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M22軽戦車





1941年2月に開かれた会合で、アメリカ陸軍航空隊は造兵局に対して輸送機による空輸が可能ないわゆる空挺戦車の開発要求を出した。
しかし、当時の陸軍航空隊はまだ戦車の空輸が可能な航空機を保有していなかったことから、この要求は無視される格好となったが、当時アメリカに派遣されていたイギリスの兵器購入団はこの計画に強い興味を示した。
なぜならばその頃イギリス陸軍は、大型グライダーによる空挺機動部隊の編制を計画していたからである。

このイギリスからの要望が主となって1941年5月、「T9」の試作名称で空挺部隊用軽戦車の開発が開始される運びとなった。
空挺戦車という特殊な用途に使用されることから、T9軽戦車の重量と寸法は極力小型化するよう求められ、要求仕様では戦闘重量7.5t、全長3.5m、全高1.67mという厳しい制限が課せられていた。

この要求仕様に基づきジェネラル・モータース、マーモン・ヘリントン、クリスティーなど数社から開発案が提示されたが、最終的にはマーモン・ヘリントン社の案が選ばれた。
これは同社がマーモン・ヘリントン装甲車など、イギリス連邦軍向けの車両を多数生産していたことも選定の背景にあった。

一方空挺戦車に欠かせない輸送機については、当時イギリス陸軍は大型グライダー(後に「ハミルカー」(Hamilcar)と命名される)を開発していたので問題は無く、アメリカ陸軍の方はダグラス社が開発を進めていた民間向け旅客機DC-4をベースとした軍用輸送機C-54「スカイマスター」(Skymaster)に、T9軽戦車を搭載可能とするべく要求を出してこの問題をクリアした。

1942年4月に完成したT9軽戦車の試作車は、ライカミング社製のO-435T 航空機用水平対向6気筒空冷ガソリン・エンジン(出力192hp)を搭載し、2名用の動力旋回式砲塔に53.5口径37mm戦車砲M6と7.62mm同軸機関銃を装備し、車体前面右側には2挺の7.62mm固定機関銃も備えていた。
全体的な形状はM4中戦車を縮小したようなもので、車体は圧延防弾鋼板の溶接接合、砲塔は鋳造製であった。
足周りはアメリカ陸軍戦車共通の方式で、2個一組の転輪を垂直渦巻スプリングで支えたものであった。

このサスペンションについては、後に補強のためにビームが追加されている。
しかし、この試作車では重量が重過ぎるとしてその軽減が求められた。
当初から装甲厚などはかなり薄くしてあるためこれ以上減ずることは無理で、このために車体前面右側の7.62mm固定機関銃や電動式砲塔旋回装置、ジャイロ式安定化装置の廃止が決まり、これらは第2次試作車として1942年2月から開発されていたT9E1軽戦車に盛り込まれることになった。

またT9E1軽戦車では車体前面の形状が改められ、砲塔と砲塔バスケットは輸送機で運搬する際に取り外し可能となった。
1942年11月に、T9E1軽戦車の試作車2両が完成した。
完成した2両の試作車は1両はアメリカで、もう1両はイギリスで試験を受けた。

T9E1軽戦車の試作車が完成する前の1942年4月にはすでに本車の量産が承認されており、500両が発注されていた。
試作車の試験の結果は満足の行くものだったようで1,400両が追加発注され、1943年4月よりインディアナ州のマーモン・ヘリントン社で生産が開始され1944年2月までに830両が完成した。

この段階で、残りの発注はキャンセルされた。
この中からイギリス陸軍には260両が送られ、「ロウカスト」(Locust:イナゴ)のニックネームが与えられた。
1945年3月24日に行われたライン川渡河作戦で、イギリス陸軍第6空挺師団がハミルカー・グライダーを用いて12両のロウカスト軽戦車を実戦で使用したが、ドイツ軍の抵抗があまり無かったため活躍の機会は無かった。

これが本車の最初の、そして唯一の実戦参加となった。
T9E1軽戦車を開発した当事者であるアメリカ陸軍は、結局実戦には投入しなかった。
それは、本車をC-54輸送機に搭載するには砲塔を外して機体下面に懸架しなければならず、着陸後に車体と砲塔を組み立てるという手間が掛かり、空挺部隊の本領である奇襲攻撃には使えなかった。

さらにT9E1軽戦車は装甲が薄く、主砲が装甲貫徹力の低い37mm戦車砲で、機械的信頼性にも欠けるという欠点があったためである。
本車が「M22軽戦車」(Light Tank M22)として制式化されたのは1944年9月と生産が終わってからであり、しかもこの制式化と同時に限定制式兵器に格下げされてしまった。

すでにドイツ軍が弱体化して空挺作戦の必要性が薄れていたため、1944年12月にアメリカ陸軍空挺センターは「もはや空挺戦車は不要」という見解を示している。
M22軽戦車はアメリカ本国で訓練用戦車として用いられ、第2次世界大戦後はすぐに退役してしまった。
イギリス陸軍のロウカスト軽戦車は戦後ベルギーに送られてスクラップにされたが、一部生き残ったものはエジプトに送られて、1948年5月に勃発した第1次中東戦争(イスラエル独立戦争)で使用された。


<M22軽戦車>

全長:    3.937m
全幅:    2.248m
全高:    1.842m
全備重量: 7.439t
乗員:    3名
エンジン:  ライカミングO-435T 4ストローク水平対向6気筒空冷ガソリン
最大出力: 192hp/2,800rpm
最大速度: 56.33km/h
航続距離: 177km
武装:    53.5口径37mm戦車砲M6×1 (50発)
        7.62mm機関銃M1919A4×1 (2,500発)
装甲厚:   9.53〜25.4mm


<参考文献>

・「パンツァー2012年11月号 アメリカのTシリーズ試作戦車(9) T8戦闘車/T9空挺戦車/T10、13、14、16軽戦車
 /T13中戦車/T14突撃戦車」 大佐貴美彦 著  アルゴノート社
・「パンツァー2013年9月号 アメリカの空挺戦車 M22ロウカスト」 富田夫美男 著  アルゴノート社
・「パンツァー2010年3月号 日本陸軍 九八式/二式軽戦車」 荒木雅也 著  アルゴノート社
・「グランドパワー2010年1月号 M3/M5軽戦車シリーズ派生型」 丹羽和夫 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2005年6月号 アメリカ軍空挺戦車」 箙浩一 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2014年11月号 M551シェリダン」 後藤仁 著  ガリレオ出版
・「世界の戦車(1) 第1次〜第2次世界大戦編」  ガリレオ出版
・「第2次大戦 イギリス・アメリカ軍戦車」  デルタ出版
・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著  大日本絵画
・「異形戦車ものしり大百科 ビジュアル戦車発達史」 斎木伸生 著  光人社
・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著  グランプリ出版
・「世界の戦車・装甲車」 竹内昭 著  学研
・「戦車名鑑 1939〜45」  コーエー


兵器諸元

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