HOME研究室(第2次世界大戦編)自走砲自走砲(アメリカ)>M12 155mm自走加農砲

M12 155mm自走加農砲





M12 155mm自走加農砲は、アメリカ陸軍兵器局が機甲部隊の支援重砲兵用の自走砲として1941年6月より開発を計画したものである。
本自走砲は、第1次世界大戦でフランスより購入しその後国産化した38.2口径155mm加農砲M1918M1を、当時開発中であったM3中戦車の車台に搭載したもので、「T6」の開発番号が与えられてロックアイランド工廠で試作車の製作が開始され、1942年2月に試作車が完成しアバディーン兵器試験場で試験が実施された。

そして試験では陣地変換に要する時間が牽引砲に比べ約1/6で済ませることができ、自走砲の最大の利点を関係者に知らしめている。
T6自走加農砲はM3中戦車の車体を流用はしているが、巨大な155mm加農砲を搭載するため車体は大幅に改造されていた。

エンジンは車体後部から中央部に移され、車体後部は155mm加農砲と砲兵を収容する戦闘室スペースとされた。
といっても砲は巨大なため戦闘室には収まらず、車体上に剥き出しで取り付けられていた。
戦闘室の前面と左右側面は0.5インチ(12.7mm)厚の装甲板で囲まれていたが、その高さは兵員の腰ぐらいまでしかなく防御効果は低かった。

主砲の155mm加農砲M1918M1は限定旋回式で旋回角は左右各15度ずつ、俯仰角は−3〜+30度となっていた。
この砲は重量42.96kgの榴弾を用いて最大射程は18,379mに達したが、分離装薬式のため発射速度は4発/分と遅く、車体に搭載できる砲弾と装薬は10発分に過ぎなかった。
車体後部には起倒式の駐鋤が取り付けられ、発射時にはこれを接地し衝撃を吸収するようになっていた。

T6自走加農砲は、機甲部隊の編制に本格的に着手したアメリカ陸軍が生み出した画期的な車両といえた。
本車こそ、野砲としては最も大口径に近い15cmクラスの長距離加農砲の自走化の先駆けであり、アメリカ陸軍が機甲部隊の装備体系を1つのシステムとして包括的に構想していたことの証であった(本車以降にドイツ陸軍のフンメル15cm自走榴弾砲が続く)。

しかし開発当初、発注者自身も大口径自走加農砲の用法についての理解が不透明で戸惑いがあった。
いずれにしろ、M3中戦車のコンポーネントを最大限活用したT6自走加農砲の性能は申し分無く、1942年3月にはまず50両がPSC社(Pressed Steel Car:圧延鋼板・自動車製作所)に発注された。
そして同年8月に「M12 155mm自走加農砲」(155mm Gun Motor Carriage M12)として制式化され、さらに50両の製作が追加発注された。

1942年9月にはM12自走加農砲の最初の生産型がロールアウトし、1943年3月までに全車が完成して軍に引き渡されている。
なお同時に、本車と組み合わせて使用するT14弾薬運搬車(後のM30弾薬運搬車)も同数生産された。
M30弾薬運搬車はM12自走加農砲から主砲を外しただけの車両で、40発分の砲弾・装薬とM12自走加農砲に乗り切れない砲兵を収容した。

アメリカ陸軍の編制上の必要定数を満たしたため、M12自走加農砲はこれ以上の追加発注は行われなかった。
当初アメリカ陸軍ではこの車両を扱いかねて、一部の訓練用車両を残し他は在庫のまま眠らせることになった。
しかし1943年12月にヨーロッパ反攻作戦が計画されると、強力な自走砲の必要性を認識したアメリカ陸軍はこれまで調達したM12自走加農砲の内74両をオーバーホール整備することを決定し、1944年2〜5月にかけてBLW社(Baldwin Locomotive Works:ボールドウィン機関車製作所)にて整備が実施された。

こうして再整備されたM12自走加農砲を用いて6個野戦重砲兵大隊が編制され、1944年6月のノルマンディー上陸作戦(Operation Overlord:大君主作戦)以降ヨーロッパ戦線に送られ、アメリカ陸軍機甲師団の支援重砲部隊の一翼を担ってドイツ軍に巨弾を降らすことになった。
M12自走加農砲は、機甲師団に追随できる唯一の中口径野砲としてカーン攻防戦その他重要戦場で活躍し、兵士たちからは「キングコング」の愛称で呼ばれた。

しかし主砲が第1次世界大戦型の旧式野砲で、車体もすでに一線を退いたM3中戦車がベースで、しかも制式化後2年間も放置されていたため全体的に旧式化していた。
このため1944年初めには、後継のM40 155mm自走加農砲の開発が始められた。
M12自走加農砲は第2次世界大戦終結まで使用され、以後は新型のM40自走加農砲と交代していった。


<M12 155mm自走加農砲>

全長:    6.731m
全幅:    2.675m
全高:    2.883m
全備重量: 26.762t
乗員:    6名
エンジン:  コンティネンタルR-975-C1 4ストローク星型9気筒空冷ガソリン
最大出力: 400hp/2,400rpm
最大速度: 38.62km/h
航続距離: 225km
武装:    38.2口径155mm加農砲M1918M1×1 (10発)
装甲厚:   12.7〜50.8mm


<参考文献>

・「パンツァー2004年4月号 走るロング・トム M40 155mm自走砲」 松井史衛 著  アルゴノート社
・「パンツァー2012年8月号 アメリカ陸軍最初の自走重砲 M12」 平田辰 著  アルゴノート社
・「パンツァー1999年12月号 アメリカの自走砲 インアクション」 白石光 著  アルゴノート社
・「パンツァー2010年10月号 M3中戦車リー/グラント」 荒木雅也 著  アルゴノート社
・「パンツァー2003年2月号 M12 155mm自走砲」 小山芳弘 著  アルゴノート社
・「グランドパワー2005年2月号 155mm GMC,M12キングコング」 箙浩一 著  ガリレオ出版
・「世界の軍用車輌(1) 装軌式自走砲:1917〜1945」  デルタ出版
・「第2次大戦 イギリス・アメリカ軍戦車」  デルタ出版
・「異形戦車ものしり大百科 ビジュアル戦車発達史」 斎木伸生 著  光人社
・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著  グランプリ出版
・「戦車名鑑 1939〜45」  コーエー


兵器諸元

HOME研究室(第2次世界大戦編)自走砲自走砲(アメリカ)>M12 155mm自走加農砲