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M110 8インチ自走榴弾砲





M110 8インチ自走榴弾砲はM107 175mm自走加農砲と共通の車体を用いて並行開発された自走榴弾砲で、同時期に開発されたM108 105mm自走榴弾砲/M109 155mm自走榴弾砲が師団レベルでの運用を考慮していたのに対し、より大口径の主砲を備えるM107自走加農砲/M110自走榴弾砲は上部の組織である軍団レベルでの運用を考えて開発が行われており、軍団直轄の砲兵部隊に配備されたのが相違点であった。

M110自走榴弾砲の開発は1961年より始められ、既存車両とのコンポーネント共通化や流用によりコストの低減を図ることに加えて大型輸送機による空輸が可能なことが求められたため、8インチ(203mm)という大口径砲を備えながら極めてコンパクトな車体サイズにまとめられていたのが特徴である。
開発に際しては「T236」の試作名称が与えられ、M107自走加農砲と同じくパシフィク・カー&ファウンドリー社が開発を担当して1958年末には試作車が完成した。

1959年にはアメリカ陸軍が戦闘車両のエンジンをガソリンからディーゼルに変更する方針を決めたため、T236自走榴弾砲はデトロイト・ディーゼル社製の8V-71T V型8気筒液冷ディーゼル・エンジン(出力405hp)への換装が行われ、名称も「T236E1」と変更された。
そして1961年3月に「M110 8インチ自走榴弾砲」(8inch Self-propelled Howitzer M110)として制式化され、同年6月より生産に入った。

本車の生産は主契約社のパシフィク・カー&ファウンドリー社の他にFMC社等が担当し、1960年代末までに約750両が完成している。
M110自走榴弾砲の車体と砲架はM107自走加農砲と共通で、主砲は牽引式の25口径8インチ榴弾砲M115を車載化したM2A2が採用されていた。

8インチ榴弾砲M2A2はM158砲架に据えられ車体後部にオープントップ式に搭載されており、俯仰角は−2〜+65度となっていた。
ただし発砲時の反動で車体が転倒するのを防止するために、主砲の旋回角は左右各30度ずつに制限されていた。

8インチ榴弾砲M2A2の最大射程は重量92.5kg(炸薬17.6kg)のM106榴弾をチャージ7の強装薬で発射した場合、砲口初速587m/秒で16,800mとM109自走榴弾砲が搭載する20口径155mm榴弾砲M126と大差無かったが、その着弾威力は倍近く大きな損害を与えることが可能であった。
また通常の榴弾の他に、核砲弾を発射することも可能であった。

砲弾の装填は車体後部左側に設置された送弾機により砲尾のトレイに載せられ、そこから人力で砲に送り込まれた。
発射速度は短時間なら1分間に2発、持続砲撃なら2分間に1発となっていた。
照準装置はM115パノラマ式間接照準機と、M116C直接照準望遠鏡を使用した。

車内レイアウトは車体前部左側に機関室、前部右側に操縦室を配し、車体後部の戦闘室に車長と操砲要員3名を収めていた。
機関系はM108/M109自走榴弾砲のものを流用しており、サスペンションはM113装甲兵員輸送車と同じものを用いていた。

主砲が巨大な割に車体が小柄なため車体後部に油圧駆動の大型駐鋤が装備された他、転輪にはサスペンションの油圧ロック機構も備えられており、小柄な車体で発砲時の反動を吸収できるよう工夫されていた。
5名の乗員以外の8名の砲側員は、弾薬を運ぶM548貨物輸送車等に乗って移動した。
M107自走加農砲がアメリカ以外では5カ国程度でしか採用されなかったのに対し、M110自走榴弾砲はアメリカ以外に13カ国ほどで採用されている。


<M110 8インチ自走榴弾砲>

全長:    7.478m
車体長:   6.459m
全幅:    3.15m
全高:    2.936m
全備重量: 26.536t
乗員:    5名
エンジン:  デトロイト・ディーゼル8V-71T 2ストロークV型8気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル
最大出力: 405hp/2,300rpm
最大速度: 54.72km/h
航続距離: 724km
武装:    25口径8インチ榴弾砲M2A2×1 (2発)
装甲厚:   12.7mm


<参考文献>

・「パンツァー2010年8月号 1970年代のイギリス軍砲兵連隊」 遠藤慧 著  アルゴノート社
・「パンツァー2005年2月号 M107/M110自走砲架」 遠野士郎 著  アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート9 レオパルト1と第二世代MBT」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2018〜2019」  アルゴノート社
・「異形戦車ものしり大百科 ビジュアル戦車発達史」 斎木伸生 著  光人社
・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」  デルタ出版
・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著  三修社
・「世界の装軌装甲車カタログ」  三修社
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「世界の最新陸上兵器 300」  成美堂出版


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