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M52 105mm自走榴弾砲





M52 105mm自走榴弾砲は、M44 155mm自走榴弾砲と並行して開発が進められたアメリカ陸軍の戦後第1世代自走砲である。
どちらもM41ウォーカー・ブルドッグ軽戦車の車体をベースとし105mmと155mmの榴弾砲を装備するところなど、後に開発されたM108 105mm自走榴弾砲とM109 155mm自走榴弾砲の関係に酷似していた。

M52自走榴弾砲の開発開始は1946年で1948年に「T98」の試作名称が与えられ、T99(後のM44自走榴弾砲)と同様にデトロイト戦車工廠で開発が進められた。
T98自走榴弾砲の試作車は1950年に完成して試験に供されたが、T99自走榴弾砲と同様に2両が製作された試作車はそれぞれ照準システムに簡易型と究極型を装備していた。

試験の結果各部に改良を加えて呼称も「T98E1」と改められ、簡易型照準機を装備したタイプが選定されて1951年1月に684両が発注されて生産を開始した。
重量過大などの問題を生んだM44自走榴弾砲とは異なり、試作車に一部改良を加えた程度で生産は順調に進められたが、制式化は遅れて生産が終了した1955年11月にようやく「M52 105mm自走榴弾砲」(105mm Self-propelled Howitzer M52)の制式名称が与えられている。

M52自走榴弾砲の車体は、M44自走榴弾砲と同様にM41軽戦車の車体の前後を入れ替えて使用していた。
エンジンを車体前部に配して車体後部を戦闘室とし、発砲時の安定性を高めるために履帯の接地長を長く取ることを目的として誘導輪を接地型にしていたところなどはM44自走榴弾砲と変わらないが、M44自走榴弾砲が固定式戦闘室に主砲を搭載したのに対し、M52自走榴弾砲は限定旋回式の密閉砲塔に主砲を搭載したことが相違点となっている。

またM52自走榴弾砲は主砲が反動の小さい105mm榴弾砲ということもあって、M44自走榴弾砲に設けられた車体後部の駐鋤は未装備とされた。
操縦手は砲塔内の左前部に位置しており、このため車長を含めた乗員5名は全て砲塔内に配されていた。
砲塔上面右側後方に設けられた車長用キューポラには、自衛用として12.7mm重機関銃M2を装備していた。
砲塔は左右各60度ずつの限定旋回式であったが、支援火力の提供という任務を考えると特に問題は無かった。

主砲の俯仰角は−10〜+65度と、実用上充分な値となっていた。
主砲の105mm榴弾砲M49は24口径という短砲身で、重量19kgの榴弾を用いて砲口初速472m/秒、最大射程は11,270mとM44自走榴弾砲が装備する155mm榴弾砲M45と比べて射程がやや劣っていたが、M44自走榴弾砲の弾薬搭載数が24発だったのに対し、M52自走榴弾砲は弾薬のサイズが小さいため車内と砲塔合わせて4倍以上の102発を搭載することが可能であった。

1956年にはM52自走榴弾砲のエンジンを燃料噴射型に換装する改修が実施されており、この改修を施した車両は「M52A1」と改称されている。
1962年には後継のM108自走榴弾砲にその座を譲ってアメリカ陸軍から退役したが、一部の車両は西側各国へ供与されており、日本の陸上自衛隊にもエンジンを換装したM52A1自走榴弾砲が30両供与された。


<M52 105mm自走榴弾砲>

全長:    5.801m
全幅:    3.147m
全高:    3.317m
全備重量: 24.54t
乗員:    5名
エンジン:  コンティネンタルAOS-895-3 4ストローク水平対向6気筒空冷スーパーチャージド・ガソリン
最大出力: 500hp/2,800rpm
最大速度: 56.33km/h
航続距離: 145km
武装:    24口径105mm榴弾砲M49×1 (102発)
        12.7mm重機関銃M2×1 (900発)
装甲厚:   9.53〜12.7mm


<参考文献>

・「パンツァー2002年1月号 陸自の車輌・装備シリーズ M44/M52自走榴弾砲」 田村尚也 著  アルゴノート社
・「パンツァー2003年7月号 陸上自衛隊の供与自走砲 M44/M52」 高城正士 著  アルゴノート社
・「パンツァー2014年7月号 陸上自衛隊 懐かしのアメリカ製車輌」 城島健二 著  アルゴノート社
・「パンツァー2013年11月号 1960〜2000年代のトルコ軍AFV」 城島健二 著  アルゴノート社
・「パンツァー2014年1月号 スペイン軍戦闘車輌の40年」 大竹勝美 著  アルゴノート社
・「パンツァー2014年6月号 創世記の西ドイツ軍AFV」 前河原雄太 著  アルゴノート社
・「パンツァー1999年4月号 陸上自衛隊の自走砲」 田村尚也 著  アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート9 レオパルト1と第二世代MBT」  アルゴノート社
・「異形戦車ものしり大百科 ビジュアル戦車発達史」 齋木伸生 著  潮書房光人新社
・「グランドパワー2021年12月号 M41軽戦車シリーズ」 後藤仁 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2010年4月号 M41戦車シリーズ」 島内慶太 著  ガリレオ出版
・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」  デルタ出版
・「自衛隊歴代最強兵器 BEST200」  成美堂出版
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー


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