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M107 175mm自走加農砲





M107 175mm自走加農砲は、より大口径の8インチ(203mm)榴弾砲を装備するM110自走榴弾砲と並行して開発が進められた自走砲で、旧式化したM40 155mm自走加農砲、M43 8インチ自走榴弾砲、M53 155mm自走加農砲、M55 8インチ自走榴弾砲といった各種自走砲の後継車両として開発され、コンポーネントの共通化によりコストの低減を図るべく車体と砲架はM110自走榴弾砲と同じものが用いられていた。

本車の開発は1956年1月にアメリカ陸軍からの要求で始められ、パシフィク・カー&ファウンドリー社(現パッカー社)が開発を担当することとされて6両の試作車が発注されたが、この内2両が175mm加農砲を備えるT235(後のM107自走加農砲)、3両が8インチ榴弾砲を装備するT236(後のM110自走榴弾砲)、1両が155mm榴弾砲を備えるT245として開発が進められた。

これら3自走砲の開発に際してアメリカ陸軍は前述のコンポーネント共用化に加えて、輸送機による空輸が可能なことと布陣に要する時間の短縮なども要求しており、このため大口径砲を装備する自走砲としては極めてコンパクトな車体サイズにまとめられていたのが特徴であった。

T235自走加農砲の試作車は1958年半ばには完成し運用試験を開始したが、1959年に入るとアメリカ陸軍は戦闘車両のエンジンをガソリンからディーゼルに変更する方針を決定したため、完成した試作車に対してエンジンの換装作業が行われ併せて名称も「T235E1」と改められることになった。

T235E1は1961年3月に「M107 175mm自走加農砲」(175mm Self-propelled Gun M107)として制式化され、同年6月よりパシフィク・カー&ファウンドリー社の手で生産が開始されたが、その後1964年にFMC社とボウエン・マクラフリン・ヨーク社(両社は後に合併してユナイテッド・ディフェンス社に発展し、イギリスのBAEシステムズ社に吸収された)が生産に加わり、1980年5月まで生産が続けられて524両が完成している。

M107自走加農砲の車体は既存の車両からの流用ではなく、本車およびM110自走榴弾砲用に新規に設計されたものであった。
この車体は被空輸性を要求されたため非常に小柄でエンジンはM108 105mm自走榴弾砲/M109 155mm自走榴弾砲と共通、車体とサスペンションはM113装甲兵員輸送車の設計の多くを流用していた。

車内レイアウトは車体前部左側に操縦手席、前部右側に機関系を配し、残る乗員4名(車長と3名の操砲要員)は車体後部の砲架を収めた戦闘室に位置していた。
本車の射撃にあたっては装填手など総勢13名を必要としたが、乗員5名以外は行動を共にするM548貨物輸送車に収容されて随伴した。

主砲は長大な64.5口径175mm加農砲M113がM158砲架に搭載されており、砲架自体は戦闘室内に収められ、周囲に装甲などは無く完全なオープントップでNBC防護は全く考えられていなかった。
もちろん主砲は限定旋回式で旋回角は左右各30度ずつ、俯仰角は−2〜+65度となっていた。
小柄な車体で発砲時の反動を受け止めるために車体後部には油圧駆動の大型駐鋤が装備されていた他、転輪にはサスペンションの油圧ロック機構も備えられていた。

主砲の175mm加農砲M113は重量66.78kgの分離装薬式の榴弾を用いて砲口初速914m/秒、最大射程は32,700mに達しており、通常弾を使用する車載砲としては西側で最大の射程を有していた。
ただし車体が小さい一方弾薬が巨大なため車内に搭載できる弾薬はわずか2発しかなく、弾薬の補給は同行するM548貨物輸送車に頼らなければならなかった。

弾薬の装填には補助装置が用意されていたが、それでも発射速度は最大で1分間に2発、持続射撃では2分間に1発程度であった。
M107 175mm自走加農砲はアメリカ陸軍以外にも西側各国で採用されたが、本家のアメリカ陸軍では大口径砲をM110 8インチ自走榴弾砲に統一することになり早々に退役しており、不要となったM107自走加農砲の車体は搭載砲を37口径8インチ榴弾砲M201に換装してM110A1自走榴弾砲に改造された。


<M107 175mm自走加農砲>

全長:    11.298m
車体長:   6.459m
全幅:    3.15m
全高:    3.475m
全備重量: 28.169t
乗員:    5名
エンジン:  デトロイト・ディーゼル8V-71T 2ストロークV型8気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル
最大出力: 405hp/2,300rpm
最大速度: 54.72km/h
航続距離: 724km
武装:    64.5口径175mm加農砲M113×1 (2発)
装甲厚:   12.7mm


<参考文献>

・「パンツァー2013年11月号 1960〜2000年代のトルコ軍AFV」 城島健二 著  アルゴノート社
・「パンツァー2010年8月号 1970年代のイギリス軍砲兵連隊」 遠藤慧 著  アルゴノート社
・「パンツァー2005年2月号 M107/M110自走砲架」 遠野士郎 著  アルゴノート社
・「パンツァー2010年7月号 175mm自走砲架M107」 遠藤慧 著  アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート9 レオパルト1と第二世代MBT」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2011〜2012」  アルゴノート社
・「グランドパワー2022年2月号 アメリカ軍自走砲(戦後編)」 後藤仁 著  ガリレオ出版
・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」  デルタ出版
・「異形戦車ものしり大百科 ビジュアル戦車発達史」 齋木伸生 著  潮書房光人新社
・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著  グランプリ出版
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「世界の装軌装甲車カタログ」  三修社


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