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M45重戦車





●開発

アメリカ陸軍は、M4中戦車シリーズの主砲を37.5口径75mm戦車砲M3から22.5口径105mm榴弾砲M4に換装した火力支援型を実戦に投入してその有効性を認識しており、1944年前半に当時開発が進められていた新型中戦車T23にも同様の車種を用意しようと画策し、76両の生産が求められた。
T23中戦車は最大装甲厚88.9mmで車体デザインは全体的に避弾経始が考慮されており、M4中戦車より装甲防御力に優れた中戦車であった。

ただしT23中戦車が採用したハイブリッド式機関系は信頼性が低く、機動性能の面で問題を抱えていた。
T23中戦車の火力支援型はまず試作車を製作して試験を行い、その後76両の生産型を製造する予定であったが、その後T23中戦車の機関系を変更して信頼性を向上させ、さらに装甲の強化も図った改良型であるT26E1中戦車(1944年6月に重戦車に分類変更)が開発されたことを受け、計画はT26E1重戦車への105mm榴弾砲搭載へと改められ、T23中戦車火力支援型は試作車が製作されること無く終わった。

T26E1重戦車の火力支援型の開発がいつ開始されたのかは明らかにされていない(1944年6月とする資料もある)が、ジェネラル・モータース社傘下のグランド・ブラン工廠とクライスラー社傘下のデトロイト工廠の両者に対して、「T26E2」の試作呼称でM4中戦車火力支援型に搭載された105mm榴弾砲M4をT26E1重戦車に装備するための砲架と砲塔、戦闘区画内の装備品配置などに関する図面が送付されたのは1944年10月のことなので、同年夏頃から開発が開始されたものと思われる。

そしてこの図面に従い、105mm砲弾を収める弾薬庫に換えるなどの変更を盛り込んだT26E2重戦車の木製の実物大モックアップが製作されて審査に供され、主砲防盾に敵弾が命中した際の衝撃で主砲の俯仰機構が損傷するのではとの指摘を受け、主砲防盾の形状が改められることになったが、肝心の実物大モックアップ写真が公表されていないので詳細は不明である。

この実物大モックアップは1944年末もしくは1945年に入って間もなく審査に供されたものと思われ、T26E2重戦車の試作第1号車の車体はデトロイト工廠で、砲塔はグランド・ブラン工廠でそれぞれ製作されることになった。
T26E2重戦車の試作車は1945年4月の完成が予定されたが、M26パーシング重戦車の生産に追われていたためか、その完成はドイツが降伏した後の6月末もしくは7月のことで、アバディーン車両試験場における試作第1号車(車両登録番号30131576)の試験開始は7月にずれ込んでしまった。

試作車の完成と前後して、T26E2重戦車はグランド・ブラン工廠とデトロイト工廠の両者に対して数百両が生産発注されたようだが、詳細は不明である。
T26E2重戦車の試験の結果は良好であったが、すでにドイツが降伏して必要性が無くなってしまったことを受け、グランド・ブラン工廠への発注はキャンセルされてしまった。

そして1945年7月からデトロイト工廠での生産が開始されたが、1945年末には生産の終了が通達され185両が完成しただけに留まった。
そしてこれまた期日は不明だが本車は戦後「M45重戦車」(Heavy Tank M45)として制式化され、一部の車両は1950年6月に勃発した朝鮮戦争に投入されている。


●構造

M45重戦車は車体自体は、弾薬庫など105mm砲弾を収容可能とする変更を除けばM26重戦車と同一だったが、砲塔は基本レイアウトは変わらないものの装甲の強化が図られた専用のものが搭載された。
砲塔前面の装甲厚は127mmに、主砲防盾も203.2mmへ、そして側面も76.2〜127mmとM26重戦車より強固なものとされたが、砲塔後面は逆に63.5mmとM26重戦車より薄くされていた。

これは、M45重戦車の主砲である22.5口径105mm榴弾砲M4がM26重戦車の50口径90mm戦車砲M3より軽量だったため、砲塔の重量バランスを取るためにM45重戦車は前面を中心に装甲を増厚したといわれている。
またM45重戦車は大きくなった砲弾装填の便を考慮して、装填手席が配された砲塔左側はさらに大きく外側に張り出す形へと変わった。
つまり、完全な新規設計の砲塔が用いられたということである。

またM26重戦車と同じく主砲の左側に7.62mm機関銃M1919A4を同軸装備し、反対側にM76G照準望遠鏡を装備する砲架は「T117」の試作呼称が与えられ、後に「M71砲架」として制式化されている。
このM71砲架には、ジャイロ式安定化装置が装着されていた。
火力支援という運用目的から主砲の俯仰角は−10〜+35度と増大し、床下の弾薬庫と砲塔内に合わせてM26重戦車よりも多い74発の105mm砲弾を収容した。

これ以外の機関銃用弾薬の搭載数などは、M26重戦車と同じであった。
その他、操縦手用ハッチと装填手用ハッチのペリスコープはM13に、車長用キューポラのペリスコープもM15へと換わり、砲手用の照準ペリスコープも弾種変更に伴いM10Dに換わるなどの変化が生じている。
M45重戦車の主砲である105mm榴弾砲M4は、牽引型の105mm榴弾砲M2の改良型であるM3を車載型に改めたもので、M4中戦車の火力支援型にも搭載された。

この砲は薬室長38.2cm、砲身長236.4cm、砲身長比22.5口径、ライフリング36条、総重量5,130kgで水平式尾栓を備えていた。
弾種は重量19.1kgのM1榴弾(砲口初速472m/秒、最大射程11,160m)と、重量16.7kgのM67対戦車榴弾(砲口初速381m/秒、最大射程7,855m)、重量19.9kgのM60白燐発煙弾(砲口初速472m/秒、最大射程11,110m)、M48六塩化エタン発煙弾(砲口初速472m/秒、最大射程11,160m)が用意された。

なおM67対戦車榴弾は対装甲目標用とされ有効射程は3,000m程度と短かったが、射距離に関わらず厚さ102mmの均質圧延装甲板(傾斜角0度)を穿孔することが可能であったため、M45重戦車はある程度の対戦車戦闘能力も備えていた。


<M45重戦車>

全長:    6.52m
車体長:   6.459m
全幅:    3.513m
全高:    2.817m
全備重量: 42.185t
乗員:    5名
エンジン:  フォードGAF 4ストロークV型8気筒液冷ガソリン
最大出力: 500hp/2,600rpm
最大速度: 48.28km/h
航続距離: 161km
武装:    22.5口径105mm榴弾砲M4×1 (74発)
        12.7mm重機関銃M2×1 (550発)
        7.62mm機関銃M1919A4×2 (5,000発)
装甲厚:   12.7〜203.2mm


<参考文献>

・「パンツァー2013年4月号 アメリカのTシリーズ試作戦車(14) T26中戦車シリーズ/T28突撃戦車」 大佐貴美彦
 著  アルゴノート社
・「パンツァー2006年10月号 アメリカ陸軍 T25/T26試作中戦車」 中川未央 著  アルゴノート社
・「パンツァー2015年1月号 第二次大戦時の直援用車輌列伝」 久米幸雄 著  アルゴノート社
・「グランドパワー2015年3月号 M26重戦車シリーズ(1) M26/M46の開発と構造&派生型」 後藤仁 著  ガリレ
 オ出版
・「グランドパワー2002年11月号 M26重戦車パーシング(1)」 後藤仁 著  デルタ出版
・「グランドパワー2002年12月号 M26重戦車パーシング(2)」 後藤仁 著  デルタ出版
・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著  大日本絵画


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