パルマリア155mm自走榴弾砲は、イタリアのオート・メラーラ社によって主に輸出を目的として開発された自走榴弾砲である。 本車の開発は1977年に開始され、1982年に生産型第1号車が完成している。 本車を最初に採用したのはリビアで1982年から210両が輸出され、続いてナイジェリアにも25両が輸出された。 またアルゼンチンのTAMSE社が、TAM戦車をベースに開発したVCA155 155mm自走榴弾砲用に砲塔システムのみ20基を発注しており、これらは1986年までに引き渡されている。 また1990年には輸出先は未公表だが、恐らくナイジェリア向けに25両が生産された。 現在パルマリア自走榴弾砲の生産は行われていないものの、輸出市場への売り込みが続けられている。 主砲はオート・メラーラ社によって設計された41口径の155mm榴弾砲が搭載されており、砲身には排煙機と二重作動式の砲口制退機が装着されている。 砲塔は全周旋回が可能で、主砲の俯仰角は−4〜+70度となっている。 最大射程は通常のP3榴弾使用時で24.7km、P3榴弾のロケット補助弾を使用した場合は30kmまで伸びる。 また弾薬にはイギリス・ドイツ・イタリアが共同開発した牽引式155mm榴弾砲FH-70や、スウェーデン製の牽引式155mm榴弾砲FH-77Bのものや、アメリカ製のM107榴弾、M483A1榴弾、M549A1ロケット補助榴弾などの弾薬も使用可能となっている。 発射速度は自動装填装置を用いて短時間なら15発/分、1時間の持続射撃なら1発/分、それ以上の持続射撃の場合は3分間に1発となっている。 撃発は、電動油圧式バルブで行われる。 自動装填装置は砲塔後部のバスル内にあるがこの装置は砲弾のみを装填するもので、装薬の装填は手動で行われる。 装填の角度は+2度で一定しており、発砲後に自動的に装填位置に復帰する機構が備えられている。 なお自動装填装置には即用弾23発、車体内に予備弾7発が収納されており、携行弾数は合計で30発となる。 砲塔は防弾アルミ板の全溶接構造で、砲塔内には右側前方に車長が位置するほか砲手、装薬操作手、弾倉操作手の計4名が搭乗する。 砲塔上面の右側前寄りには、8基のペリスコープと後ろ開き式の一枚ハッチの付いた車長用キューポラが備えられており、このキューポラには対空自衛用に7.62mmまたは12.7mm機関銃を装着することができる。 砲塔の左右側面にはそれぞれ右開き式のハッチが設けられており、ここから給弾を行うようになっている。 また砲塔前面左右にはそれぞれ4基ずつ、計8基の発煙弾発射機が取り付けられている。 砲塔にはP170直接照準サイト、P186展望式サイト等3つの照準機が装備されており、間接支援射撃だけでなく状況に合わせた使用が考慮されている。 なお、砲塔の駆動には油圧と電気が用いられている。 車体はオート・メラーラ社が輸出向けに開発したOF-40戦車のものが流用されているが、相違点も多い。 転輪の間隔を広げて接地長が伸ばされており、車体長も約37cm延長されている。 またOF-40戦車では戦闘室より一段高くなっていた機関室が、戦闘室と同じ高さに改められている。 なお車体前部右側には操縦手席があり、前部左側には補助動力装置が搭載されている。 操縦手には左側に開くスライド式ハッチと3基のペリスコープが用意されており、中央のペリスコープは夜間操縦用のパッシブ式ペリスコープとの交換が可能となっている。 パワーパックは、ドイツのMTU社製のMB837Ea-500 V型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力750hp)と、レンク社製のRK304自動変速機(前進4段/後進2段)の組み合わせとなっており、OF-40戦車より低出力のエンジンが採用されている。 なおパルマリア自走榴弾砲と同じ車体を流用したファミリー車両として、全天候レーダーと対空・対地両用の76.2mm速射砲を大型の鋼製砲塔に装備したオートマティック対空自走砲が存在する。 |
<パルマリア155mm自走榴弾砲> 全長: 11.474m 車体長: 7.265m 全幅: 3.35m 全高: 2.874m 全備重量: 46.0t 乗員: 5名 エンジン: MTU MB837Ea-500 4ストロークV型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 750hp/2,200rpm 最大速度: 60km/h 航続距離: 500km 武装: 41口径155mm榴弾砲×1 (30発) 7.62mm機関銃MG42/59×1 (1,000発) 装甲厚: |
<参考文献> ・「パンツァー2016年12月号 アリエテ開発に繋がったOF40戦車とそのファミリー」 団真吾 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2011年9月号 イタリアの第三世代MBT アリエテ戦車」 荒木雅也 著 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」 デルタ出版 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー ・「世界の装軌装甲車カタログ」 三修社 |