射撃試験の結果砲架に問題があることが判明し、またアメリカがイギリス製野砲と自国製車台の組み合わせに生産効率の面から難色を示したためにこの計画は中止された。

そこで目を付けられたのが、M7自走榴弾砲と同じくM3中戦車系列の足周りを持つカナダ製のラム巡航戦車であった。
ラム巡航戦車の車台を流用して25ポンド榴弾砲を搭載する自走榴弾砲の開発は1942年の中頃からMLW社(Montreal Locomotive Works:モントリオール機関車製作所)で始められ、同年末に試作車が完成してイギリスで実用試験が行われた。

試験の結果は良好で「セクストン25ポンド自走榴弾砲」として制式採用され、1943年初めに量産が開始された。
セクストン自走榴弾砲の基本構造は、M3中戦車をベースにしているM7自走榴弾砲と同じくラム巡航戦車の砲塔を取り去り、車体上部にオープントップ式の戦闘室を設けて25ポンド榴弾砲を搭載したものであった。
ただし、操縦手席が左側にあるM7自走榴弾砲と違って右側に操縦手席があるため(イギリス車なので右ハンドル)、主砲は左寄りにオフセットされていた。

主砲の25ポンド榴弾砲はビショップ自走榴弾砲に搭載した際、後座長が大き過ぎたために俯仰角が狭くなってしまったことを踏まえて、砲身先端に偏平な二重作動式の砲口制退機が取り付けられた。
その結果、後座長は牽引型の1.02mから0.51mへとほぼ半分に減少した。
主砲の俯仰角は−9〜+45度で、最大射程はM7自走榴弾砲よりわずかに長かった。
左右の旋回角は左が25度、右が15度となっていた。

発射速度は8発/分で搭載弾数は榴弾と発煙弾が計87発、対戦車榴弾が18発となっていた。
M7自走榴弾砲はイギリス陸軍では「プリースト」(Priest:司祭)の愛称が与えられたが、この命名の由来となったといわれている説教台に似た12.7mm重機関銃M2用のリングマウントはセクストン自走榴弾砲には装備されず、車載機関銃もアメリカ製の7.62mm機関銃M1919A4ではなく、イギリス製の7.7mmブレン軽機関銃を2挺搭載していた。

また戦闘室左側面の下部に弾薬補給用の小ハッチが設けられているなど主砲以外の相違点も多く、M7自走榴弾砲の25ポンド砲ヴァージョンがセクストン自走榴弾砲であるという表現は適当とはいえないだろう。
ちなみに「セクストン」(Sexton)とは寺男(教会の使用人)の意味で、ビショップ、プリーストと同様に教会に因んだネーミングとなっている。

セクストン自走榴弾砲は1943年中に424両がMLW社で完成し、1945年までに合計で2,150両が生産された。
最初に生産された124両をセクストンMk.I、それ以降に生産された車両をセクストンMk.IIと呼ぶ。
最初の生産型であるセクストンMk.IはM3中戦車と同じサスペンションを持ち、ディファレンシャル・ハウジング・カバーは3ピース・タイプ、履帯もアメリカ式のものであった。

続くセクストンMk.IIではディファレンシャル・ハウジング・カバーが1ピース・タイプのものになり、サスペンションもスプリングを強化延長し上部支持輪を後方に下げたものに変更された。
また履帯も、カナダ製の軽量なCDPタイプが採用されている。
セクストン自走榴弾砲は1942年10月にイタリア戦線で初めて実戦に投入され、1944年6月のノルマンディー上陸作戦以降はM7自走榴弾砲に代わって本車がイギリス陸軍自走砲兵部隊の主力装備となった。


<セクストンMk.II 25ポンド自走榴弾砲>

全長:    6.121m
全幅:    2.718m
全高:    2.438m
全備重量: 25.855t
乗員:    6名
エンジン:  ライトR-975-C1 4ストローク星型9気筒空冷ガソリン
最大出力: 400hp/2,400rpm
最大速度: 40.23km/h
航続距離: 290km
武装:    28口径25ポンド榴弾砲Mk.III×1 (105発)
        7.7mmブレン軽機関銃×2 (1,500発)
装甲厚:   12.7〜107.95mm


<参考文献>

・「パンツァー2009年7月号 第二次大戦におけるイギリスの近代的自走砲 セクストン25ポンド自走砲架」 前河原
 雄太 著  アルゴノート社
・「パンツァー2011年5月号 イギリス陸軍の主力野砲 25ポンド砲(下)」 稲田美秋 著  アルゴノート社
・「パンツァー2012年3月号 カナダ軍のラム巡航戦車」 竹内修 著  アルゴノート社
・「グランドパワー2000年11月号 ラム巡航戦車とバリエーション」 桑原敬 著  デルタ出版
・「世界の軍用車輌(1) 装軌式自走砲:1917〜1945」  デルタ出版
・「第2次大戦 イギリス・アメリカ軍戦車」  デルタ出版
・「グランドパワー2013年5月号 25ポンド自走砲セクストン」 箙浩一 著  ガリレオ出版
・「戦車名鑑 1939〜45」  コーエー


兵器諸元

HOME研究室(第2次世界大戦編)自走砲自走砲(カナダ)>セクストン25ポンド自走榴弾砲