+概要
西ドイツの再軍備化のため、アメリカは1955年11月に1,232両のM48A2戦車(訓練用のM48A2C戦車も含む)を、同国に無償供与した。
しかしM48A2戦車は基本設計が古く、西ドイツ陸軍の運用構想にも合っていなかったため、西ドイツは1957年から「標準戦車」(Standard
Panzer)の計画呼称で、戦後初の国産MBTの開発をフランスと共同で開始した。
結局、フランスとの共同開発は諸事情により途中で解消されたが、西ドイツが開発を進めていた標準戦車の試作車は、1963年に「レオパルト」(Leopard:豹、レオパルト2戦車の制式化後にレオパルト1と改称された)として、同陸軍に制式採用されることになった。
レオパルト戦車の生産は1965年から開始され、アメリカから供与されたM47/M48戦車シリーズに代わって西ドイツ陸軍の第2世代MBTとなった。
続いて西ドイツは、レオパルト戦車の後継となる第3世代MBTの開発を、「KPz.70」(Kampfpanzer 70:70年代型主力戦車)の計画呼称で、1963年からアメリカと共同で開始した。
結局、この共同開発も諸事情により途中で中止されたが、KPz.70の開発で得られた成果を基に西ドイツは単独で第3世代MBTの開発を続行し、1977年に「レオパルト2」として同陸軍に制式採用された。
レオパルト2戦車の生産は1978年から開始されたが、西ドイツ陸軍に必要数が配備されるまで時間が掛かるため、それまでのストップ・ギャップとして、同陸軍が保有するM48A2戦車に近代化改修を施して性能を向上させることが提案された。
そして、この西ドイツ独自の改修型は「M48A2GA2」(”G”はGermany:ドイツの頭文字)と命名された。
改修の内容についてであるが、まずM48A2戦車の主砲であるアメリカのウォーターヴリート工廠製の48口径90mm戦車砲M41を、レオパルト1戦車シリーズと同じイギリスの王立造兵廠製のサーマル・ジャケット付き51口径105mm戦車砲L7A3に換装し、火力の強化に加えて、レオパルト1戦車シリーズとパーツや弾薬の共通化が図られた。
この主砲の換装に併せて、主砲防盾も西ドイツが独自に改良したより分厚いものに変更された。
また、副武装として装備されていたアメリカ製の7.62mm機関銃M1919A4E1/M73と12.7mm重機関銃M2も、レオパルト1/2戦車で用いられているデュッセルドルフのラインメタル社製の7.62mm機関銃MG3に換装された。
搭載弾薬数は105mm砲弾が砲塔に24発、車体前部左側に14発、前部右側に8発の計46発、7.62mm機関銃弾が砲塔に2,250発、車体に2,500発の計4,750発となっていた。
砲塔上面右側に装備されていたキューポラ型車長用銃塔M1は、シルエットを高くするとして不評だったため、レオパルト1戦車シリーズと同型の車長用ハッチに換装された。
また主砲緊急撃発用ジェネレイター、同軸機関銃用コントロール・システム、砲手用のTZF1A単眼式望遠照準眼鏡、新型の弾道計算機、主砲のトラヴェリング・ロック、電源用リレイボックス等の改修や換装も施された。
さらに夜間の戦闘・行動能力の向上のため、エアフルトのエレクトロ・スペツィアル社製のBM8005光量増幅式暗視ペリスコープが操縦手席と車長席に取り付けられた。
これは垂直40度、左右55度の視界を持っていた。
また砲手用の暗視装置は、ベルリンのAEG社(Allgemeine Elektricitäts-Gesellschaft:総合電気会社)製のPZB200夜間照準装置(低光量TV)となり、どちらもレオパルト1戦車より新式となった。
砲塔の左右側面には各4基ずつ、計8基の732型発煙弾を発射する90mm発煙弾発射機が装着された。
M48A2GA2戦車への改修作業はカッセルのヴェクマン社が担当し、1978年6月9日に改修第1号車が西ドイツ陸軍に引き渡された。
当初、650両のM48A2戦車がA2GA2規格に改修されたが、さらに692両のM48A2戦車が追加改修され、合計1,342両のM48A2GA2戦車が誕生した。
これは、当時の西ドイツ陸軍の戦車総数の実に36%を占めていたことになる。
アメリカ以外の国での独自改修ながら、この改修プログラムによってM48A2GA2戦車は初期のM60戦車を凌ぐ性能を獲得したとも評された。
なお西ドイツ陸軍のM48A2GA2戦車は、1980年代の末までに全車が退役している。
一方、最近になってトルコは陸軍が保有するM48A5戦車のグレードアップを計画し、ヴェクマン社に対してM48A2GA2改修キットを170セット発注し、これによって自国のM48戦車を近代化した。
この時ヴェクマン社はM48A2GA2改修キットの一部について、レーザー測遠機や安定装置付き照準機、熱線暗視装置、弾道コンピューターといった第3世代MBT並みの射撃統制装置の導入と、増加装甲等の採用をトルコに提案したがこれは実現しなかった。
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