HOME研究室(第2次世界大戦後〜現代編)装輪式装甲車装輪式装甲車(南アフリカ)>ローイカット戦闘偵察車

ローイカット戦闘偵察車





ローイカット戦闘偵察車は、旧式化したイーランド戦闘偵察車の後継として南アフリカ陸軍の要求により、威力偵察を目的としてロイメック・サンダック社が開発した強力な8輪装甲車である。
1976年から研究が始められ、1985年から本格的な開発に移行した。
1989年には最初の生産型が完成し、1990年から南アフリカ陸軍へ配備が始まり、現在までに100両以上が生産されている。

ローイカット戦闘偵察車の車体は圧延防弾鋼板の溶接構造で、戦闘重量は28tと8輪装甲車として最も重たい部類に入る。
これは防御を重視したためで、前面装甲はロシア製の23mm機関砲弾の直撃に耐えられる。
また南アフリカ製装甲車の常で、対地雷構造も付加されている。
さらに車輪を1つ失っても最大速度で走行でき、2つ失っても走行が可能と戦場における生存性は極めて高い。

エンジンは出力563hpのV型10気筒液冷ディーゼル・エンジンで、変速機と共に一体のパワーパックとなっており、故障時にも前線での迅速な交換が可能となっている。
最大速度は路上で120km/h、路外で60km/hと極めて高速であり、路上航続距離は1,000kmと長大である。
また燃費向上のため、路面状態に合わせ駆動を8×8、8×4と選択することができる。

操縦手席は車体前部中央にあり、車体中央部は砲塔を搭載した戦闘室、車体後部は機関室という常識的なレイアウトとなっている。
砲塔内には右側前部に砲手、その後ろに車長、左側に装填手が搭乗する。
主砲はLIW社が海軍用に開発した76.2mm砲を転用した62口径76.2mmライフル砲GT4で、APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)を使用した場合、砲口初速1,610m/秒で3,000mの有効射程を有している。

開発当時は105mm砲を搭載する案もあったが、南部アフリカで多く使用されていた旧ソ連製のT-55中戦車やT-62中戦車は、76.2mm砲でも全ての角度から破壊することが可能であった。
このため、戦闘時にはより多くの弾薬を携行する方が有利であることを戦訓から学んだ南アフリカ陸軍は、多くの砲弾を搭載でき速射性能に優れた76.2mm砲を採用した。

ちなみに76.2mm砲弾の携行数は48発で、7.62mm機関銃弾の携行数は3,600発である。
FCS(射撃統制システム)はレーザー測遠機、昼/夜間サイト、ディジタル弾道コンピューター、2軸砲安定化装置を組み込んだ戦車並みのものを採用しており、戦闘力は極めて高い。
1990年からは輸出用として、105mm砲を搭載したヴァージョンの開発も行われている。

これは、西側第2世代MBTの標準武装となったイギリスの王立造兵廠製の51口径105mmライフル砲L7を基に、LIW社が開発した52口径105mm低反動ライフル砲GT7を搭載しており、NATO標準の105mm砲弾が使用でき、威力は通常の105mmライフル砲と遜色無い。
またFCSも一新されAPFSDSを使用した場合、射距離2,000mでのグルーピングは1.5m2である。
105mm砲を搭載するため車体も軽量化が図られており、総重量は800kg程軽くなっている。

さらに接地圧軽減のためタイアも幅広のものに替えられ、タイア空気圧調整装置も付加されている。
また、ローイカット戦闘偵察車の車体にZT3対戦車ミサイルの3連装発射機を搭載した戦車駆逐車型や、35mm連装対空機関砲装備の砲塔を搭載したZA-SPADS対空自走砲なども提案されている。
さらに、スペインとオーストリアが共同開発したアスコッド歩兵戦闘車の車体にローイカット戦闘偵察車の105mm砲塔を搭載した、アスコッド105軽戦車も開発されている。


<ローイカット戦闘偵察車 76mm砲搭載型>

全長:    8.20m
車体長:   7.09m
全幅:    2.90m
全高:    2.80m
全備重量: 28.0t
乗員:    4名
エンジン:  V型10気筒液冷ディーゼル
最大出力: 563hp
最大速度: 120km/h
航続距離: 1,000km
武装:    62口径76.2mmライフル砲GT4×1 (48発)
        7.62mm機関銃FN-MAG×2 (3,600発)
装甲厚:


<ローイカット戦闘偵察車 105mm砲搭載型>

全長:    8.20m
車体長:   7.09m
全幅:    2.90m
全高:    2.80m
全備重量: 28.8t
乗員:    4名
エンジン:  V型10気筒液冷ディーゼル
最大出力: 563hp
最大速度: 120km/h
航続距離: 1,000km
武装:    52口径105mm低反動ライフル砲GT7×1 (32発)
        7.62mm機関銃FN-MAG×2 (3,200発)
装甲厚:


<参考文献>

・「パンツァー2014年2月号 南アフリカの装輪式軽戦車 ルーイカット」 三鷹聡 著  アルゴノート社
・「パンツァー2013年8月号 第二次大戦後の軽戦車の展望」 大竹勝美 著  アルゴノート社
・「パンツァー2016年4月号 装輪戦車の系譜」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2021〜2022」  アルゴノート社
・「グランドパワー2004年6月号 世界の装輪装甲車輌(1) ローイカット105mm」  ガリレオ出版
・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904〜2000」  デルタ出版
・「決定版 世界の最強兵器FILE」 おちあい熊一 著  学研
・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」  洋泉社
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「世界の装輪装甲車カタログ」  三修社


HOME研究室(第2次世界大戦後〜現代編)装輪式装甲車装輪式装甲車(南アフリカ)>ローイカット戦闘偵察車