M60A1戦車はM60戦車の量産改良型であり、M60戦車の試作車が完成した4年後の1962年に早くも大量生産が行われている。 これはライバルの旧ソ連軍が、T-55中戦車の100mmライフル砲よりもさらに大口径の115mm滑腔砲を備えたT-62中戦車を1961年から配備し始めたからで、対抗策としてやむなく泥縄式の改良をM60戦車に施し生産を始めたのが真相といえよう。 もちろんアメリカ陸軍はパットン戦車シリーズの後継となる新型MBTも「T95」の試作呼称で開発を続けていたが、実戦化するにはまだまだ時間が掛かる上に失敗に終わるリスクも大きかった(実際にT95戦車は途中で開発中止になった)。 こうしてM60戦車シリーズはソ連軍とアメリカ軍の戦車ギャップ(数と質の格差)を埋める標準型MBTとして量産され、戦後第2世代MBTとしては驚異的な約2万両もの生産数を記録する大ベストセラー戦車となったのである。 しかしM60A1戦車はベストセラーに相応しい、実に理に適った戦車らしい戦車であった。 M60A1戦車の戦闘重量は約48tで、この重量に相応しい充分な厚みの装甲防御力を有していた。 ライバルである旧ソ連軍のT-55中戦車やT-62中戦車は戦闘重量が40t以下であり、当時はまだ複合装甲が実用化されておらず戦車の防御力が重量に比例していた時代だったため、当然M60A1戦車の方が装甲防御力で上回っていた。 イギリス陸軍の戦後第2世代MBTであるチーフテン戦車は1960年代に登場したMBTとしては最強の火力と防御力を誇っていたものの、55tの戦闘重量に対してエンジン出力が750hpとアンダーパワーだったため機動力不足という欠陥があったが、M60A1戦車はそれより軽量でよりパワーのあるエンジンを積んでいたために機動性も良好で、攻・走・守の3つの要素でバランスが取れた優秀な戦車であった。 M60A1戦車の車体はパットン戦車シリーズの血統を受け継ぎ、分厚い防弾鋳鋼と圧延防弾鋼板を組み合わせて溶接されていた。 車体の装甲厚は部位の重要度に応じて大きな幅が付けられており、一番厚い前面下部では5.63インチ(143mm)あったのに対し一番薄い下面では0.5インチ(12.7mm)しかなかった。 操縦手席は車体前部の中央で、右に旋回して開くスライド式の操縦手用ハッチには3基のM27ペリスコープが取り付けられていた。 夜間に操縦する時には、中央の1基を赤外線タイプと交換できた。 砲塔はM60戦車の特徴になっていた丸いお椀のような亀甲型の鋳造鋼タイプを捨て、避弾経始に優れた細長い鼻のような鋳造/溶接式の新型砲塔が採用された。 実際正面から見ると暴露面積は亀甲型より少なくでき、形が細長いため砲塔内の容積を広げられた。 その証拠にM60A1戦車の主砲弾薬搭載数は63発であったが、これは亀甲型砲塔のM60戦車より6発多かった。 砲塔の装甲厚は一番厚い前面で10インチ(254mm)もあり、T-55中戦車が装備する100mmライフル砲では貫徹することが困難であった。 足周りは、エンジンがコンティネンタル発動機製のAVDS-1790-2A V型12気筒空冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力750hp)に強化され、変速・操向機もアリソン変速機製のCD-850-6Aクロスドライブ式自動変速・操向機(前進2段/後進1段)に変更されている。 この足周りによってM60A1戦車は、30マイル(48.28km)/hという当時としては実用的なレベルの路上最大速度を得ていた。 M60A1戦車の量産が開始された直後の1963年から、アメリカ陸軍は1970年代に運用する新型MBTの開発を「MBT70」(Main Battle Tank 70)の試作呼称で旧西ドイツ陸軍と共同で進めたが、諸事情により1970年にMBT70戦車の開発中止が決定し、その代替として開発が進められた新型MBT「XM1」の実用化にはまだ時間が必要だったため、引き続き70年代もM60A1戦車をアメリカ陸軍の主力MBTとして使用することになった。 そこでM60A1戦車を、70年代の使用に耐えるように近代化改修することが計画された。 これがM60A1戦車の「RISE」(Reliability Improvements for Selected Equipment:実用性向上/装備近代化)改修で、1971〜79年にかけて約5,000両のM60A1戦車がRISE化されている。 RISE化改修の内容はエアクリーナーの能力向上、ジェネラル・エレクトリック社製の電気式主砲安定化装置の導入、新型のT142履帯への換装、コンパクトな新型のAN/VSS3Aサーチライトへの換装、同軸機関銃をベルギーのFN社製の7.62mm機関銃M240へ換装、イギリス式のM239発煙弾発射機の導入等である。 |
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<M60A1戦車> 全長: 9.436m 車体長: 6.947m 全幅: 3.632m 全高: 3.256m 全備重量: 47.628t 乗員: 4名 エンジン: コンティネンタルAVDS-1790-2A 4ストロークV型12気筒空冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 750hp/2,400rpm 最大速度: 48.28km/h 航続距離: 483km 武装: 51口径105mmライフル砲M68×1 (63発) 12.7mm重機関銃M85×1 (900発) 7.62mm機関銃M73×1 (5,950発) 装甲厚: 12.7〜254mm |
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<参考文献> ・「パンツァー2008年3月号 M60戦車の40年」 佐藤慎ノ亮/竹内修 共著 アルゴノート社 ・「パンツァー2004年6月号 74式戦車 vs M60A1戦車」 小野山康弘 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2012年11月号 各国の第二世代MBT」 柘植優介 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2013年3月号 アメリカのM60A1戦車」 平田辰 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2001年4月号 M60戦車シリーズ」 古是三春 著 アルゴノート社 ・「ウォーマシン・レポート8 パットン戦車シリーズ」 アルゴノート社 ・「ウォーマシン・レポート9 レオパルト1と第二世代MBT」 アルゴノート社 ・「世界AFV年鑑 2005〜2006」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2014年4月号 M60主力戦車の開発と構造」 後藤仁 著 ガリレオ出版 ・「世界の戦車(2) 第2次世界大戦後〜現代編」 デルタ出版 ・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著 三修社 ・「新・世界の主力戦車カタログ」 三修社 ・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」 洋泉社 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー ・「世界の最新陸上兵器 300」 成美堂出版 |
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