HOME研究室(第2次世界大戦編)対空自走砲対空自走砲(アメリカ)>M13/M14対空自走砲

M13/M14対空自走砲





第2次世界大戦が始まる以前からアメリカ陸軍の内部には機甲部隊と共に行動できる対空車両を求める声があったが、ドイツ軍のポーランド侵攻やフランス侵攻において機甲部隊と連携した航空機の脅威が報告されたことによりその声が高まったため、アメリカ陸軍はようやく1940年10月にハーフトラックの車体をベースとする対空車両の開発を開始した。

最初に開発されたのは12.7mm重機関銃M2を連装で装備するベンディックス社製の航空機用機関銃架を、M2ハーフトラックの車体に搭載したT1対空自走砲である。
しかし後に再設計されたT1E1対空自走砲も含めてその性能は満足行くものではなく、1941年11月にはW・L・マクソン社が車両搭載用に設計したM33機関銃架とマーティン社製の航空機用機関銃架とを使って、M2ハーフトラックの車体をベースとする新たな対空車両の開発が開始された。

マクソン社製のM33機関銃架はオープントップ式の1名用銃塔で12.7mm重機関銃M2を連装で装備しており、銃塔後部に独立式の発電機が設けられていたためM2ハーフトラックのエンジンを動かさずとも、電動で銃塔の旋回と機関銃の俯仰を行うことが可能であった。

M2ハーフトラックの車体をベースとする初期試作車はマクソン社製の機関銃架を搭載したものがT1E2、マーティン社製の機関銃架を搭載したものがT1E3としてそれぞれ認定されたが、試験を開始してすぐにより兵員室の容積が広いM3ハーフトラックの車体をベースとした方が実用的であるという意見が出たため、成功を見込まれたマクソン社製のM33機関銃架をM3ハーフトラックの車体に搭載した試作車T1E4が製作されて試験に供された。

試験の結果1942年7月27日にT1E4対空自走砲に対して量産の認可が下り、M3ハーフトラックの車体を用いたものが「M13多連装自走砲」(Multiple Gun Motor Carriage M13)、レンドリース向けのM5ハーフトラックの車体を用いたものが「M14多連装自走砲」(Multiple Gun Motor Carriage M14)としてそれぞれ制式化された。
M13対空自走砲は1943年にホワイト・モーター社で1,103両が生産され、M14対空自走砲はインターナショナル・ハーヴェスター社で1942年12月に5両、1943年に1,600両の合計1,605両が生産された。

M14対空自走砲は主にイギリス軍への供与に回されたが、イギリス軍の対空兵器の要求に適っていなかったために大半が再改造されて兵員輸送型に戻して使用された。
一方アメリカ軍向けのM13対空自走砲は1942年末には早々に限定制式兵器とされ、1,103両の内の628両は12.7mm重機関銃M2を4連装で装備するマクソン社製のM45機関銃架を搭載するM16対空自走砲に改造された。
残りのM13対空自走砲は、一部がイタリアで戦ったアメリカ軍に装備されたのみである。


<M13対空自走砲>

全長:    6.502m
全幅:    1.979m
全高:    2.235m
全備重量: 8.392t
乗員:    5名
エンジン:  ホワイト・モーター160AX 4ストローク直列6気筒液冷ガソリン
最大出力: 147hp/3,000rpm
最大速度: 72.42km/h
航続距離: 322km
武装:    12.7mm重機関銃M2×2 (5,000発)
装甲厚:   6.35〜12.7mm


<M14対空自走砲>

全長:    6.49m
全幅:    2.175m
全高:    2.286m
全備重量: 8.709t
乗員:    5名
エンジン:  インターナショナル・ハーヴェスターRED-450-B 4ストローク直列6気筒液冷ガソリン
最大出力: 143hp/2,700rpm
最大速度: 67.59km/h
航続距離: 322km
武装:    12.7mm重機関銃M2×2 (5,000発)
装甲厚:   6.35〜15.88mm


<参考文献>

・「パンツァー2005年11月号 M3ハーフトラック・シリーズ(2) そのバリエーション」 吉田直也 著  アルゴノート社
・「パンツァー2003年2月号 M3ハーフトラック改造の対空車輌」 水梨豊 著  アルゴノート社
・「パンツァー1999年8月号 ハーフトラック改造の対空自走砲」 白石光 著  アルゴノート社
・「パンツァー2012年12月号 ハーフトラック改造の対空車輌」 平田辰 著  アルゴノート社
・「パンツァー2003年5月号 イギリス軍のM14ハーフトラック」 水梨豊 著  アルゴノート社
・「世界の戦車イラストレイテッド32 M3ハーフトラック 1940〜1973」 スティーヴン・ザロガ 著  大日本絵画
・「グランドパワー2006年11月号 M2/M3ハーフトラック(3)」 後藤仁 著  ガリレオ出版
・「第2次大戦 イギリス・アメリカ軍戦車」  デルタ出版


HOME研究室(第2次世界大戦編)対空自走砲対空自走砲(アメリカ)>M13/M14対空自走砲