Pz.68戦車 
       
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      +概要
       
       
      Pz.61戦車が部隊に配備されて間もなく、スイス陸軍はPz.61戦車の改良型の開発を決定し、1968年には試作車が完成して、「Pz.68」(Panzer
      68:68式戦車)の呼称が与えられた。 
      その後様々な試験が実施され、Pz.68戦車の性能に満足したスイス陸軍は同車の調達を決定し、第1生産ロットとして170両のPz.68 Mk.1戦車が発注され、1971年1月~1974年7月にかけてスイス陸軍に引き渡された。 
       
      Pz.68 Mk.1戦車では、主砲は水平・垂直の2軸が安定化され、レーザー測遠機とアナログ弾道コンピューター、赤外線/白色光サーチライトが装備された。 
      またエンジン出力が660hpにアップし、変速・操向機も前進6段/後進6段の新型に変更された他、起動輪と誘導輪の形状も改められた。 
      さらに履帯も、着脱可能なゴムパッドが装着された、より幅広のものに変更された。 
       
      Pz.68 Mk.2戦車は、第2生産ロットとして1977年から50両が配備された型で、主砲の砲身に、熱による歪みを補正するためのサーマル・スリーブを装着する等の改良が加えられていた。 
      Pz.68 Mk.3戦車は、第3生産ロットとして1978年から110両が配備された型で、砲塔が大型化され、主砲の安定装置と砲手用照準機等が新型に換装された。 
       
      Pz.68 Mk.4戦車は、第4生産ロットとして1983年より60両が配備された型で、基本的にMk.3と同じ仕様の車両であった。 
      さらに1988年初めには、「Pz.68/88」と呼ばれるPz.68戦車の近代化改修プランが発表され、Mk.2~Mk.4の195両のPz.68戦車が近代化改修されることになった。 
       
      改良の中心となったのは新型FCS(射撃統制装置)の搭載で、レーザー測遠機とディジタル弾道コンピューターを組み合わせた、ドイツのハネウェル社製のシステムを、チューリッヒのコントラヴェス社でライセンス生産して組み込んだ他、砲口照合装置の装備、砲手用視察装置の安定化、サスペンションの強化、新型NBC防護装置の導入、燃料タンクをGRP製から鋼製に変更した等で、比較的地味な改良に終始している。 
       
      現在、もっと画期的なPz.68戦車の近代化改修プランが、トゥーンのルアーク・ランド・システムズ社から提案されている。 
      これはPz.68戦車に120mm滑腔砲を搭載し、車体・砲塔に増加装甲を装着するもので、西側の戦後第3世代MBTに準じる攻撃力、防御力を達成しようというものである。 
       
      この120mm滑腔砲は、比較的小型であるPz.68戦車の砲塔でも、大幅な改修無しに搭載できるように考えられたもので、「CTG」(Compact
      Tank Gun:コンパクト戦車砲)と呼ばれるが、西側第3世代MBTの標準武装となっている、ドイツのラインメタル社製の44口径120mm滑腔砲Rh120より長い49口径長の砲身を有しており、Rh120と同じ弾薬を使用できる。 
       
      増加装甲については詳細は不明だが、形状から見て成形炸薬弾対策を重視した空間装甲と思われる。 
      魅力的な試みだが、現在のところスイス陸軍からの発注は無い。 
      なお、Pz.61/Pz.68戦車の派生型としては次の車両がある。 
       
      ●Fl.Pz.68(Flak Panzer 68:68式対空戦車) 
      本車はPz.68戦車の車体に、チューリッヒのエリコン社製の90口径35mm対空機関砲KDAを連装で装備する、ドイツ陸軍のゲーパルト対空自走砲と同様の全周旋回式砲塔を搭載した対空車両である。 
      本車は試作車が1両製作されただけで、スイス陸軍には採用されなかった。 
       
      ●Pz.K.68(Panzerartilleriekanone 68:68式装甲加農砲) 
      本車はPz.68戦車の車体に、長砲身の155mm榴弾砲を装備する全周旋回式砲塔を搭載した自走砲で、戦闘重量は44tと戦車型より増え、それに伴って路上最大速度が55km/hに低下していた。 
      乗員は4名で、副武装として砲塔上面にベルン造兵廠製の7.5mm機関銃MG51と、6連装の80.5mm発煙弾発射機を装備していた。 
      1972年に試作車が1両製作されたが、採用には至らなかった。 
       
      ●Brü.Pz.68(Brückenlegepanzer 68:68式架橋戦車) 
      本車はPz.68戦車の車体をベースとした架橋車両で、1971年にスイス陸軍に制式採用された。 
      全長18.23m、60tの荷重に耐えられる橋梁を、Pz.68戦車の車体上部に装備している。 
      橋梁は折り畳み式ではなく、架橋の際にはリードバーを伸ばして橋梁をそれに沿って繰り出し、架橋後にリードバーを回収するようになっている。 
       
      
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      <Pz.68戦車> 
       
      全長:    9.49m 
      車体長:   6.88m 
      全幅:    3.14m 
      全高:    2.88m 
      全備重量: 39.7t 
      乗員:    4名 
      エンジン:  MTU MB837Ba-500 4ストロークV型8気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル 
      最大出力: 660hp/2,200rpm 
      最大速度: 55km/h 
      航続距離: 350km 
      武装:    51口径105mmライフル砲Pz.Kan.61×1 (56発) 
              7.5mm機関銃MG51×2 (5,200発) 
      装甲厚:   15~120mm 
       
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      <参考文献> 
       ・「パンツァー2007年11月号 スイスの第二世代MBT Pz.61/68の開発・構造と発展」 佐藤慎ノ亮 著  アルゴ 
       ノート社 
      ・「パンツァー2005年7月号 スイス陸軍 Pz.68戦車インアクション」 中川未央 著  アルゴノート社 
      ・「パンツァー2012年11月号 各国の第二世代MBT」 柘植優介 著  アルゴノート社 
      ・「パンツァー2012年11月号 ベル・エポックのMBT」 城島健二 著  アルゴノート社 
      ・「ウォーマシン・レポート9 レオパルト1と第二世代MBT」  アルゴノート社 
      ・「世界AFV年鑑 
2005~2006」  アルゴノート社 
      ・「世界の戦車(2) 
第2次世界大戦後~現代編」  デルタ出版 
      ・「世界の戦闘車輌 2006~2007」  ガリレオ出版 
      ・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著  グランプリ出版 
      ・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」  洋泉社 
      ・「戦車名鑑 
1946~2002 現用編」  コーエー 
      ・「世界の戦車・装甲車」 竹内昭 著  学研 
      ・「世界の最新陸上兵器 
300」  成美堂出版 
      ・「新・世界の主力戦車カタログ」  三修社 
      ・「世界の主力戦車カタログ」  三修社 
       
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