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M901 ITV自走対戦車ミサイル





1970年代初期に登場したアメリカ陸軍の有線誘導式対戦車ミサイルBGM-71 「TOW」(Tube-launched Optically-tracked Wire-to-command-Link:チューブ発射-光学追尾-有線誘導)は、その後長い間に西側諸国に標準型の重対戦車ミサイルとして普及し、攻撃ヘリコプターや各種の戦闘車両にも搭載されるようになっていった。
その中でもAFVへの標準的な搭載形式となったのが、エマーソン社の「ITV」(Improved TOW Vehicle:改良型TOW車両)である。

これは1960年代以来、アメリカ陸軍を始め西側諸国に広く採用されたM113装甲兵員輸送車の車体上に、エマーソン社が開発した連装型のTOW対戦車ミサイル装甲発射機を搭載したもので、1976年にアメリカ陸軍に採用されて以来M113装甲兵員輸送車、AIFV歩兵戦闘車、LAV装輪式装甲車といったアメリカ製の装甲車両を採用した諸国にも、TOW対戦車ミサイル自走発射機の標準型として普及している。

本システムの開発は1975年12月から開始され、翌76年2月にはエマーソン、ノースロップ、クライスラーの3社が選定され、それぞれ2両ずつの試作車を製作することになった。
試作車による選定試験は1976年8〜12月にかけて行われ、エマーソン社の車両が勝者となり先行生産型10両が発注されて生産を開始した。

1978年6月には「M901 ITV」として制式化されて本格的な生産が開始され、1986年まで段階的に生産が行われて輸出型も含めて3,541両が完成し、その内の3,315両がアメリカ陸軍に引き渡されている。
本システムのベース車台にはM113A1およびA2装甲兵員輸送車が用いられており、車体上面の車長用キューポラにシステムの中心となる連装型のTOW対戦車ミサイル装甲発射機が搭載されている。

装甲発射機は全周旋回が可能で−30〜+34度の俯仰角を有しており、車体上面に高さ44cm伸ばすことができる。
この装甲発射機は、自走車台の移動時には後方に向けられて車体上に折り畳まれるようになっており、発射機前面左右の丸穴がミサイルの射出孔で、中央の開孔部に照準/誘導装置が収められている。

目標の捕捉とミサイルの誘導はこの照準/誘導装置を通して完全に車内で行われ、2発のTOW対戦車ミサイルが発射された後には装甲発射機が車体上面に降ろされて、キューポラ後方にある大きなハッチを開いて人力でミサイルの再装填が行われる。
車内には10発の予備ミサイルが搭載されておりミサイルの再装填は40秒で完了するが、この際に被弾し易いことが欠点とされている。

なおアメリカ陸軍のM901 ITVは現在、「RISE」(Reliability Improvements for Selected Equipment:装備近代化・実用性向上)と呼ばれるアップグレード・パッケージを導入したM901A3 ITVに改修されている。
M901A3 ITVでは、エンジンがデトロイト・ディーゼル社製の6V-53T V型6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力275hp)に強化されており、変速機もアリソン社製のX-200-4自動変速機(前進4段/後進1段)に換装されている。

車体には、装甲防御力の強化のためにERA(爆発反応装甲)のパッケージが取り付けられている。
また、ミサイルも改良型のTOW2対戦車ミサイルを使用するようになっている。
TOW2ではERAへの対処としてミサイルが二重弾頭となっており、先端にある成形炸薬がERAを、主装甲貫徹炸薬が主装甲を破壊する仕組みになっている。
最大有効射程は、TOW対戦車ミサイルの3,200mから3,750mに向上している。


<M901A1 ITV自走対戦車ミサイル>

全長:    4.864m
全幅:    2.686m
全高:    3.35m
全備重量: 11.794t
乗員:    4名
エンジン:  デトロイト・ディーゼル6V-53 2ストロークV型6気筒液冷ディーゼル
最大出力: 212hp/2,800rpm
最大速度: 64.37km/h(浮航 5.79km/h)
航続距離: 483km
武装:    TOW対戦車ミサイル連装発射機×1 (12発)
        7.62mm機関銃M60×1 (1,000発)
装甲厚:   28.58〜44.45mm


<M901A3 ITV自走対戦車ミサイル>

全長:    4.864m
全幅:    2.686m
全高:    3.35m
全備重量: 12.701t
乗員:    4名
エンジン:  デトロイト・ディーゼル6V-53T 2ストロークV型6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 275hp/2,800rpm
最大速度: 64.37km/h(浮航 5.79km/h)
航続距離: 483km
武装:    TOW対戦車ミサイル連装発射機×1 (12発)
        7.62mm機関銃M60×1 (1,000発)
装甲厚:   28.58〜44.45mm


<BGM-71E TOW2A対戦車ミサイル>

全長:       1.174m
直径:       0.1524m
翼幅:       0.34m
発射重量:    21.5kg
弾頭重量:
誘導方式:    有線誘導
最大飛翔速度: 360m/秒
有効射程:    65〜3,750m


<BGM-71F TOW2B対戦車ミサイル>

全長:       1.168m
直径:       0.1524m
翼幅:       0.34m
発射重量:    21.5kg
弾頭重量:
誘導方式:    有線誘導
最大飛翔速度: 360m/秒
有効射程:    65〜3,750m


<参考文献>

・「グランドパワー2018年2月号 戦後の米軍装甲兵員輸送車」 後藤仁 著  ガリレオ出版
・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」  デルタ出版
・「パンツァー2012年10月号 アメリカ陸軍の現用AFV」 城島健二 著  アルゴノート社
・「世界のAFV 2018〜2019」  アルゴノート社
・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著  三修社
・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著  グランプリ出版
・「世界の最強陸上兵器 BEST100」  成美堂出版
・「ミサイル事典」 小都元 著  新紀元社


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