+概要
アメリカ海兵隊は第2次世界大戦終結後すぐに、海軍艦艇局の支援の下で次世代型LVTの開発に着手した。
まず1946年に、大戦中LVTシリーズの開発・生産の中心を担ってきた、ペンシルヴェニア州フィラデルフィアのFMC社(Food Machinery
Corporation:食品・機械企業)に対して、「LVTP-X3」の呼称で新型LVTの開発要求が出された。
LVTP-X3の最初の試作車は1947年に完成し、1950年まで試作車の改良が続けられた。
1940年代末期には、FMC社の他にも海軍艦艇局から指名を受けた数社が次世代型LVTの開発に参入した。
この時期になるとソ連を盟主とした東側陣営と、米英を中心とする西側陣営の冷戦が顕在化し、アジア情勢も中国共産党の台頭で緊迫したことから、アメリカ軍の装備更新予算も追加計上されて俄然、新型LVTの開発競争が活発化した。
大戦中に各種装甲車両の生産に携わったインディアナ州インディアナポリスのマーモン・ヘリントン社は、1951年にアムタンク(武装型アムトラック)型のLVTを試作した。
「LVT-76mmEXP」と呼ばれたこの試作車は、大戦時のM18 76mm対戦車自走砲に用いられた砲塔を車体上面中央に搭載していた。
砲塔はオープントップの全周旋回式で、主砲として52口径76.2mm戦車砲M1を装備していた。
この砲はM62 APCBC-HE(風帽付被帽徹甲榴弾)を使用した場合、射距離500ヤード(457m)で94mm、1,000ヤードで89mmのRHA(均質圧延装甲板)を貫徹することが可能であった。
LVT-76mmEXPの足周りは、トーションバー(捩り棒)とゴムを併用したトーシラスティック式サスペンションで懸架された片側8個の転輪と、幅広の履帯で構成されていた。
転輪は密封式にされており、フロートの一部として活用していた。
パワープラントはM18対戦車自走砲のものを流用しており、ニュージャージー州パターソンのライト航空産業製の航空機用星型9気筒空冷ガソリン・エンジン「ワールウィンド」(Whirlwind:旋風)R-975-C4と、インディアナポリスのアリソン変速機製の900Tトルクマティック式自動変速機(前進3段/後進1段)で構成されていた。
車体後部には、兵員の乗降および貨物の積み降ろしに用いる小型のランプドアが設けられ、1両でアムタンクとアムトラックを兼用することが構想されていた。
しかしながら結局この車両は模索の域を出ず、試作車が1両製作されたのみで採用には至らなかった。
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