HOME研究室(第2次世界大戦編)戦車戦車(アメリカ)>M2軽戦車

M2軽戦車





第1次世界大戦においては国産戦車を戦線に投入すること無く終戦を迎えたアメリカであったが、決して戦車開発をおろそかにしていたわけではなかった。
アメリカで最初の戦車が誕生したのは1916年のことで、その戦車はC.L.ベスト・トラクター社が開発した実物大モックアップで、同社製のCLB75農業用トラクターに装甲車体と旋回式砲塔を搭載したものだった。

また戦車の祖先ともいえる装軌式牽引車ホウルト・トラクターを開発したホウルト・トラクター社も、同じく1916年に「HA36」という小型戦車を開発し、さらに1917年にも「G-9」と「スペシャル18」という2種類の戦車を開発しているが、結局戦車装備の先駆けとなったのはこれら国産戦車ではなく、イギリスから導入した菱形戦車であった。
さらに、フランスのルノーFT軽戦車のライセンス生産権を得て改良を加えたM1917軽戦車が国内生産されたが、これらの戦車が配備されたのは第1次世界大戦終結後の1919年に入ってからであった。

戦後は軍縮政策により、数種の試作車が製作されたもののいずれも実用化には至らず、アメリカ初の本格的な国産戦車となったのは、1927年から開発が開始された一連のT1軽戦車シリーズであった。
このような状況下で、1932年にアメリカ陸軍参謀総長となったダグラス・マッカーサー将軍は陸軍の機械化を強く要求し、この結果同年に開発されたT1E4軽戦車をベースに、イリノイ州のロックアイランド工廠で1933年に製作されたのがT2軽戦車であった。

続いて試作されたT2E1軽戦車はT2軽戦車と大差無かったが、サスペンションがより単純な垂直渦巻スプリング方式に変更されており、1935年末に「M2A1軽戦車」(Light Tank M2A1)として制式化され19両が生産された。
M2A1軽戦車は当時としては平均的な軽戦車で、外見的には特に目立った点は無い。
エンジンにはボーイング・ステアマン練習機に搭載された、コンティネンタル発動機製作所製のW-670-7 星型7気筒空冷ガソリン・エンジン(出力262hp)が採用された。

サスペンションは、垂直に配置した渦巻スプリングでボギーを支えるVVSS(Vertical Volute Spring Suspension:垂直渦巻スプリング・サスペンション)方式であった。
履帯はダブルピンで、サイドガイド形式となっていた。
これらエンジン、サスペンション、履帯の機構は後のアメリカ陸軍の全ての軽戦車、中戦車に踏襲されるもので、本車がアメリカ戦車の基本機構を確立したともいえる。

M2軽戦車シリーズはM2A1〜A4まで大きく4種類のサブタイプが開発されているが、最初の生産型であるM2A1軽戦車は最大0.625インチ(15.88mm)厚の装甲を有する車体に、ブラウニング社製の12.7mm重機関銃M2と7.62mm機関銃M1919A4を防盾に同軸装備する全周旋回式砲塔1基を搭載していた。
M2A2軽戦車は、M2A1軽戦車と同じ武装を左右別々の小砲塔に装備する2砲塔型式としたタイプであり、237両が生産された。

M2A3軽戦車はM2A2軽戦車と同じく2砲塔型式であるが、装甲厚が最大0.875インチ(22.23mm)に強化されると共に車体の延長が図られており、これに併せてサスペンションが強化され、エンジンも改良型のW-670-9 星型7気筒空冷ガソリン・エンジンに換装されている。
またM2A2軽戦車では左砲塔に円筒形のキューポラが装着されていたが、M2A3軽戦車では6角形のキューポラに変更されている。

M2A3軽戦車は、1938年に73両が生産された。
M2A4軽戦車はM2軽戦車シリーズの最終型で、初の本格的生産型であり1939年初めに試作車が完成した。
車体自体はM2A3軽戦車と同じであったが並列装備の砲塔を大型の2名用砲塔1基に改め、武装も牽引式の53.5口径37mm対戦車砲M3を短砲身化して戦車砲に改修した50口径37mm戦車砲M5と、7.62mm機関銃M1919A4を防盾に同軸装備した。

また装甲厚が最大1インチ(25.4mm)まで強化され、車体左右のスポンソン前部に7.62mm機関銃M1919A4が1挺ずつ装備されるようになった。
砲塔上部には車長用キューポラが装着され、キューポラの後部には対空機関銃用のマウントを取り付けることが可能であった。

M2A4軽戦車は1939年10月にACF社(American Car and Foundry:アメリカ自動車製造・鋳造所)に生産発注が行われ、1940年5月〜1941年3月にかけて365両が生産された。
さらに1942年4月にボールドウィン機関車製作所で10両が追加生産されており、M2A4軽戦車の生産数は合計で375両になる。

M2軽戦車シリーズはA1〜A3までは武装が機関銃のみで戦力的価値が低かったため、第2次世界大戦ではほとんどが訓練用に使用されたが、37mm戦車砲を装備するM2A4軽戦車の一部は太平洋戦争の初期に実戦投入されている。
また本車はレンドリース法成立に伴い、初めてイギリスに供与された戦車にもなった。


<M2A1軽戦車>

全長:    4.14m
全幅:    2.388m
全高:    2.337m
全備重量: 8.523t
乗員:    4名
エンジン:  コンティネンタルW-670-7 4ストローク星型7気筒空冷ガソリン
最大出力: 262hp/2,400rpm
最大速度: 72.42km/h
航続距離: 193km
武装:    12.7mm重機関銃M2×1 (1,800発)
        7.62mm機関銃M1919A4×2 (4,700発)
装甲厚:   6.35〜15.88mm


<M2A2軽戦車>

全長:    4.14m
全幅:    2.388m
全高:    2.337m
全備重量: 8.664t
乗員:    4名
エンジン:  コンティネンタルW-670-7 4ストローク星型7気筒空冷ガソリン
最大出力: 262hp/2,400rpm
最大速度: 72.42km/h
航続距離: 193km
武装:    12.7mm重機関銃M2×1 (1,625発)
        7.62mm機関銃M1919A4×2 (4,700発)
装甲厚:   6.35〜15.88mm


<M2A3軽戦車>

全長:    4.432m
全幅:    2.489m
全高:    2.337m
全備重量: 9.526t
乗員:    4名
エンジン:  コンティネンタルW-670-9 4ストローク星型7気筒空冷ガソリン
最大出力: 262hp/2,400rpm
最大速度: 57.94km/h
航続距離: 161km
武装:    12.7mm重機関銃M2×1 (1,579発)
        7.62mm機関銃M1919A4×2 (2,730発)
装甲厚:   6.35〜22.23mm


<M2A4軽戦車>

全長:    4.432m
全幅:    2.47m
全高:    2.642m
全備重量: 11.612t
乗員:    4名
エンジン:  コンティネンタルW-670-9A 4ストローク星型7気筒空冷ガソリン
最大出力: 262hp/2,400rpm
最大速度: 57.94km/h
航続距離: 113km
武装:    50口径37mm戦車砲M5×1 (103発)
        7.62mm機関銃M1919A4×5 (8,470発)
装甲厚:   6.35〜25.4mm


<参考文献>

・「パンツァー2012年6月号 アメリカのTシリーズ試作戦車(4) T1戦闘車/T2軽戦車シリーズ」 大佐貴美彦 著
 アルゴノート社
・「パンツァー2014年5月号 アメリカ軽戦車の夜明け M1戦闘車からM3軽戦車へ」 竹内修 著  アルゴノート社
・「パンツァー2006年5月号 各国多砲塔戦車の歴史 アメリカ/ドイツ」 柘植優介 著  アルゴノート社
・「パンツァー2001年6月号 M3/M5軽戦車シリーズ」 白石光/水野靖夫 共著  アルゴノート社
・「パンツァー2012年11月号 AFV比較論 M5軽戦車とルクス」 久米幸雄 著  アルゴノート社
・「パンツァー2000年1月号 アメリカ陸軍 M2/M3軽戦車」 水野靖夫 著  アルゴノート社
・「パンツァー2004年9月号 アメリカ陸軍 M1/M2軽戦車」 中川未央 著  アルゴノート社
・「グランドパワー2009年11月号 M3/M5軽戦車シリーズ」 丹羽和夫 著  ガリレオ出版
・「世界の戦車(1) 第1次〜第2次世界大戦編」  ガリレオ出版
・「第2次大戦 イギリス・アメリカ軍戦車」  デルタ出版
・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著  大日本絵画
・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著  グランプリ出版
・「戦車名鑑 1939〜45」  コーエー


HOME研究室(第2次世界大戦編)戦車戦車(アメリカ)>M2軽戦車