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プーマ戦闘工兵車





●開発

旧式化したイギリス製のセンチュリオン戦車シリーズ(イスラエル名:ショット)から廃物利用的に生み出されたナグマショットAPCを1983年から運用した結果、MBTベースの重APCの有用性を確認したイスラエル陸軍は、旧式化したMBTをベースとする重APCを大量生産することを決定した。
こうしてナグマフォンAPCやナクパドンAPCなど、ナグマショットAPCを改良したショット戦車ベースの重APCが次々と生み出されていったが、その一方でショット戦車をベースとするCEV(戦闘工兵車)の開発も進められた。

こうして誕生したのがプーマCEVで、1991年からイスラエル陸軍による運用が開始された。
ちなみに「プーマ」(PUMA)というとアメリカライオン(ピューマ)に因んだ名称のように思われるが、プーマCEVの場合はヘブライ語で「障害物啓開工兵車両」を意味する”Porets Mihsholim Handasee”を略した名称である。
プーマCEVは基本的には他のショット戦車ベースの重APCと同様の構造をしており、ショット戦車から砲塔を取り外して車体中央部の戦闘室を工兵を収容する兵員室に改装している。

車体前面には地雷処理ローラー用の取り付け基部が増設されており、これによりRKM地雷処理ローラーの他、排土用のドーザー・ブレイドも装着できるようになっている他、車体後部の機関室上面には大型の装具用バスケットが設置されており、さらに車体後面には工兵の速やかな乗降を手助けするための梯子が2基設けられている。
また機動力向上のために、サスペンションがメルカヴァMk.I/Mk.II戦車と同様のものに換装されている。

さらに後期型の車両ではパワーパックの換装にまで手が付けられており、このタイプはメルカヴァMk.I戦車が搭載するパワーパックに変更され、これに合わせて履帯もメルカヴァMk.I/Mk.II戦車と同じ国産の幅広履帯に更新されている。
そして最近では、車体後部に「カーペット」発射システムを搭載できるようにした車両も登場している。

「カーペット」は燃料気化爆弾を用いた地雷原啓開用ロケット・システムで、発射機は20発のロケット弾を収容し1分以内に全弾発射が可能である。
20発のロケット弾と発射機の合計重量は約3.5tだが、このシステムを搭載するためには各種アタッチメントを増設する必要がある。

プーマCEVの派生型としては車体後部に大型クレーンを装着し、上部構造物を大幅に嵩上げするなどの改修を施した装甲回収車型が存在する。
この装甲回収車型は「プーマ・ラム」(PUMA RAM)という名称が与えられており、少数がプーマCEVから改造生産された。


●構造

プーマCEVの基本的な構造はナグマショットAPCと同様で、旧式化して不要になったショット戦車の砲塔を取り外して、代わりに上部構造物を設置し、戦闘室であった車体中央部を5名の工兵および工作機材を収容する兵員室に改装して製作されている。
ただし、プーマCEVの上部構造物はナグマショットAPCに比べてかなり背が低く、密閉式となっているのが特徴である。

上部構造物の上面には3基のハッチが設けられており、最も大きい中央のハッチは工兵の乗降に使用される。
その前方には周囲に視察ブロックを備えたウルダン工業製の背の低いキューポラが2基設けられており、これは車長と機関銃手用である。
操縦手用ハッチは、上部構造物の前方右側の車体上面に設けられている。

なお、本車は他のショット戦車ベースの重APCと同じく車体後部にパワーパックを搭載しているため、M113APCのように車体後部に工兵の乗降に用いるランプドアを設けることができず、工兵は敵に狙撃される危険を承知で車体上面のハッチから乗降しなければならない。
プーマCEVの車体はベースとなったショット戦車と同じく圧延防弾鋼板の全溶接構造で、車体前面は装甲厚76mm(センチュリオンMk.9戦車以降がベースの場合は118mm)、傾斜角55度という強固な防御力を誇っている。

また上部構造物とサイドスカートは複合装甲素材により構成されており、敵歩兵やゲリラが使用する携帯式対戦車兵器に対する防御力を向上させている。
さらに、上部構造物の側面には追加でERA(爆発反応装甲)を装着することも可能である。
プーマCEVの武装は、車体上面右側に設置されたラファエル社製のOWS(オーバーヘッド式武装ステイション)に7.62mm機関銃FN-MAGを1挺装備している。

他にも3基のピントルマウントに7.62mm機関銃FN-MAGを1挺ずつ装備しており、さらにメルカヴァ戦車と同じく対歩兵用の60mm迫撃砲も1門搭載している。
プーマCEVは機動力を向上させるため、メルカヴァMk.I/Mk.II戦車に用いられているものと同じ新設計のホルストマン式サスペンションに換装している。
これにより転輪のトラベル長が600mmと、原型の2倍以上にまで増大している。

プーマCEVのパワーパックは、ベースとなったショット戦車に搭載されていたもの(アメリカのコンティネンタル社製のAVDS-1790-2A V型12気筒空冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力750hp)と、アリソン社製のCD-850-6クロスドライブ式自動変速機(前進2段/後進1段)の組み合わせ)を流用しているが、後期型の車両では、メルカヴァMk.I戦車と同じパワーパック(AVDS-1790-5A V型12気筒空冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力908hp)と、国産のCD-850-6BX自動変速機の組み合わせ)に換装されて機動力が向上している。


<プーマ戦闘工兵車 初期型>

全長:    7.55m
全幅:    3.38m
全高:    2.65m
全備重量: 51.0t
乗員:    3名
兵員:    5名
エンジン:  コンティネンタルAVDS-1790-2A 4ストロークV型12気筒空冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 750hp/2,400rpm
最大速度: 
航続距離: 
武装:    7.62mm機関銃FN-MAG×4
        13.3口径60mm迫撃砲C04×1
装甲厚:  


<プーマ戦闘工兵車 後期型>

全長:    7.55m
全幅:    3.38m
全高:    2.65m
全備重量: 51.0t
乗員:    3名
兵員:    5名
エンジン:  コンティネンタルAVDS-1790-5A 4ストロークV型12気筒空冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 908hp/2,400rpm
最大速度: 
航続距離: 
武装:    7.62mm機関銃FN-MAG×4
        13.3口径60mm迫撃砲C04×1
装甲厚:  


<参考文献>

・「世界の戦車イラストレイテッド33 イスラエル軍現用戦車と兵員輸送車 1985〜2004」 マーシュ・ゲルバート 著
 大日本絵画
・「パンツァー2008年11月号 ユニークなイスラエルの戦車改造重装甲車輌」 荒木雅也 著  アルゴノート社
・「パンツァー2006年12月号 イラク戦争がAFVに与えた影響と今後の対応」 三鷹聡 著  アルゴノート社
・「パンツァー2002年10月号 イスラエル軍の市街戦用装甲車輌」 古是三春 著  アルゴノート社
・「パンツァー2014年6月号 イスラエルの戦車改造重APC」 柘植優介 著  アルゴノート社
・「パンツァー2013年10月号 イスラエル国防軍の現状」 永井忠弘 著  アルゴノート社
・「パンツァー2007年1月号 レバノンにおけるイスラエル機甲部隊(2)」  アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート18 メルカバとイスラエルMBT」  アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート35 イスラエル軍のAFV 1948〜2014」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2021〜2022」  アルゴノート社
・「10式戦車と次世代大型戦闘車」  ジャパン・ミリタリー・レビュー


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