AMX-56ルクレール戦車 |
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ルクレール戦車 トロピック・ルクレール戦車 DCL戦車回収車 |
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+開発
AMX-56ルクレール戦車は、AMX-30戦車の後継車両として約30年ぶりに制式採用されたフランス陸軍の最新鋭MBT(主力戦車)である。 火力、機動力、防御力、データ処理、兵站の各面で最新の技術を採り入れ、また今後の技術の進歩も採り入れられるように設計されている。 ルクレール戦車は採用こそ1990年代に入ってからだが、その基本構想の芽生えは1964年に遡ることができる。 フランス国防省は、前年の1963年7月にAMX-30戦車がフランス陸軍に制式採用されたのを踏まえ、早くも「EPC」(Engin Principal de Combat:主力戦闘兵器)の計画呼称で、その後継兵器の開発に着手しようとしていた。 しかしこの時点では、多くのフランス軍関係者がAMX-30戦車の後継となるべき兵器は新型戦車ではなく、地上攻撃ヘリコプターになるであろうと想定していた。 当時はまだ複合装甲が実用化されておらず、分厚い通常装甲を簡単に穿孔してしまう成形炸薬弾頭を搭載した対戦車ミサイルが飛躍的な進歩を遂げていた時期であった。 射程が長く高い装甲穿孔力を持つ対戦車ミサイルを装備し、変幻自在に飛び回る攻撃ヘリコプターに攻撃されたら陸上兵器は有効な対抗手段が無かったため、攻撃ヘリコプターが陸戦の主役になる時代が到来するであろうと予想していたのはフランス以外の軍事関係者も同様であった。 AMX-30戦車の後継兵器にEPC(主力戦闘兵器)というどうとでも取れる呼称が与えられたのは、この時点ではEPCが攻撃ヘリコプターになるか新型戦車になるか決まっていなかったためで、国防省はEPCをヘリコプターと戦車の2本立てで開発を開始し、もし攻撃ヘリコプターの方が有望と判断された場合には、戦車の方は既存のAMX-30戦車を改良・維持する以外の道を断たれる可能性があった。 EPCの開発は国営のAMX社(Atelier de construction d'Issy-les-Moulineaux:イシー・レ・ムリノー工廠)が中心となって進められ、1971年から本格的な基礎研究が開始されたが、同年にEPCの開発母体として合同企業体「GIAT」(Groupement Industriel des Armements Terrestres:陸上兵器企業連合、2006年にネクスター社に改組)が設立された。 GIAT社は、AMX社以外にAPX社(Atelier de Construction de Puteaux:ピュトー工廠)、EFAB社(Etablissement d'Etude et de Fabrication d'Armement de Bourges:ブールジュ兵器研究造兵廠)、ARE社(Atelier de Construction Roanne:ロアンヌ工廠)、ATS社(Atelier de Construction de Tarbes:タルブ工廠)などフランスの主要な陸上兵器メーカーで構成されており、ネクスター社に改組された今日に至るまで、フランス軍向け陸上兵器の開発・生産の中心を担っている。 GIAT社以下フランスの陸上兵器業界は、「EPCは戦車」と意思を固めていた。 実のところヘリコプターは、軽くて高出力なガスタービン・エンジンの実用化によってようやく本格化したまだ若い技術であり、陸上兵器業界にとっては不慣れでリスキーな航空技術であった。 またヘリコプターの開発は航空業界と利害が衝突するため、陸上兵器業界としては航空業界と喧嘩するのも避けたかった。 この陸上兵器業界の意向に全てのワーキンググループと国家委員会が追随し、1975年12月15日にAMX-APX社の主席兵装設計者のベエがEPCの開発方針を記した報告書を国防省に提出し、EPCのプラットフォームを「戦車」として開発は動き出した。 EPC計画の最初の仕事は、当時の最新鋭または開発中であった西側製MBTを研究することであった。 そしてアメリカのXM1戦車、西ドイツのレオパルト2戦車やイスラエルのメルカヴァ戦車などが研究対象とされたが、詳細な研究の結果、これらの戦車はフランス陸軍の要求事項を満たさないことが判明した。 次のステップとして、かつてAMX-30/レオパルト1戦車を生んだ「標準戦車」(Standard Panzer)計画の時と同様に、1979年に再び西ドイツと共同で新型MBTを開発することが検討された。 当時西ドイツではレオパルト2戦車の開発が終了し、部隊配備を開始したところだった。 そこで西ドイツはフランスに対し、レオパルト2戦車の車体を基礎とし新砲塔を搭載した新型MBTの共同開発を持ち掛けたのである。 この新型MBTはフランスでは「ナポレオン」(Napoléon:革命期フランスの英雄でフランス第一帝政の皇帝)、西ドイツでは「KPz.3」(Kampfpanzer 3:3号主力戦車)と仮称され、1980年2月に開発協定が締結された。 しかし西ドイツ側が、ソ連軍を中心とするワルシャワ条約機構軍の圧倒的な機甲戦力に対抗するために、KPz.3/ナポレオン戦車を早期に実用化することを望んだのに対し、フランス側は様々な新機軸を盛り込んでじっくり時間を掛けて開発することを希望したため両国の意見がまとまらず、結局1982年末に共同開発計画は中止されることになった。 こうしてフランスは自力で、新型MBT「EPC」の開発を続行することになったのである。 EPCの開発は戦車の形状やエンジンおよび乗員のレイアウトなど、幾つかの概念の調査から開始された。 この概念調査では砲塔を極力小さくすることが模索され、後のルクレール戦車に通じる自動装填装置付きの2名用砲塔の他、車体内に全ての乗員を配置し、主砲と自動装填装置が組み合わされた砲システムを車体上に載せただけのタイプ(いわゆる背負式武装)まで検討された。 一方、EPCの主砲はNATO軍内での弾薬補給の便を考慮して、レオパルト2戦車の主砲と同様に西ドイツのラインメタル社製の弾薬を使用可能な120mm滑腔砲とされた。 またエンジンはEPCの試作段階において、レオパルト2戦車のものと同じく西ドイツのMTU社(Motoren und Turbinen Union:発動機およびタービン連合企業)製のものがテストされた。 しかし、多角的に見てMBTに他国製のエンジンを搭載することはデメリットになるとの判断が得られたため、EPC用に新型エンジンを国内開発することになった。 こうして様々な新機軸が盛り込まれたEPCであったが、当然ながら開発費用は高騰した。 このため、フランス陸軍に配備する車両数だけでは1両当たりの調達コストが高くなり過ぎることは明白であった。 これを解決するにはEPCを海外に輸出する必要があったため、フランス政府はNATO加盟国や中東産油国を中心にEPCの導入を積極的に働きかけた。 この働きかけに応じてアラブ首長国連邦(UAE)がEPCの導入を名乗り出、開発費用の一部負担と400両強の購入に合意したため、EPCは開発費の回収と調達コストの低減を図ることに成功した。 1985年までに数両のテストリグ(試験用機材)が、EPCのコンポーネント開発のために使用された。 1両はサスペンションの試験のため、3両は駆動装置の試験のため、残りは武装システム試験のためのものであった。 サスペンション試験のためのテストリグは「Vedys」(Vehicules d'essais dynamiques de suspension:動的サスペンション試験車両)と呼ばれ、トーションバー(捩り棒)式と油気圧式のサスペンションが試験された。 駆動装置試験のための3両のテストリグは「Br」(Bancs roulants:移動式ベンチ)と呼ばれ、それぞれ1Br、2Br、3Brの呼称が与えられた。 なおBrテストリグのサスペンションには、トーションバーが使用されていた。 武装システム試験のためのテストリグには、自動装填装置試験のための「TCA」(Tourelle chargement automatique:自動装填式砲塔)と、照準装置試験のための「TME」があった。 TMEは、フランス陸軍のAMX-10P歩兵戦闘車の車体を流用して製作された。 その後、砲塔を構成する各システム(主砲、照準装置、FCS(射撃統制装置)、自動装填装置など)が統合された試作砲塔「TCS」(Tourelle Systeme Complet:完全な砲塔システム)が製作された。 TCSはテストリグ3Brに搭載され、「MSC」(Mule Systeme Complet:機能原型)と名付けられテストされた。 またEPCの装甲モジュールは、予備装備として保管されていたアメリカ製のM47パットン戦車に装着されて、ブールジュにある射撃試験場にてテストされた。 1986年1月30日、ポール・キレス国防大臣(当時)によって、EPCに対して「ルクレール」(Leclerc)の制式呼称を与えることが発表され、併せて前述のMSCが一般公開された。 この「ルクレール」という呼称は、第2次世界大戦時に自由フランス軍の第2機甲師団長を務め、シャルル・ド・ゴール将軍(後のフランス首相、大統領)の右腕として活躍したジャック=フィリップ・ルクレール将軍に因んでいる。 なお余談だが、ルクレール将軍の本名はフィリップ・フランソワ・マリー・ド・オートクロクと言い、ナチス・ドイツ占領下にあったフランスに残った家族の身を案じて偽名を使っていたという。 1986年の半ば頃にはルクレール戦車の設計作業が完了し、6両の試作車の生産が決定された。 ルクレール戦車の試作車は1989年までに6両全てが完成したが、試作車にはそれぞれアルファベット順の愛称が与えられていた。 試作第1号車の愛称は「ARES」、第2号車は「BAYARD」、第3号車は「CARNOT」、第4号車は「DUROC」、第5号車は「ESTIENNE」で、第6号車の愛称は不明(愛称が無かったともいわれる)。 また車両登録番号は、試作第1号車から第4号車までが68940081~68940084の連番が割り振られ、試作第5号車と第6号車が69040115~69040116の連番となっていた。 試作第2号車「BAYARD」は1990年に開催されたサトリ兵器展示会で公開されており、多くの写真が残されているが、これらの試作車は後の生産型と細部が異なっていた。 また6両製作された試作車は、いずれも細部が異なっていたともいわれている。 ルクレール戦車の試作車と生産型で目を引く相違点は、試作車では車体上面前部の滑り止めが斜めのストライプ状に塗られていた点である。 また、試作第1号車~第4号車の車体側面前部の分厚いサイドスカートは7つのセグメントに分割されていたが、試作第5号車と第6号車では後の生産型と同じく、同部が3つのセグメントに分割されていた。 この他、生産型では車体後面左側の排気口に設けられている排気の偏向ノズルが試作車には無く、また、砲塔上面に遠隔操作式の機関銃が搭載されていた試作車も存在する。 試作第5号車「ESTIENNE」は、装甲防御能力を調査するために射撃試験に供されて完全に破壊された。 ルクレール戦車の全てのテストリグと試作車の内の4両(試作第1号車、第2号車、第3号車、第5号車)は、GIAT社の開発・製造施設のあるサトリで製作された。 一方、試作第4号車と第6号車は後に行われる量産に近い条件で、同じくGIAT社の製造施設があるロアンヌにおいて製作された。 これら2両の試作車の製造は、ルクレール戦車の量産手順の試験とその改善のために利用されたのである。 |
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+生産と型式分類
1990年にフランス陸軍向けのルクレール戦車の量産が開始され、翌91年12月には最初の生産車がGIAT社の製造施設をロールアウトして、盛大なエキシビションが執り行われた。 このエキシビションには、本車の名前の由来となった故ルクレール将軍の奥方も招待された。 そして、最初の生産車は1992年1月14日にフランス陸軍に引き渡されている。 ルクレール戦車の量産は、11のロットに分けて行われた。 本車の生産を担当したGIAT社の資料によると、第1~第5生産ロットで製造された車両を「セリー1」(シリーズ1)とし、第6~第9生産ロットで製造された車両を「セリー2」としている。 そして第10~第11生産ロットで製造された車両は「セリーXXI」としているが、「XXI」は「21」を表すローマ数字である。 なぜセリー2の次をセリー3とせず、セリー21としたのかは不明である。 フランス陸軍向けのルクレール戦車は、セリー1が1992~96年にかけて合計132両、セリー2が1997~2003年にかけて合計178両、セリーXXIが2003~06年にかけて合計96両生産され、総生産数は406両となる。 なお、フランス陸軍は当初の計画では1,500両のルクレール戦車シリーズを調達する予定であったが、フランス政府の財政難と冷戦の終結により後に600両に削減され、結局426両(DCL戦車回収車20両を含む)の生産に留まった。 ●ルクレールT1 第1生産ロットで製造されたルクレール戦車は、「ルクレールT1」と呼ばれている。 ちなみに「T1」の「T」は、「Tranche:バッチ、ロット」の頭文字を採ったものである。 フランス陸軍向けのルクレール戦車の呼称はルクレールT1以降、生産ロットの番号に順じてルクレールT2~T11となっている。 ルクレールT1は、生産型といっても4両しか製造されていない。 またこの4両は、全ての車両で細部が異なっていたといわれている。 これらのことからルクレールT1は、生産型というより増加試作車というべき存在のようである。 ルクレールT1の内1両は、1990年にイギリスに送られてチャレンジャー戦車との比較試験に供された。 そして試験の結果、イギリス陸軍によりチャレンジャー戦車の方が優れているとの判断が出されている。 ただし、ルクレール戦車はこの時点で未だ開発段階にあり、油気圧式サスペンション・システムやエンジン・システムなどに問題を抱えていた。 これらの問題は、後の生産ロットで逐次修正されている。 なおルクレールT1はすでに全車がフランス陸軍から退役しており、ネクスター社にて試験などに使用されている。 ●ルクレールT2 第2生産ロットのルクレール戦車は、「ルクレールT2」と呼ばれている。 ルクレールT2の特徴は砲塔前面のデザインが変更された点で、これ以降の生産ロットでも同じ砲塔デザインが踏襲されている。 ルクレールT2もやはり17両という少数生産に留まっており、先行生産型とでもいうべき存在である。 ルクレールT2は実戦部隊への配備はされていないが、若干数が戦車学校において車両整備士を育成する訓練のために使用されている。 また同じく若干数が、後述するマルスARVに改造された。 ●ルクレールT3 ルクレールT3は第3生産ロットで製造された車両で、1993年にフランス陸軍の戦車学校に配備された。 ルクレールT2との大きな相違点は、車体前面と車体側面後半部のサイドスカートである。 後半部サイドスカートは、下部にラバー薄板が取り付けられて拡大されている。 ルクレールT3の生産数は不明だが、現在では全ての車両が実戦配備を解かれている。 これらの車両はスペア部品確保のために共食いされ、若干数がマルスARVに改造された。 ●ルクレールT4 ルクレールT3までの車両は、下記のような問題を抱えていた。 (1)エンジン・システムのトラブル (2)燃費が悪い (3)最終減速機とブレーキの過熱 第4生産ロットで製造されたルクレールT4では、これらの問題について対策が施された。 まずエンジン・システムの問題についてであるが、ルクレール戦車のエンジン・システムはエンジンや変速・操向機に危険が及ばないように、燃料やオイルサイクルの汚れなどをセンサーで監視している。 燃料やオイルサイクルに汚れが生じた場合、エンジンや変速・操向機が壊れる前に警告を発するようになっている。 エンジン・システムのトラブルとは、このセンサーの設定が過敏すぎてあまりに早く警告が発せられるというものであった。 この警告が発せられた場合、その車両は直ちに整備をしなくてはならない。 ルクレールT4ではこの問題を解消するために、センサーの感度が調整された。 燃費が悪いという問題については、アイドリング時のエンジン回転数を1,100rpmから900rpmまで下げることによって緩和が図られた。 最終減速機とブレーキの過熱の問題については、これらの部分に油冷式の冷却システムを追加することで解消された。 この他、ルクレールT4からナビゲイション・システムのソフトウェアが更新されている。 ●ルクレールT5 第5生産ロットで製造されたルクレールT5の最も分かり易い外観の変化は、サイドスカートの上にある車体フェンダーの側面にボルト止めの装甲板が追加された点である。 外観から分からない変化としては、ナビゲイション・システムおよび主砲弾薬の自動装填装置の改良と、砲塔旋回速度の調整が挙げられる。 試作車やルクレールT5より前の生産型では砲塔の旋回速度が速過ぎて、砲塔構造や旋回装置に過度のストレスが与えられることが分かったため、この対策として旋回速度がより遅い速度に調整されたのである。 ●ルクレールRT5 第1~第5生産ロットで製造されたルクレール戦車は「セリー1」と大区分されると先に述べたが、そのセリー1の集大成と呼べるのがルクレールRT5である。 ちなみに「RT5」の「R」は、「Rénovation:改良」の頭文字を採っている。 ルクレールRT5は、ルクレールT4およびT5に改造を施し共通の性能レベルに到達させたもので、1990年代末までにほぼ全てのルクレールT4とT5がルクレールRT5に改造されている。 ルクレールRT5の外観上分かり易い変化は、砲塔後部に雑具収納用の箱とバスケットが追加された点である。 砲塔後部左側に蓋の付いた収納箱が、後部右側に開放式のバスケットが装備されている。 後部右側のバスケットは、砲塔後部から自動装填装置に主砲弾薬を給弾するのに邪魔になるので基部にヒンジが付いており、砲塔右側面後部に回転させることができる。 これらの収納具が追加されたのは、ルクレール戦車を海外でのPKO(平和維持活動)等に派遣した際の教訓からである。 ルクレール戦車を実際に運用してみると、作戦に必要な雑具や乗員のための雑具が殊のほか多く必要なことが判明した。 ルクレール戦車の内部にはこれらの雑具を収納する余分なスペースが無いために、砲塔後部に収納具が追加されたのである。 ●ルクレールT6 ルクレールT6は第6生産ロットで製造された車両で、セリー2の最初の生産型でもある。 本型は基本的にはルクレールRT5の仕様に準じるが、RT5とは相違点も見られる。 ルクレールT6では、砲塔後部の右側に電動式の冷暖房エアコンが追加された。 また砲手席後部には、エアコンの操作パネルが追加されている。 ルクレールT6はエアコンの搭載により、乗員区画全体の温調が可能となった。 ●ルクレールT7 第7生産ロットで製造されたルクレールT7は、BMS(Battlefield Management System:戦闘管理システム)に改良が加えられた。 従来ルクレール戦車が搭載していたBMSは、ナビゲイションシステムと戦車間の情報交換を主な目的としていたが、改良されたシステムではAMX-10RCやVBL、VB2Lといった偵察車両が装備するBMSであるSIT V1と互換性のある、標準化された新しいソフトウェアが導入された。 また改良されたシステムでは車両の位置、残弾数、燃料残量および損傷状況などの情報が自動的に送信され、共有化されるようになった。 これを受信した各車両のBMSはマップにその情報をリアルタイムで表示し、マップ上の特定の車両をクリックするだけでこれらの情報を入手できる。 まさにゲームのような感覚で、リアルタイムに部隊の状況を把握できるわけである。 ルクレールT7のもう1つの改良点は、車長用の全周旋回式照準装置HL-70にある。 HL-70は、目標を視認するためにペリスコープを高速で旋回させると方位にズレが生じる傾向があった。 これを修正するにはHL-70を一旦データバスから切り離し、リセットした上で再接続する必要があった。 この処置は10秒前後でできるそうだが、戦闘時の10秒は生死を分ける重要な時間である。 ルクレールT7では、HL-70の制御部品に改良を加えることでこの問題に対処している。 ●ルクレールT8 第8生産ロットで製造されたルクレールT8は、電子装置の全面的な近代化が図られている。 ルクレール戦車の電子装置は1990年代初頭に開発されたものであるが、電子装置の技術進歩は早く、ルクレールT8の生産時期には電子装置の性能に見劣りが生じていた。 この対策としてルクレールT8では、車体および砲塔の電子装置が全面的に更新されている。 ●ルクレールT9 第9生産ロットで製造されたルクレールT9は、砲手用照準装置の赤外線映像装置が「IRIS thermal imaging sight」と呼ばれる新型に改められている。 この赤外線映像装置は視認距離が向上しており、従来のタイプより遠距離での照準が可能となっている。 ●ルクレールRT9 フランス陸軍は第6~第8生産ロットで製造されたルクレール戦車を、セリー2の最新型であるルクレールT9と同等のレベルにアップグレードすることを計画している。 アップグレード作業は2005年から順次開始されており、アップグレードが施された車両には「ルクレールRT9」という呼称が与えられることになっている。 ●ルクレールT10/T11 前述のようにルクレールT10およびT11は、フランス陸軍向けのルクレール戦車の3つ目のシリーズ「セリーXXI」に区分される(「セリー2+」と区分する資料もある)。 セリーXXIでは、従来より耐弾性能が向上した新型の複合装甲モジュールが適用されている。 ルクレール戦車の複合装甲モジュールのほとんどは内装式であり、外観からこの変更は分かり難いが、砲塔前部右側の砲手用照準装置の下に張り出している箱型構造の形状と厚みが従来と変化している。 この箱型構造は唯一複合装甲モジュールが外に露出している部分で、従来の生産車のものと比較すると厚くなっており、上端部に傾斜が付いている。 また複合装甲モジュールの形状変更に合わせる形で、砲塔右側の外装部(雑具箱を兼ねた空間装甲)の形状も変更されている。 この他セリーXXIでは、車長用の全周旋回式照準装置にIRIS赤外線映像装置と独立したレーザー測遠機が追加され、前方に装甲扉が設置されている。 この処置により、全天候でのハンターキラー能力(砲手が目標を攻撃している間に車長が次の目標の捜索・照準を行う能力)が確立され、小口径弾や榴弾破片により装置が破壊される可能性が低下した。 また砲手用照準装置が破壊または故障したとしても、車長用全周旋回式照準装置だけで戦闘を続行することができるようになった。 なお従来の車長用全周旋回式照準装置は、微光暗視装置は付いていたものの独立したレーザー測遠機は付いておらず、測遠は砲手用照準装置のものを借用して行っていた。 セリーXXIのもう1つの重要な変更点は、BMSの改良である。 この改良されたシステムは、「ICONE」と呼ばれている。 セリーXXIでは、車長席の左側にICONEの端末(カラーディスプレイやキーボードなど)を配置している。 ICONEは、フランス陸軍の戦車中隊レベル(1つの戦車中隊は13両のルクレール戦車を装備)を対象としたBMSで、そのソフトウェアはUNIX系のOS上で作動する。 ICONEの機能は次のようなものである。 (1)ナビゲイションシステム (2)テキストメッセージや画像の交換 (3)各ユニット(車両や歩兵部隊など)の配置と役割の表示 (4)敵の位置、規模、タイプと作戦意図の表示 (5)侵攻ルートや攻撃命令の表示 (6)各ユニットの残弾数や燃料残量、損傷状態の表示 (1)は、現在では市販の自動車でも普通に搭載しているナビゲイションシステムと同等の機能である。 現在、自車がどの地点にいるかをディスプレイに表示された地図上のアイコンで確認できる。 また、現在地や目的地の付近の地理やルートなども確認できる。 (2)は、パソコンや携帯電話の電子メールと同等の機能である。 ICONEまたはICONEと互換性のあるBMSを搭載するユニット(車両や歩兵部隊など)は、各々個別のアカウントを持っている。 そのアカウントを使って1つのユニットだけにメッセージを送信することもできるし、部隊を構成する全ユニットにメッセージを送信することも可能である。 各ユニットはBMSに接続される無線機によりリンクされ、ネットワークを構成する。 ICONEでは、「PR4G」と呼ばれるディジタルVHF無線機2台がICONE端末に接続されている。 PR4Gには周波数ホッピング機能とフリーチャネルサーチ、音声の暗号化機能があり、敵の無線傍受や電波の捜索標定、妨害を困難にしている。 (3)はディスプレイの地図上に、部隊を構成する各ユニットの位置と役割をアイコンなどで表示する機能である。 (4)は、各ユニットが発見または交戦中の敵部隊について位置や規模、部隊のタイプや作戦意図をディスプレイ上にアイコンなどで表示する機能である。 (5)は、部隊の指揮官が各ユニットに対して侵攻ルートやどの敵を攻撃するかを指示するために、ディスプレイ上にアイコンなどで表示する機能である。 (6)はディスプレイに表示される自軍のユニットについて、そのユニットの残弾数や燃料残量、損傷状態を表示する機能である。 ICONE端末はルクレール戦車のヴェトロニクス(車両用エレクトロニクス)に接続されており、車両の状況は制御コンピューターからICONE端末に自動的に伝達され、ネットワークを通じて各ユニットに伝達される。 このようにICONEでは、まるでシミュレーション・ウォーゲームのような感覚で戦闘指揮や戦況の確認が行える。 地図には拡大縮小の機能もあり、戦場の全体感や局地的な状況も確認できる。 敵や自軍部隊の配置や残弾、損傷状況などがディスプレイを見れば一目で分かるために、従来の無線通話と地図を利用していた場合と比較して戦闘指揮はずっとやり易く、効率的なものになると思われる。 フランス陸軍では、ICONEネットワークを戦車連隊レベル(6個戦車中隊で構成され、ルクレール戦車80両を装備)まで向上することを目指している。 |
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+トロピック・ルクレール戦車
ルクレール戦車はフランス陸軍で採用されただけでなく、UAEへの輸出にも成功している。 UAE陸軍が採用したタイプは熱帯地向けの改修やパワーパックの変更が行われており、「トロピック・ルクレール」(熱帯用のルクレール)という呼称が与えられている。 前述のように、様々な新機軸を盛り込んで開発されたルクレール戦車は開発費用が高騰し、フランス陸軍の需要だけでは調達コストが高くなり過ぎるため、海外への輸出が模索された。 そしてUAEがルクレール戦車の導入と開発費用の一部負担を申し出たため、本車は開発費の回収と調達コストの低減を図ることに成功した。 1993年、UAE国防省は陸軍の次期MBTとしてルクレール戦車を採用することを正式決定し、各種合計で436両のルクレール・シリーズ車両をGIAT社に発注した。 これら436両の内訳はトロピック・ルクレール戦車が388両、操縦訓練戦車が2両、DNG戦車回収車が46両であった。 またこの契約には車両以外に弾薬、スペアパーツ、訓練付帯設備および後方支援設備が含まれていた。 そして1994年12月、完成した最初の2両のトロピック・ルクレール戦車がAn-124大型輸送機でUAEに直接空輸された。 トロピック・ルクレール戦車の生産は1994~2002年にかけて、GIAT社にて行われた。 トロピック・ルクレールとルクレールのとの相違点は、次のような点である。 (1)パワーパックをドイツ製のユーロ・パワーパックに変更 (2)車体後部にエアコンを追加 (3)APU(補助動力装置)を車体後部に外装 (4)サイドスカートの防御範囲を拡大 (5)車長用全周旋回式照準装置を、レーザー測遠機と赤外線映像装置が付いたHL-80に変更 (6)砲塔上面に装備される7.62mm機関銃を、車内から遠隔操作できるものに変更 (7)BMSを新型のFINDERSに変更 (8)砲塔後部の雑具収納ラックの配置を変更 (9)灯火装置にガードを設置 (10)起動輪の歯の長さを延長 (11)潜水および渡渉システムの廃止 (12)カムフラージュ・ネットの装備 (1)のユーロ・パワーパックとは、MTU社製のMT883 V型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジンと、レンク社製のHSWL295自動変速・操向機で構成されるパワーパックであり、韓国のK2「黒豹」戦車やトルコのアルタイ戦車などに採用されている。 このユーロ・パワーパックは、レオパルト2戦車シリーズに用いられているパワーパックと同等の出力でありながら、非常にコンパクトなサイズにまとめられているのが特徴である。 MT883エンジンは最大出力1,500hp/3,000rpm、最大トルク5,000Nm/2,000rpm、燃料消費率157g/hp/hとなっている。 一方、本家のルクレール戦車が搭載するV8X-1500 V型8気筒液冷ハイパーバー・ディーゼル・エンジンは、最大出力1,500hp/2,500rpm、最大トルク4,950Nm/1,700rpm、燃料消費率165g/hp/hとなっている。 このように両者は性能的にはほぼ互角であるが、V8X-1500エンジンは1段目のターボチャージャーとしてガスタービン・エンジンを用いる特殊な構造をしているため、オーソドックスなディーゼル・エンジンであるMT883エンジンに比べてメインテナンスが複雑で、機械的信頼性にも若干不安がある点、燃料消費率がやや劣っている点をUAE側が嫌ったのではないかと推測されている。 なおトロピック・ルクレールは、ユーロ・パワーパックと強力なエアフィルターおよび冷却システムを搭載するために、ルクレールよりも車体後部が延長されている(ルクレールの車体長6.88mに対し、トロピック・ルクレールの車体長は7.03mになっている)。 UAEでの使用環境(熱帯の砂漠地帯)では、従来のエアフィルターや冷却システムの能力では不充分なため、より強力な大型の装置が必要だったのである。 トロピック・ルクレールはこの変更に伴い、車体後部上面の外観などもルクレールと異なっている。 (2)はUAEの使用環境が高温のために、電子装置や乗員を保護するためにエアコンが追加されたということである。 ルクレールのエアコンが砲塔後部の右側に取り付けられているのに対し、トロピック・ルクレールのエアコンは車体後部に内蔵されている。 ちなみにルクレールのエアコンは冷暖房付きだが、トロピック・ルクレールのエアコンは冷房のみである。 (3)はルクレールの場合、V8X-1500ディーゼル・エンジンに付随するTM307Bガスタービン・エンジンがAPUの役目も果たしているが、トロピック・ルクレールではパワーパックの変更によりこれが無くなったことへの対応である。 トロピック・ルクレールに追加されたAPUは出力22kWの小型ディーゼル・エンジンで、車体後部に外装されている。 (4)はルクレールの場合、サイドスカートは8つのセグメントに分割されており前方の3つのセグメントは分厚い空間装甲、その後方の5つのセグメントは5mm厚程度の薄い板状になっているのに対し、トロピック・ルクレールは前方の6つのセグメントが分厚い空間装甲となっている。 またルクレールはサイドスカート下部にラバー薄板をぶら下げているが、トロピック・ルクレールでは後部サイドスカートと同程度の厚さの防弾鋼板をぶら下げるように変更されている。 (5)の変更は、ルクレールT10/T11(セリーXXI)の車長用全周旋回式照準装置の改良と同様の目的である。 すなわち照準装置の冗長性向上と、全天候におけるハンターキラー能力の付与のための措置である。 なおHL-80の赤外線映像装置は「ALIS」と呼ばれるもので、セリーXXIでHL-70に追加されたIRISとは異なるタイプである。 (6)は、車内から遠隔操作できる7.62mm機関銃の装備である。 この機関銃の操作は、車長が行うようになっている。 機関銃の俯仰角は-10~+40度で、全周旋回が可能である。 なお、自らの砲塔や車体を撃たないように安全装置が付いている。 (7)トロピック・ルクレールはBMSとして、GIAT社が新たに開発した「FINDERS」(Fast Information, Navigation, Decision and Reporting System)と呼ばれるものを搭載している。 FINDERSでは、セリーXXIのBMSであるICONEや、AMX-10RCやVBLといった偵察車両用BMSのSIT V1、歩兵携行型BMSなど、既存または新型を問わず多種のBMSをリンクできる。 FINDERSは海外輸出を前提に開発されたBMSであるため、輸出を成功させるためにソフトウェアを動かすためのOSを従来のUNIX系だけでなく、Windowsにも対応させている。 また、ネットワーク接続のための無線機は既存のタイプでも対応可能で、表示用のディスプレイも従来のあらゆるタイプのインターフェイスに対応する。 FINDERSの端末は、トロピック・ルクレールの車長席の左前方に設置されている。 この変更に伴い、モノクロモニターの位置や車長用ハンドルの形状もルクレールとは変わっている。 FINDERSの機能は前述した特徴以外、ルクレールのICONEと基本的に同様である。 なおUAE陸軍ではトロピック・ルクレールのみならず、同軍の装備する旧ソ連製のBMP-3歩兵戦闘車や、偵察車として使用しているアメリカ製のHMMWVにFINDERSを搭載し運用している。 (8)はルクレールの場合、砲塔後面に設けられている給弾用ハッチから主砲弾薬を給弾する際に、砲塔後面右側に設けられている雑具ラックが邪魔になるためこれを右側に開くようになっているが、トロピック・ルクレールではこの手間を省くために、砲塔後面右側の雑具ラックの位置を右にずらして給弾用ハッチを塞がないように工夫している。 (9)はトロピック・ルクレールでは、左右フェンダーの前端上部に設置されている前部灯火装置が敵の小火器弾や榴弾破片により破損するのを防ぐため、金網のガードが追加されている。 (10)は、砂漠地帯で運用されるトロピック・ルクレールは起動輪と履帯の間に砂が詰まり易く、履帯の離脱が起こり易いことへの対処である。 ルクレールよりも歯の長さを延長した起動輪に交換することで、履帯の離脱を起こり難くしている。 (11)はトロピック・ルクレールでは、ルクレールにあった渡渉システムとスノーケルによる潜水システムを廃止している。 ルクレールの渡渉能力(乗り越えられる水溜りの深さ)は通常状態では1mであるが、渡渉システム装着時には1.9mに向上する。 またスノーケルの取り付けやシーリングなどの潜水準備をすれば、4mの水深まで潜って渡ることもできる。 一方、トロピック・ルクレールではそれらのシステムを廃止しているため渡渉能力は1mしかなく、車体側にもそれらのシステムを設置する機構が無い。 (12)は、自車をカムフラージュ・ネットで覆うことによって視認性を低下させ、また赤外線放出を低下させることで敵の赤外線映像装置に感知されるのを防いでいる。 上述の(1)~(12)の変更に伴い、トロピック・ルクレールの戦闘重量はルクレールより1t重い57tに増大している。 この重量増加によりトロピック・ルクレールは若干機動性能が低下しており、32km/hまで加速するのに要する時間がルクレールの5.5秒から6秒に延びている。 |
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+ルクレールAZUR戦車
ルクレール戦車をレバノン、コソボ、チャド、アフガニスタン等でのPKO任務に派遣した経験から、ルクレール戦車には対戦車戦闘能力に加えて、市街地でのゲリラとの戦闘への対応能力を強化する必要があることが判明した。 そこでGIAT社は、「AZUR」(Action en Zone Urbaine:市街地での活動)と呼ばれるルクレール戦車の市街戦用キットを開発し、2006年6月に開催された兵器展示会「ユーロサトリ2006」において公表している。 ルクレール戦車はサイドスカートの前方の約1/3を分厚い空間装甲としているが、ルクレールAZUR戦車ではこの空間装甲をサイドスカートの前方1/2まで延長しており、さらにサイドスカート後半部と車体・砲塔の後面に成形炸薬弾対策の格子装甲が装着されている。 また砲塔後部には、エンジングリルを火炎瓶攻撃から保護するためのプレートが設けられている。 砲塔上面の7.62mm機関銃はトロピック・ルクレール戦車と同様に遠隔操作式のものに変更され、乗員が砲塔から身を乗り出すこと無く安全に射撃を行えるようになっている。 また監視能力を強化するために車体後部に監視カメラが増設され、砲塔上部には360度を視界に収めるポール状のサイトが新設されている。 また周囲の警戒に当たる味方歩兵との通話用に、近距離無線通話装置が用意されている。 |
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+部隊配備
フランス陸軍のルクレール戦車は、最初にソミュールにある戦車学校に配備され運用研究が行われた。 その後、1994年の初めにムーメロンの第501/第503戦車連隊に、次いで同年7月にオルレアンの第6/第12胸甲騎兵連隊に配備が開始され、本格的な運用が行われた。 現在ではヴェルダンの第1/第2猟騎兵連隊、カルピアーニュの第1/第11胸甲騎兵連隊、カンジュールの第1アフリカ猟騎兵連隊にも配備されている。 第1アフリカ猟騎兵連隊を除く4個連隊には、80両のルクレール戦車が配備されている。 4つの連隊で、合計320両のルクレール戦車が配備されている勘定になる。 各連隊にはセリー1が15両、セリー2が42両、セリーXXIが23両と、各シリーズをバランス良く配備することになっている。 第1アフリカ猟騎兵連隊には、現状で35両のルクレール戦車が配備されている。 その他の車両は戦車学校に配備されている他、ネクスター社での試験研究に用いられている。 第1アフリカ猟騎兵連隊を除く4個連隊は、「RC80」(Regiment de Cuirassiers 80)と呼ばれる編制を採用している。 RC80は、「GE40」(Groupe d'Escadrons 40)と呼ばれるルクレール戦車40両を装備する戦車大隊2個と管理部隊、整備中隊、兵站支援部隊、予備役部隊から構成される。 管理部隊は、RC80の指揮管理と兵站支援を行う。 整備中隊は、DCL戦車回収車4両などを装備した戦車の整備回収を行う部隊である。 「UBI」(Unit de Base et d'Instruction)部隊は、RC80の教導や保安などの支援を行う部隊で、予備役部隊は予備役の兵で構成される部隊である。 UBI部隊、予備役部隊共に部隊規模は中隊レベルである。 GE40は、ルクレール戦車13両を装備する戦車中隊3個と指揮小隊から構成される。 GE40の指揮小隊には、VBL装甲偵察車8両を装備する偵察小隊が付属している。 戦車中隊はルクレール戦車4両を装備する戦車小隊と、ルクレール戦車1両を装備する指揮小隊、VBL装甲偵察車1両とVAB/T20-13歩兵戦闘車3両を装備する直接支援小隊で構成される。 ちなみにVAB/T20-13歩兵戦闘車は、20mm機関砲を装備する砲塔を搭載したVAB装甲兵員輸送車の派生型である。 以上のような編制からRC80は80両のルクレール戦車、4両のDCL戦車回収車、18両のVAB/T20-13歩兵戦闘車、24両の様々なタイプのVAB装甲車、約30両のVBL装甲偵察車、6両の「EPB」(Engin Porte Blinde)トランスポーター、180両のトラック、33台のオートバイを装備している。 構成員は士官62名、下士官317名、兵703名の計1,082名である。 |
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+車体の構造
ルクレール戦車は車長、砲手および操縦手の3名の乗員によって運用される装軌式のAFV(装甲戦闘車両)である。 全体の構造は基本的に従来型の戦車と同じく、車体と全周旋回が可能な砲塔から構成されている。 一方ルクレール戦車で特徴的なのは、主砲の自動装填装置や小型で高出力のエンジンなどの採用により、内部容積を可能な限り小さくしている点である。 内部容積が小さいとそれを護るための装甲の表面積が小さくなり、重量を軽減できる。 また戦車の重量の上限が決まっているならば、内部容積が小さいほど単位面積に充てられる装甲重量が大きくなり、高い防御能力が得られる。 この防御思想は、旧ソ連が開発した戦車に通ずるものがある。 しかしルクレール戦車の場合、西側の技術(複合装甲、自動装填装置や小型で高出力のエンジン)や基準(居住性や安全性)で、その思想を具現化したという点で異なっている。 つまり、西側の技術や基準で内部容積の低減が図られたルクレール戦車は、同じく西側で開発されたM1エイブラムズ戦車やレオパルト2戦車等の戦後第3世代MBTと比較しても、優れた性能を持っている可能性がある。 ルクレール戦車の車体は、基本的に圧延防弾鋼板を溶接して形作った箱型構造で、箱型構造の左右にはフェンダーと呼ばれる車体から張り出した構造があり、その内部にも機器が収納されている。 車体内は前部左側が操縦室、前部右側が主砲弾薬庫、中央部が戦闘室(砲塔バスケットが入る部分)、後部が機関室に区分できる。 操縦室には操縦用機器の他、車体システムを統括する電子機器が配置され、機関室にはエンジン、変速・操向機、ターボチャージャー、冷却装置などで構成されるパワーパックが配置されている。 フェンダー内には前部から中央部にかけての右側に燃料タンク、中央部の左側にブレーキ動力発生装置とNBC防護装置、やや中央寄りの後部右側にバッテリーが配置されている。 またフェンダー後部左側には、エンジンからの排気装置が配置されている。 車体の左右側面にはスウィングアームや転輪、履帯等の走行装置が設置され、さらにその外側にはサイドスカートが配置されている。 スウィングアームは、車体底部の左右側面に配置された油気圧式のサスペンション・ユニットに連結されている。 起動輪は車体側面後部にあり、その内部には最終減速機が収められている。 誘導輪は車体側面前部にある。 サイドスカートは前部(操縦室や主砲弾薬庫の左右)に厚いものが、中央から後部にかけて薄いものが設置されている。 車体後部の外側には、外部燃料タンクのラックが設置されている。 |
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+操縦室の構造
操縦室の中央には操縦手用の座席が配置され、それを取り巻くように各種操縦用機器が配置されている。 座席の前方、操縦手の腕が来る位置には多機能ハンドルが配置されている。 このハンドルにはペリスコープ洗浄装置や無線機、前照灯、ウィンカー、ホーン、警告ランプなど多数のスイッチが設けられている。 これは、操縦手がハンドルからできる限り手を離すこと無く操作ができるようにするためである。 各スイッチには市販の自動車に見られるような機能を表す絵が描いてあり、スイッチの機能が一目で分かるように配慮されている。 多機能ハンドルの右横には、駐車ブレーキのレバーが付いている。 駐車ブレーキを掛ける時はレバーを下に、解除する時はレバーを上に動かす。 多機能ハンドルの下、操縦手の足元に来る位置にはアクセルペダルとブレーキペダルがある。 市販の自動車と同じように左がブレーキペダルで、右がアクセルペダルである。 ブレーキペダルの左には、フットレストを兼ねた洗浄液のタンクがある。 この洗浄液は、中央のペリスコープを洗浄する際に使用する。 座席の右前には変速装置が設けられている。 変速装置にはギア選択、進行方向選択の2つのレバーが付いている。 戦車が停止している時、進行方向選択レバーは「PM」(中立)の位置にある。 前方に進みたい場合は進行方向選択レバーを「AV」(前進)に、後方に進みたい時は「AR1」または「AR2」に切り替える。 「AR1」は後進1速、「AR2」は後進2速である。 進行方向選択レバーを「AV」に切り替えた状態でブレーキペダルを離すと、市販のオートマティック自動車と同じく戦車が前方に動き出す。 アクセルペダルを踏み込めば自動的にギアが変更されてエンジン回転数が上がり、戦車は加速していく。 多機能ハンドルを右に回せば右に、左に回せば左に戦車が曲がっていく。 進行方向選択レバーを「PM」の状態にし、レバーの内側にあるロック解除スイッチを強く押してレバーを右に少し動かすと、「PMF」(超信地旋回)の状態になる。 この状態でアクセルペダルを少し踏み込み、エンジン回転数を上げてからハンドルを左右どちらかに回すと、戦車がその場で旋回する超信地旋回が行われる。 進行方向選択レバーの前にあるギア選択レバーにより、走行時のギアを指定することができる。 ギア選択レバーを「4」の位置にした場合、変速・操向機はエンジンの回転数に合わせて自動的にギアを1速から4速まで切り替えてくれる。 従って通常の走行では、ギア選択レバーを「4」の位置に入れることになる。 ギア選択レバーを「3」の位置に切り替えると、ギアが自動的に切り替わって3速で固定(ロックアップ)される。 「2」や「1」に切り替えた場合も同様である。 ギア選択レバーには「1L」というギアもあるが、これは1速の下にある極低速用のギアである。 つまりルクレール戦車は前進に「1」~「4」と「1L」の5速、後進に「AR1」、「AR2」の2速のギアが存在する。 フランス陸軍の戦車乗員の証言によると、ルクレール戦車のエンジンは低回転でも高トルクかつ高出力で、低速で走るのが難しいために「1L」ギアが必要とのことである。 変速装置にはこのほか起動禁止ランプや応急モードランプ、制御モード選択スイッチなどの機構があるが、いずれも非常時に使ったりランプで警告したりするためのものである。 多機能ハンドルの左側には、緊急時に使う補助ギア選択レバーがある。 補助ギア選択レバーは、電力の供給がストップしてメインの変速装置が使えない場合などに使用するもので、「3」、「1」、「N」、「AF」の4つの切り替えがあり、それぞれ「前進3速」、「前進1速」、「中立」、「後進」を意味する。 補助ギア選択レバーの左にはメインパネルがある。 メインパネルは、車体の各システムの指令や制御に使用する。 「GROUPE MOTO PROPULSEUR」と書いてある部分が、エンジン関係のスイッチである。 この中の「DIESEL」と書いてある下の3つのスイッチが、主エンジンのスイッチである。 その中の一番右の「MARCHE」と書いてあるスイッチが、始動スイッチである。 「TURBINE」の下にも同様の3つのスイッチがあるが、これはターボチャージャー兼APU(補助動力ユニット)のスイッチである。 「VENTILATION」はエンジンの冷却装置のスイッチで、潜水渡渉などの際に冷却ファンを強制的に停止するためのスイッチだと思われる。 この他にも、NBC防護装置のスイッチなど多くのスイッチがある。 メインパネルの左隣には、サブパネルがある。 サブパネルの上部には、操縦を助けるためのメーター類が付いている。 左から速度メーター、燃料計、エンジン回転数メーター、バッテリー残量計、冷却水温度計、ギアの段数表示となっている(最後の3つは最も右に縦に並んでいる)。 速度メーターは70km/h以上がレッドゾーンで、最大80km/hまで書いてある。 フランス陸軍の戦車兵の証言では、ルクレール戦車は良い条件(例えば傾斜の無い舗装された道路)ならば、このメーターを振り切る速度が出るらしい。 カタログ性能は72km/hになっているにも関わらずである。 ただし80km/hはレッドゾーンでもあり、あまり長時間は継続できないと思われる。 燃料計は最大の位置の上部に1,000リットル、下部に350リットル、中間の位置の上部に500リットル、下部に175リットルと書かれている。 上が主燃料タンク、下が補助燃料タンクの残量表示のようである。 ルクレール戦車の燃料搭載量はカタログでは1,300リットルとなっているが、実際は1,350リットルあるということかもしれない。 なお、主燃料タンクと補助燃料タンクの他に外部燃料タンク2基に各200リットルずつ、計400リットルの燃料が搭載できる。 内部燃料タンクと外部燃料タンクの合計は、1,700リットル(カタログ値)というわけである。 操縦手席の右側には、座席の高さを調節するためのジャッキと調節用のレバーが備えられている。 操縦手は、平常時にはハッチを開けて車体から顔を出して操縦を行うが、この時は座席の位置を高くする必要がある。 一方、戦闘時にはハッチを閉めて車内からペリスコープを覗きながら操縦することになるが、この時は座席が低くなければならない。 このため、座席の高さ調節機構が必要なわけである。 操縦手席は高さ調節ができる他に、背もたれの角度を調節することができる。 また背もたれを前方に倒し、砲塔が前方または後方(0時または12時の方向)を向いていれば、車体中央部にある戦闘室バスケット内と通用することができる。 砲塔の向きが関係するのは、砲塔バスケットの通用口がその位置にしかないためである。 操縦手席の下には、非常時に使用する脱出用のハッチが設けられている。 上部の操縦手用ハッチまたは、戦闘室へ抜けての脱出ができない場合にこのハッチを使用することになっている。 ただし、ルクレール戦車に搭乗した経験のある元ドイツ陸軍戦車兵の証言によると、ルクレール戦車の操縦室内がかなり狭い上に座席が邪魔になるため、このハッチから脱出することは困難だという。 操縦手席の上部には、左方向に回転する大型のスライド式操縦手用ハッチが設けられている。 操縦手用ハッチのマウント基部はサブパネルの左後ろにあり、ハッチを一旦持ち上げた後に左方向に回転させて開放する機構になっている。 操縦手用ハッチには3基のペリスコープが備えられており、操縦手はこのペリスコープを用いて車内にいながら前方の170度の範囲を視察することができる。 中央のペリスコープは、タレス光学が開発したOB-60昼/夜間ペリスコープと呼ばれるものである。 このペリスコープには車長からの停止指示や砲塔の向いている方向、車体の緊急状態、主砲の発砲などの情報をペリスコープの視野内に表示する機能がある。 また中央のペリスコープの前方には洗浄装置が、左右のペリスコープには除氷装置が付いており、視界が遮られた場合に車内からの操作で視界を確保することができる。 洗浄装置は、ノズルから洗浄液を高圧でペリスコープのガラス面に吹き付けることで洗浄する。 操縦室内には前述の装置の他、ルクレール戦車の車体システムを統制する電子機器や、履帯張度調節装置など(操作部は駐車ブレーキの右横)がある。 ただし、この装置は第7生産ロットで製造されたルクレールT7以降に設置されたものであり、それ以前の生産車では未装備となっている。 |
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+主砲弾薬庫の構造
操縦室の右には、レンコン状の回転式主砲弾薬庫が設置されている。 主砲弾薬庫には、主砲用の120mm砲弾18発が収納されている。 この弾薬庫は、手動のクランクハンドルで回転させる機構が備えられている。 クランクハンドルの左上のガード部分が、時計と反対周りの方向へ開くようになっている。 主砲弾薬はそこからしか出すことができないため、弾薬庫を回す機構が必要なのである。 また主砲弾薬を戦闘室内に運び出すには、弾薬庫と砲塔バスケットの通用口の位置を合わせる必要がある。 通常、主砲弾薬を戦闘室に運び出す場合は、砲塔を7時の方向(左後ろ)に向ける。 余談だが、ルクレール戦車の試作段階では車体内に2名の乗員を搭乗させることが検討された。 このため、現在の操縦手席の右側には主砲弾薬庫ではなく、もう1名の乗員の席があった。 主砲弾薬庫の代わりには、車体後部に外装式の主砲弾薬ラックを装備することが検討された。 この弾薬ラックは機械式のもので、自動で砲塔後部の自動装填装置に主砲弾薬を搬入することができた。 一方、車体内に2名の乗員を乗せることは運用上問題があった。 また外装式の主砲弾薬ラックは装甲化が必要で非常に重くなり、戦闘重量の増大や車体重心に問題を生じることになった。 このため、車体内2名乗員と外装式主砲弾薬ラックは採用されなかった。 |
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+燃料タンクの構造
主砲弾薬庫の前面と右側面を護るように、燃料タンクが配置されている。 燃料タンクの給油口は、車体右側のフェンダーの上部にある。 燃料タンクは被弾すると炎上しそうで危険に思えるが、実際はそれほど危険なものではない。 ルクレール戦車はディーゼル・エンジンを搭載しているため、燃料に軽油を使用するが、軽油は酸化剤(空気中の酸素)が無ければ延焼しないし、引火点が50~60℃とガソリンの-40℃以下と比較して燃え難いのである。 このため、被弾が即炎上に繋がるということは少ない。 一方、軽油のような密度の低い物質は、特に成形炸薬弾に対して高い質量効率を持っていることが知られている。 この特性を利用して防御能力を向上させた戦闘車両の例としては、イスラエルのメルカヴァ戦車が挙げられる。 メルカヴァ戦車の場合、通常の戦車と異なり機関室が車体前方にあるが、機関室の上部(車体傾斜装甲の下)に燃料タンクを配置することで、その後ろにあるエンジンや戦闘室に被害を及び難くしている。 ルクレール戦車も主砲弾薬庫の周りに燃料タンクを配置することで、より危険性の高い主砲弾薬を護っているのである。 なおルクレール戦車の車内燃料タンクの容量は、前述したようにカタログ値で1,300リットルとなっている。 燃料の補給は、通常(従来タイプ)の給油装置を使うこともできるが、特殊な高圧給油装置を使えば2分以内で燃料を満タンにすることができる。 そして高圧給油装置を装備したトラックが部隊に随伴した場合、5分以内で4両の戦車を同時に燃料補給することが可能となっている。 またルクレール戦車の車体後面上部には、外部燃料タンクのラックが設置されている。 このラックには、ドラム缶状の容量200リットルの外部燃料タンクを2個装備することができる。 ルクレール戦車が最初に消費する燃料は、この外部燃料タンク内の燃料である。 外部燃料タンクは、砲塔を後方に旋回させた際に主砲の砲身と干渉するため、緊急時には操縦手席のコントロールパネルにあるスイッチによって、即時に切り離すことができるようになっている。 |
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+戦闘室と機関室の構造
ルクレール戦車の車体中央部には、砲塔バスケットが入る大きな円形の空間がある。 この空間が戦闘室で、最上部には砲塔リングが装着されている。 砲塔リングの内壁には数字が書かれているが、これは車体の真正面を「9時」とした時の砲塔の方位(旋回角)を表している。 「3」と書いてある所が真正面に対して180度、つまり真後ろの位置になる。 戦闘室の床板は二重構造になっており、上板の中央には車体の電子機器から延ばされた配線類のジョイントを通す穴が開口されている。 このジョイントを砲塔バスケットの床板中央から延ばされている配線ジョイントと接続することで、砲塔と車体の電子機器が結合されるようになっている。 戦闘室の右側フェンダーの側面には、車内の乗員と車外の随伴歩兵との連絡用のインターコム・ハッチが設けられている。 ルクレール戦車の車体後部は、エンジンや変速・操向機を収納した機関室となっている。 機関室の上面右側には、三角形の取っ手が2つ付いた右開き式の縦長長方形の蓋が設けられているが、これはバッテリーセル収納部の蓋である。 ルクレール戦車のバッテリーは12V/125Ahのセルが8つ収納されており、全体で24V/500Ahの電力を供給できる。 機関室と車体中央部の戦闘室の間は、防火隔壁で完全に分離されている。 これは機関室で火災が発生した場合、乗員のいる戦闘室に被害が及ばないようにするためである。 機関室内の後部左右の壁には、最終減速機(起動輪)への連結装置が装着されている。 また左側の上部(フェンダーの部分)には、エンジン排気のマフラーが収納されている。 |
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+パワーパックとエンジンの構造
ルクレール戦車の機関室内部には、パワーパックが収納されている。 パワーパックはV8X-1500ディーゼル・エンジン、TM307Bターボチャージャー、ESM500変速・操向機、冷却装置などで構成されている。 パワーパックは1つのユニットにまとめられており、短時間で交換ができるように配慮されている。 ルクレール戦車のメインエンジンは、フランスのSACM(Société Alsacienne de Constructions Mécaniques:アルザス機械製作所)ディーゼル社と、フィンランドのWärtsilä社の合弁企業であるWärtsilä SACMディーゼル社によって開発された「V8X-1500」と呼ばれるものである。 V8X-1500エンジンは、その名の通り最大出力1,500hpの90度V型8気筒、液冷式4ストロークサイクル、2段過給式のディーゼル・エンジンである。 シリンダーのボア(内径)が142mm、ピストンのストローク(行程長)が130mmなので、総排気量は約16.5リットルになる。 V8X-1500エンジンで特徴的なのは、ディーゼル・エンジンの1段目のターボチャージャーとしてターボメカ社製の「TM307B」と呼ばれるガスタービン・エンジンを装備している点である(2段目は通常のターボチャージャー)。 TM307Bエンジンを装備しているおかげで、V8X-1500エンジンは小型軽量のエンジンでありながら高出力、高トルクを達成している。 この過給システムを、GIAT社では「ハイパーバー」(Hyperbar)と呼んでいる。 ハイパーバーで特徴的なのは、その空気の流れである。 吸気は、サイクロン式のプリ・エアフィルターで比較的大きな異物(埃など)が除去され、メイン・エアフィルターでさらに細かい異物が除去される。 メイン・エアフィルターの手前には、補助空気採り入れ口が設けられている。 この補助空気採り入れ口は、ルクレール戦車が潜水渡渉する際に使う空気採り入れ口である。 ルクレール戦車が潜水渡渉する際にはメインの空気採り入れ口が塞がれ、バッテリーセル収納部の上部にスノーケルが取り付けられる。 スノーケルからの吸気はバッテリーセル収納部を通り、エンジンの補助空気採り入れ口に導かれるようになっている。 フィルターで清浄された吸気は、吸気ダクトを通りTM307Bガスタービン・エンジン(ターボチャージャー)へ導かれる(一部はV8X-1500ディーゼル・エンジンに通じる系統に導かれる)。 TM307Bエンジンは、吸気と燃料噴射ノズルからの燃料を燃焼させることで内部のタービンを高速で回転させる。 TM307Bエンジンの常用回転数は41,500rpmに達する。 タービンは、V8X-1500エンジンに通じる系統の吸気をハイパーバー部のハウジング内に高圧で送り込み、圧縮する。 このためハイパーバー部のハウジング内は、30barという高圧になる。 タービンで圧縮された空気は高温になるため、インタークーラーで冷却される。 V8X-1500エンジンはこの高圧縮された吸気の酸素を酸化剤として、軽油を燃やしてエンジンを駆動しているわけで、このため高出力、高トルクが得られるのである。 V8X-1500エンジンがどのくらい小型軽量かは、レオパルト2戦車に搭載されているMTU社製のMB873Ka-501 V型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(最大出力:1,500hp/2,300rpm、最大トルク:4,710Nm/1,600rpm)と比較すると分かり易い。 V8X-1500エンジンの重量:約1.7t、容積:約1.4m3に対し、MB873Ka-501エンジンは重量:約2.3t、容積:約1.68m3である。 V8X-1500エンジンはMB873Ka-501エンジンに対して重量にして26%、体積にして18%ほども小さなエンジンということになる。 それでいて、出力とトルクは同等なのである。 ちなみにV8X-1500ディーゼル・エンジンの最大出力は1,500hp/2,500rpm、最大トルクは4,950Nm/1,700rpmとなっている。 一方ハイパーバー・システムは、燃料消費率が高いことが欠点だといわれている。 V8X-1500エンジンの燃料消費率が165g/hp/hなのに対し、MB873Ka-501エンジンは157g/hp/hなので、V8X-1500エンジンの方が5%程度、燃料消費率が高いことになる。 ただし、V8X-1500エンジンのターボチャージャーであるTM307Bエンジンは、V8X-1500エンジンとは独立して動かすことができ、V8X-1500を止めていても戦車に必要な電力を供給することができる。 つまり、TM307BエンジンはAPUとしての機能も兼ねているのである。 このため待機時などでは、メインエンジンのみの車両に比べて燃料消費を低減させることができ、移動と待機を繰り返すような戦闘においては、相対的に燃料消費が抑えられるものと思われる。 またAPUの装備によって、メインエンジンからの赤外線や騒音の放出を低下させるという利点も生まれる。 |
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+変速・操向機の構造
ルクレール戦車に採用されている変速・操向機は、SESM社(Société d'Equipements Systèmes et Mécanismes:システム&メカニズム社)が開発したESM500変速・操向機である。 ESM500はトルク変換機と遊星歯車を組み合わせた形式で、前進5段/後進2段の全自動変速・操向機である。 操向方式は、動力再生型のハイドロスタティックと呼ばれる形式である。 一般的な装軌式車両の操向方式では、曲がりたい方向の履帯にブレーキを掛けて速度を落とし、左右の履帯の速度を変化させることで旋回する。 しかしブレーキを掛けると、その分だけ動力のロスが生じる。 動力再生式の場合は、曲がりたい方向の履帯の駆動力を低下させると同時に、その動力を反対側の履帯に伝達(再生)させることで動力のロスを少なくしている。 これが、「動力再生式」と呼ばれる所以である。 また、この形式の変速・操向機は超信地旋回(左右の履帯を逆転させて、その場で旋回すること)も可能で、旋回半径を無段階(連続的)に変えられるのでスムーズな旋回が行える。 ルクレール戦車のブレーキは、ESM500変速・操向機に内蔵され一体化されたハイドロダイナミック・ブレーキと、油冷の機械式ブレーキ(ディスクブレーキ)が備わっている。 ハイドロダイナミック・ブレーキは、変速・操向機のトルク変換機を利用したブレーキ・システムである。 機械式ブレーキのブレーキディスクには、いわゆるC/C材(カーボン/カーボン複合材料)が使われているといわれている。 ルクレール戦車が35km/h以上で走行中にはハイドロダイナミック・ブレーキだけが作動し、それ以下の速度になったら機械式ブレーキが作動するような機構になっている。 |
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+排気装置の構造
エンジンからの排気は車体後部左側フェンダー内のマフラーを通り、車体後面左側から外部に突き出しているL字型の排気ノズルから放出される。 排気ノズルは可動式で、排気の放出方向を変更することができる。 通常は上方に向いており、排気を上方に放出する。 排気は冷却されてはいるが、ガスタービン・エンジンの使用のために極めて高温である。 このため排気を上方に放出することは赤外線放出を増大させ、赤外線映像装置などに発見され易くなる。 一方、排気を側方や下方に放出するとその高温により環境物に火災を発生させたり、随伴歩兵に害を及ぼしたりする可能性がある。 このため通常は排気を上方に放出し、危険性が無い場合は下方や側方に放出することもできるようになっている。 |
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+サスペンションの構造
ルクレール戦車に採用されている油気圧式サスペンションは、SAMM社(Societe d'Applications des Machines Motrices:車両用機器会社)が開発したもので、各転輪に付き完全に独立したユニットになっている。 このサスペンション・ユニットは、スウィングアームの回転運動を油圧シリンダーで受け止めるという単純な構造である。 よって、日本の90式戦車や10式戦車のように車体を傾けて姿勢制御を行うことはできない。 油気圧式サスペンションのトラベル長(バンプとリバウンドの合計)は、450mmとなっている。 ルクレール戦車は片側6個の転輪を備えているため、油気圧式サスペンションの数も片側につき6基備えている。 第1および第6スウィングアームには、スウィングアームが跳ね上がった際に先端がぶつかる位置にショックアブソーバー(パンプストッパー)が設置されている。 第2~第5スウィングアームがぶつかる位置には、より単純な鋼製のパンプストッパーが付いている。 ルクレール戦車の油気圧式サスペンションは車体側面に外装式に装着されているため、レオパルト2戦車やM1戦車に用いられているトーションバー式サスペンションのように車体内部のスペースを占有しないという特徴がある。 ルクレール戦車を開発したGIAT社は、本車が油気圧式サスペンションを採用したことにより、トーションバー式サスペンションを採用した場合と比較して車内容積を1m3程度減らすことができたと述べている。 また衝撃がより効率的に処理され、車体に働くストレスも減らすことができたとも述べている。 この他、油気圧式サスペンションのメリットとして、メルカヴァ戦車に採用されているホルストマン式サスペンションなどと異なり、サスペンション・ユニットが転輪ごとに独立しているため交換が容易である点、外装式に装着するため車体の構造を簡素化することが可能である点などを挙げている。 |
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+転輪と履帯の構造
ルクレール戦車は転輪を車体側面の片側につき6個配しており、各転輪は油気圧式サスペンションから伸びたスウィングアームの先端に装着されている。 転輪は複列式のアルミ合金製で焼結により製造されており、外周にゴム縁が装着されている。 上部支持輪は車体側面の片側につき5個配されており、各転輪の中間上方の位置に装着されている。 なお上部支持輪は転輪と異なり単列式であるが、第1、第3、第5上部支持輪を履帯のセンターガイドの奥側、第2、第4上部支持輪をセンターガイドの手前側に配置することで履帯が外れ難いようにしている。 ルクレール戦車は前作のAMX-30戦車と同じくリアドライブ方式を採用しているため、起動輪が車体後方、誘導輪が車体前方に配置されている。 起動輪の内部には最終減速機が組み込まれており、外周には12枚の歯が設けられている。 誘導輪は、転輪と同じくアルミ合金の焼結製で外周にゴム縁が装着されているが、転輪よりややサイズが小さく、また6個の四角い肉抜き穴が設けられている点が異なる。 ルクレール戦車の履帯は「V5」と呼ばれるもので幅は625mm、センターガイド式のダブルピン/ダブルブロック構造である。 履板の数は片側73枚、両側で146枚である。 履帯の側面には、摩擦と騒音を低減させるためにラバーゴムが装着されている。 ただしこのV5履帯は、フランス陸軍の要求事項を完全に満たしたものではなかった。 このためGIAT社とドイツのディール社により、改良型履帯の共同開発が行われた。 この改良型履帯はディール社名で「570P1」という呼称が与えられ、すでに開発が完了しているがルクレール戦車に採用されたかは不明である。 |
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+サイドスカートの構造
ルクレール戦車のサイドスカートは、8つのセグメントに分割されている。 車体側面の前部(操縦室および主砲弾薬庫)を護る前方の3つのセグメントは分厚く、その後方の5つのセグメントは薄い板状になっている。 通常、2番目~7番目のセグメントの下部にはラバー薄板が吊り下げられている。 前部の分厚いセグメントの厚さは120mm程度で、その内部構造は外側に10mm厚程度の鋼板を配置し、75mm程度の空間を開けて内側に35mm厚程度の鋼板が配置されている。 つまり、サイドスカート自体が成形炸薬弾対策の空間装甲になっているのである。 一方、その後方の薄いセグメントの構造は5mm厚程度の鋼板の一枚板である。 5mm厚程度では運動エネルギー弾に対しては大した防御力は期待できないが、サイドスカートと車体側面装甲板との間の空間が成形炸薬弾対策の空間装甲としての役目を果たすことが期待できる。 また第5生産ロットで製造されたルクレールT5以降の生産車では、フェンダーの側面に増加装甲が装着されるようになった。 この増加装甲は厚さ15mm程度の鋼板で、ボルトによって固定されている。 |
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+灯火装置の構造
ルクレール戦車の左右フェンダーの前端上部には、それぞれ前部灯火装置が設置されている。 前部灯火装置は内側から順に大型円形の前照灯、四角い小型の車幅灯、四角い小型のウィンカーランプが並んでいる。 ウィンカーの色は、日本の一般的な自動車と同じくオレンジ色である。 また前部灯火装置の後ろには、警笛(ホーン)が設置されている。 一方、車体後面左右の泥除けの上部には、それぞれ後部灯火装置が設置されている。 後部灯火装置は内側から順に白色のバックランプ、赤色のブレーキランプ、オレンジ色のウィンカーランプが並んでいる。 言うまでもないが、ウィンカーは戦車が左右に方向転換する際に、ブレーキランプは停止する際に、バックランプは後進する際に点灯し、他の車両や人員に注意を促すためのものである。 また右側の後部灯火装置の左横には、随伴歩兵に注意を促すためのシグナルランプが設けられている。 車内にはシグナルランプを点灯するスイッチがあり、戦車の後ろにいる歩兵に注意を促すことができる。 |
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+砲塔の構造
ルクレール戦車の砲塔の基本部分は、圧延防弾鋼板を溶接して形作られた筐体(箱型構造)になっている。 筐体は砲塔後面以外は二重構造の空間装甲となっており、筐体の前方60度の範囲を護るように複合装甲モジュールが内装されている。 そして砲塔内の乗員は、その60度の防御範囲に入るように配置されている。 筐体の外側には、補助的な防御の役割を果たす外装部が設置されている。 外装部は砲塔筐体の前面と左右側面を覆うように配置されており、ほとんどの外装部が空間装甲を兼ねた雑具収納箱となっている。 雑具収納箱はヒンジによって上開き式に開くことが可能で、ハッチの下方にはロックするための丸い鍵穴が設けられている。 外装部の装甲厚はさほど厚くないため運動エネルギー弾に対する防御力は低いが、成形炸薬弾に対しては空間装甲の役割を果たすためそれなりの防御力を期待できる。 なお、外装部の中でも砲塔前面右側の砲手用照準装置の下側に張り出している部分は、空間装甲ではなく複合装甲モジュールが収められていると推測されている。 ルクレール戦車の装甲防御力については、GIAT社の元社員で本車の開発にも携わったマーク・シャシラン氏の著書で述べられているが、それによると車体前面と砲塔前面は一定角度範囲において、アメリカ製のBGM-71 TOWなどの重対戦車ミサイルと、大口径砲のAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)に抗堪する防御力を備えているとしている。 また砲塔側面の防御力については、旧ソ連製のRPG-7携帯式無反動砲に耐えることができるとしている。 一方後面の防御力については、中口径砲弾に抗堪できるとしている。 また、MSC試作車が公開された際にGIAT社が公表したルクレール戦車の装甲防御力の要求仕様では、「前方60度の範囲で既存のAPFSDS弾に耐え、その他の範囲では中口径弾に耐える」とされていた。 さらにフランス陸軍関係者の話によると、ルクレール戦車の前面装甲は実弾射撃試験において、自身が装備する主砲と同じ52口径120mm滑腔砲CN-120-F1から発射されたOFL-120-F1 APFSDSの直撃に、射距離2,000mで耐えたということである。 以上の情報を総合すると、ルクレール戦車の砲塔の装甲防御力は前方60度の範囲で、射距離2,000mからのOFL-120-F1 APFSDSおよび、重対戦車ミサイルの成形炸薬弾頭に耐えるということになる。 OFL-120-F1 APFSDSはGIAT社とドイツのラインメタル社が共同開発したもので、射距離2,000mで590mmのRHA(均質圧延装甲板)を貫徹することが可能である。 また重対戦車ミサイルの例としては、TOWシリーズの最新型であるBGM-71D TOW2は、射距離に関わらず800mm以上のRHAを穿孔することができる。 ルクレール戦車の砲塔前面は、こういった脅威に耐えられるものと推測される。 また前述のように砲塔側面はRPG-7に耐えられるとされているが、RPG-7の成形炸薬弾頭が垂直に命中した場合の装甲穿孔力はRHA換算で300mm程度あることから、これに抗堪できるとすれば砲塔側面にも軽量の複合装甲が適用されている可能性がある。 ただし複合装甲が適用されていなくても、砲塔側面は外装部が厚さ200mm程度の空間装甲、その内部の筐体が厚さ400mm程度の空間装甲になっているので、RPG-7程度ならぎりぎり耐えられるのではないかと思われる。 一方、砲塔後面は中口径砲弾に耐えられるとされているが、これはせいぜい、旧ソ連製AFVが装備する23mm機関砲から発射されるAPI(焼夷徹甲弾)の直撃を想定していると思われる。 その根拠は、ルクレールT5以降のフェンダー側面にボルト止めされている増加装甲の装着目的が、23mm機関砲弾の直撃に耐えることというフランス陸軍関係者の証言があるからである。 ルクレール戦車の砲塔内部は前半部が戦闘室、後半部が主砲弾薬庫(自動装填装置)に割り当てられている。 主砲は戦闘室の中央に配置されており、その右側に砲手が、左側に車長が着座する。 主砲の左横には副武装の12.7mm重機関銃が同軸に配置され、戦闘室内には砲塔旋回装置や無線機などの機器も配置されている。 砲手席の上部には前開き式のハッチを備える砲手用キューポラ、車長席の上部には後ろ開き式のハッチを備える車長用キューポラがそれぞれ設けられている。 また砲手の前方の砲塔前面には砲手用照準装置、車長用キューポラの右前方の砲塔上面には車長用の全周旋回式照準装置がそれぞれ配置されている。 さらに砲塔上面後部の中央には、FCS(射撃統制装置)のための横風センサーが設けられている。 戦闘室の下部には砲塔バスケットが装着されており、砲塔バスケットの側面は電子機器の収納ボックスになっている。 |
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+砲塔の複合装甲モジュールの構造
ルクレール戦車の砲塔筐体に複合装甲モジュールが内装されていることは、前述したMSC(機能原型)試作車の外観から類推できる。 MSC試作車は「機能原型」の名前通り、ルクレール戦車の基本的な機能はほぼ全て備えていたが、砲塔外装部を備えていない状態の試作車であったため、MSC試作車の砲塔外観を見ればルクレール戦車の砲塔筐体の構造をある程度知ることができる。 MSC試作車の砲塔外観を見ると、砲塔周囲の装甲板が垂直面で構成されていて避弾経始がほとんど考慮されていないことが分かる。 このような砲塔形状は、レオパルト2戦車や90式戦車など西側の戦後第3世代MBTに多く見られるもので、分厚い複合装甲モジュールを砲塔筐体に内装していることを示す。 MSC試作車の砲塔上面前部には風呂桶の蓋のようなものが見られるが、この痕跡は砲塔筐体の前部にあらかじめ複合装甲モジュールを入れるための空間を作っておき、そこに複合装甲モジュールを入れて上に蓋を付けたため生じたと考えられる。 なお、ルクレール戦車の生産型では砲塔の外周全体に薄いFRP(繊維強化プラスチック)製の膜が張られ、その上に塗装が施されており、複合装甲モジュールを入れた部位を特定されないようになっている。 ルクレールのMSC試作車が公開された際に、本車が採用する可能性のある装甲について情報が流された。 それは、現在では一般的となったセラミックを含んだ複合装甲か、あるいは2種または3種の硬度を持つ防弾鋼を重ね合わせた装甲(多層防弾鋼装甲)ということだった。 そして最終的にルクレール戦車には、多層防弾鋼装甲ではなくセラミック複合装甲が採用されることになった。 その理由は多層防弾鋼装甲が鋼の塊であり、特に成形炸薬弾に対して質量効率が低くなるためであった。 鋼の塊で成形炸薬弾に対して高い装甲防御力を実現しようとすれば、戦車の重量が桁外れに大きくなってしまうのである。 一方、セラミックはユゴニオ弾性限界が鋼の10倍以上と非常に大きく、成形炸薬弾頭が発生させる超高圧・高熱のジェット噴流に対して非常に高い防御力を発揮する。 なお前述のマーク・シャシラン氏の著書には、ルクレール戦車のために開発された複合装甲モジュール試験体の写真が掲載されており、この試験体はAPFSDS 1発とHEAT(対戦車榴弾) 2発の合計3発の被弾を受けて、なお貫徹されていないと解説されている。 着弾痕の形状から斜射ではなく直射による射撃試験であり、衝撃インピーダンス勾配を利用しただけの複合装甲ではないことが明白であるため、フランスがそれなりに高度な複合装甲技術を持っていることが伺える。 |
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+砲手用操作機器類の構造
戦闘室内の主砲の右側には、砲手席が配置されている。 砲手席の前方中央には、砲手用照準装置HL-60の接眼部がある。 その左横には、赤外線映像装置やCCDカメラの映像を見るためのモニターが設置され、モニターの下にはFCSの自動/手動切り替えパネルがある。 接眼部の下にはデータを入力するためのキーボードがあるが、このキーボードは接眼部の下に収納されており、使用に際して引き出す構造になっている。 キーボードの下には、照準や射撃などの操作に使用するハンドルがある。 接眼部の右にはメインパネルとサブパネル、インターコムがあり、メインパネルの下には緊急時などに使用する手動砲塔旋回装置がある。 メインパネルの上には3基のペリスコープが配され、砲手の足元には主砲の非常撃発ペダルがある。 砲手用照準装置HL-60は、SAGEM社(Société d’Applications Générales de l’Électricité et de la Mécanique:電気と機械の総合アプリケーション企業)が開発したもので、ルクレール戦車の主砲右側に張り出している四角い複合装甲製の外装部の上部に設置されている。 HL-60の前面には左右開き式の装甲扉が設けられており、使用しない際にはこの扉を閉めて照準装置を保護する。 照準装置の窓にはワイパーや除氷装置が備えられていて、照準の邪魔になる雨や泥はね、氷を落とすことができる。 装甲扉の開閉やワイパーの操作は、HL-60の接眼部の右側にあるパネルで操作する。 パネルの最上部の「CHAUFFAGE」は、曇り止めヒーターの作動スイッチである。 その下の「VOIE JOUR」は昼光チャネル窓のワイパー作動と、装甲扉(右側の扉)の開閉の操作スイッチである。 ただし、赤外線映像装置の装甲扉(左側の扉)の開閉スイッチや除氷装置のスイッチはサブパネルにある。 「CHAUFFAGE」の下にある「MONITEUR+SYMBOLOGIE」は、モニターやシンボル表示の明るさやコントラストを調整するボリュームスイッチである。 最下の「LUMINOSITE RETICULE」は、レティクルの表示明るさのボリュームスイッチである。 HL-60は昼光照準機(メインユニット)、赤外線映像装置ATHOS、Nd-YAGレーザー測遠機HL-58、CCDカメラ、ビデオ信号発生機、TVモニター(ディスプレイ)などの機器で構成されている。 このうち昼光照準機は、HL-60を構成する各機器の送受信および表示機としての機能(メインユニットとしての機能)も兼ねており、CCDカメラやレーザー測遠機HL58が内部に組み込まれ、砲手への表示用として単眼式接眼部(アイピース)が付いている。 HL-60のサイトヘッド前面には、2つの窓が設けられている。 左側の長方形の窓(対辺長さ70mm)が昼光チャネル用、右側の円形の窓(直径150mm)が赤外線チャネル用で、どちらのチャネルもサイトヘッド内に収められたミラーによって各装置に導かれている。 ミラーは、ジャイロ式安定装置にマウントされている。 ジャイロ式安定装置は、照準線を安定化することを目的とした装置である。 ジャイロ式安定装置は2軸式のジャイロスコープと加速度計によりコントロールされており、モーターにより駆動されるレゾルバーを用いて、挙動変化によるミラーのドリフト量を小さくしている。 ミラーは、ベリリウムをベースとした軽合金製である。 重量を軽くして慣性モーメントを小さくすることにより安定化精度の向上と、電子戦や核爆発に伴う電磁波障害によるミラーの破損を防ごうとするものである。 また可視および、近・遠赤外線域波長の光線の反射性もガラス製ミラーより優れている。 ルクレール戦車の砲システムは、安定化された照準線に追随するよう間接的に安定化されている。 この方式は、小さくて軽いミラーを安定化させているために高精度が得られる。 昼光チャネルは、3.3倍と10倍の倍率に切り替えが可能である。 視野角は3.3倍で17.5度、10倍で5.5度である。 赤外線チャネルは、SAT社製の赤外線映像装置ATHOSによって映像化される。 ATHOSは目標の発する赤外線を映像として表示する、いわゆるパッシブ式の赤外線映像装置である。 逆探知される可能性は無く、赤外線の波長領域を利用しているので昼夜を問わず霧や煙を透しての視認も可能である。 また昼間でも、迷彩やカムフラージュによって目視が困難な目標も視認することができる。 ATHOSの映像は倍率3倍、6倍、10倍および20倍の4つの倍率に切り替えができ、最大視認可能距離は5,000mとなっている。 昼光チャネルおよび赤外線映像は、昼光照準機に付いている単眼式接眼部で見ることができる。 赤外線映像は、TVモニターで見ることができる。 この他倍率10倍、視野角3度のCCDカメラがあり、この映像はTVモニターで見ることができる。 HL-60に搭載されているレーザー測遠機は、Avimo社製のHL-58と呼ばれるものである。 HL-58はNd-YAGレーザーを使用した測遠機で、レーザーの波長は1,064mm、パルスエネルギーは10~25mJ(5~20ナノ秒)である。 測遠可能距離は、300~9,995mである。 ただしルクレール戦車への実装状態では、最大測遠距離が8,000mとなっているようである。 レンジ分解能は±5m、識別能力は30mとなっている。 HL-58の寸法は186mm×119mm×78mmと小さなもので、重量も1.9kgしかない。 使用可能温度範囲は、-30~+55℃となっている。 |
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+車長用操作機器類の構造
戦闘室内の主砲の左側には、車長席が配置されている。 車長席の上部には7基のペリスコープが配され、車長席の前方の中央には全周旋回式照準装置(パノラミックサイト)HL-70の接眼部がある。 その直下にはメインパネルが、左横にはモニターがある。 モニターの左にはサブパネル、サイドバネル、インターコムが並んでいる。 サブパネルの下には、データ入力用のキーボードがある。 メインパネルの下には、操砲用のハンドルが設けられている。 車長用の全周旋回式照準装置HL-70は、砲塔上面左側の車長用ハッチの右前方にマウントされている。 HL-70は全周旋回が可能で、車長に戦車の全周360度の視界を与えると共に、目標の照準を行うことも可能である。 HL-70には倍率2.5倍と10倍の昼光チャネルがあり、視野角は倍率2.5倍で20度、10倍で5度となっている。 夜間用には倍率2.5倍、視野角13度の映像に統合された微光暗視装置が装備されている。 微光暗視装置とは、夜間のわずかな光(月明りや星明り)の目標からの反射光を機械的に増幅して利用するタイプの暗視装置である。 HL-70に搭載されるものは、映像増倍管に第2世代のものが使用されている。 微光暗視装置の認識可能距離は4,000m、識別可能距離は2,500mとなっている。 HL-70の光学チャネルを導くミラーは安定化されていて、これにより照準線も安定化されている。 ルクレール戦車の砲システムは、安定化された照準線に追随するように間接的に安定化されている(いわゆるダイレクター方式)。 HL-70は全周が装甲化されていて、前方の窓には水を噴射する装置とワイパーが付いている。 また、レンズの曇り止め装置も付いている。 ワイパーや曇り止め装置の操作は、接眼部の奥に位置する調整パネルで行う。 このパネルにはHL-70の映像やレティクルの明るさ、コントラストを調整するスイッチも付いている。 HL-70の接眼部の左横にあるモニターには、砲手用照準装置HL-60からのCCDビデオ映像や赤外線映像を表示することができる。 また、HL-60の操作権を砲手から奪って(オーバーライドして)、車長自らが操作を行うことができる。 HL-60の操作は、モニター映像を見ながら車長のハンドル、メインパネル、サブパネル、サイドパネルで行うことができる。 このため車長のハンドルは砲手のハンドルと同じもので、各パネルもスイッチの配置こそ違うものの、基本的な操作スイッチは全て揃っている。 車長用メインパネルにはGALIX防御システムの発射スイッチ(パネル左上)、主砲用のOE-120-F1 HEの信管設定スイッチ(右上)、自動装填装置およびFCSへの主砲弾薬選択スイッチ(右下)、乗員のための送風装置のスイッチ(左下)があり、各スイッチの表示や機能は砲手用メインパネルと同一である。 車長用サブパネルには赤外線映像装置の調整スイッチ、12.7mm同軸機関銃の設定スイッチなどがある。 各スイッチの表示や機能は砲手用メインパネルと同一だが、追加の機能として主砲の射撃禁止スイッチがある。 このスイッチを下に入れると射撃禁止状態となり、各パネルの射撃禁止インジケーターが点灯する。 また各照準装置のレティクルにも、射撃禁止の表示が出る。 車長用サイドパネルには、赤外線映像装置の装甲扉とワイパーの作動スイッチ、照明の明るさ調整や視野テストのスイッチ、システムの非常停止スイッチといった、砲手用サブパネルにあるものと同じ機能を持ったスイッチがある。 この他「ALIMENTATIONS」と書かれている部分には、赤外線映像装置や主砲弾薬の自動装填装置などの各装置の起動スイッチがある。 また「TELEMETRE」と書かれた部分には、レーザー測遠機のキースイッチがある。 このキースイッチを「INTERDIT」にすると、レーザー測遠機は使用禁止になる。 「NBC」と書かれた部分には、NBC防御システムの起動スイッチがある。 このスイッチを押すと、NBC防御システムが作動する。 |
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+自動装填装置の構造
ルクレール戦車の砲塔後部には、主砲弾薬の自動装填装置(即用弾薬庫を兼ねる)が配置されている。 本車に採用されている自動装填装置は、回転式のベルトコンベアのような装置である。 コンベアには主砲弾薬を保持するホルダーが付いており、そのホルダーがコンベアと共に動いて装填トレイに弾薬を持っていく仕組みになっている。 装填トレイに持っていかれた主砲弾薬は、自動装填装置から迫り出した装填ガイドによって主砲の砲尾に導かれ、ガイドの中央にあるラマーによって薬室に送り込まれる。 実際の装填シークエンスは、次のように進む。 まず主砲の薬室が空の状態では、主砲の俯仰角は装填ポジションである-1.8度に固定される。 砲手または車長が、メインパネルにある装填したい主砲弾薬の選択ボタンを押す。 自動装填装置は、選択された主砲弾薬が最短時間で装填できるホルダーを自動的に選択し、装填トレイに持っていく。 次いでメインパネルの装填ボタンが押されると、戦闘室の後部(主砲の真後ろ)にある小さな扉が開き、装填ガイドが主砲の砲尾に前進して、ガイド中央のラマーが主砲弾薬を押して薬室に弾薬を押し込む。 主砲弾薬が押し込まれると、砲尾の閉鎖機が閉まる。 装填ガイドとラマーが後退し装填扉が閉まると同時に、砲尾を覆う薬莢受けが閉まる。 主砲の俯仰角が装填ポジション(-1.8度)から解除され、照準線に追随するように安定化される。 戦闘室と自動装填装置の間は、この頑丈な装填扉と隔壁により完全に分離されており、自動装填装置の部位に被弾して主砲弾薬が延焼・誘爆した際に、戦闘室に被害が及ばないようになっている。 また自動装填装置の上部にある砲塔上面は、「ブロウオフパネル」と呼ばれる構造になっている。 ブロウオフパネルは、主砲弾薬が延焼・誘爆した際に吹き飛ぶことにより爆圧を車外に逃がす役目を果たす。 自動装填装置に搭載される即用主砲弾薬の数は、22発となっている。 車体前部右側の主砲弾薬庫に搭載される予備の主砲弾薬の数が18発なので、ルクレール戦車に搭載される主砲弾薬の数は合計で40発となる。 自動装填装置が主砲弾薬を装填するのに要する時間は、装填装置内の弾薬の位置にもよるが約6秒となっている。 自動装填装置内の主砲弾薬が尽きた際に、弾薬を給弾するには幾つかの方法がある。 主砲弾薬が車外にある場合は、砲塔後面または砲塔上面にある給弾用ハッチを開けて給弾することができる。 砲塔後面の給弾用ハッチを開くには、砲塔後面右側に備えられている雑具ラックを右側に開く必要がある。 給弾口の右下には、ホルダーに搬入する弾種の設定パネルがある。 これを用いて、搬入する際にどのホルダーにどの弾種が入っているかを自動装填装置に覚え込ませる。 車体前部右側の主砲弾薬庫から予備弾薬を取り出して給弾する場合は、砲手席の後部の隔壁に設けられている給弾口を用いて給弾を行う。 しかし車内には余分な空間が無いため、予備弾薬庫からの給弾は苦労を要し、時間が掛かるそうである。 |
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+主砲の構造
ルクレール戦車に搭載されている主砲は、GIAT社が開発した120mm滑腔砲である。 この砲はGIAT社の社内呼称では「CN-120-26」と呼ばれ、フランス陸軍における制式呼称は「CN-120-F1」である。 CN-120-F1は、NATO軍の標準規格「STANAG 4385」で定められた要求事項に準拠した戦車砲である。 このため、同じ規格に準拠しているラインメタル社製の120mm滑腔砲Rh120(レオパルト2戦車シリーズの主砲)や、その派生型であるアメリカ製の120mm滑腔砲M256(M1A1/A2戦車の主砲)などと弾薬の互換性がある。 CN-120-F1の構造は砲部、揺架部、その他の外部装置に大別できる。 砲部は砲身、被筒(サーマルスリーブ)、閉鎖機などから構成されている。 ●砲部の構造 CN-120-F1は滑腔砲であるため、ライフル砲で見られる砲腔内の螺旋状の溝(ライフリング)が無く、砲腔内は平滑である。 また砲身寿命を向上させるため、砲腔内にはクロームメッキが施されている。 砲身長は6,200mmで51.7口径長と、44口径長のRh120やM256よりも砲身が長い。 CN-120-F1の砲身には、「サーマルスリーブ」(サーマルジャケット)と呼ばれる筒が被せられている。 これは太陽熱により砲身上面が温められて膨張し、砲身が曲がる「ソーラーベント」と呼ばれる現象によって、主砲の命中精度が低下するのを防止する役目を果たすものである。 砲身をサーマルスリーブで覆うことで太陽熱の影響を軽減し、またサーマルスリーブの内部を一定の温度に保温することで砲身の曲がりを防ぐ。 さらにルクレール戦車には主砲基部に砲口照合装置、砲身先端の上部に砲口照合装置のミラーが設けられている。 これらを用いて砲身の曲がりによる射線と照準線のズレを測定し、そのズレをFCSに入力し補正することで主砲の命中精度を向上させるのである。 CN-120-F1の閉鎖機は、砲尾環と鎖栓などから構成されている。 本砲の鎖栓は垂直に滑動する「垂直鎖栓式」と呼ばれるもので、下にスライドさせることで開放状態になる。 鎖栓には電気式撃発装置が付いているが、故障などで電気式撃発装置が作動しない場合は、非常用のショック・ジェネレイターによる撃発が可能である。 砲部(後座体)の重量は、1,980kgとなっている。 ●揺架部の構造 CN-120-F1の揺架部は砲耳、揺架、駐退機および復座機、自動開放装置などで構成されている。 砲耳は砲塔と主砲を連結する部分で、主砲全体の重量や射撃時の反動が掛かる部分である。 ルクレール戦車の主砲の俯仰範囲は、-7~+18度となっている。 揺架は、砲部を取り巻くように配置されている(逆に言うと、砲部が揺架の中心部を貫通するように設置されている)。 砲部が後復座する際には、揺架内を滑るように動くわけである。 揺架の左右には、駐退機と復座機が付いている。 駐退機は、射撃の反動で砲部が後座する際にその衝撃を吸収する装置で、復座機は、後座した砲部を元の位置に戻す装置である。 CN-120-F1の後座長は通常で400mm、後座力はOFL-120-F1 APFSDSを射撃した場合で550kNとなっている。 ルクレール戦車が使用する主砲弾薬は半焼尽薬莢式であるため、従来の弾薬のように射撃後に撃ち殻薬莢が発生せず、薬莢が発射薬と共に薬室内で燃え尽きて薬莢底部だけが残される。 自動開放装置は、閉鎖機の開放と薬莢底部の排出を自動的に行う装置である。 薬室に主砲弾薬が装填されると閉鎖機が自動的に閉鎖され、射撃後も閉鎖機の開放と薬莢底部の排出が自動的に行われる。 故障などでこの装置が使用できない場合は、手動で閉鎖機を開放することもできるようになっている。 ●その他の外部装置の構造 その他の外部装置としてはサポートプレート、撃発停止装置、センサーインターフェイスボックス、薬莢受けなどがある。 サポートプレートは、砲システムに防盾を設置する際に使用するプレートである。 このサポートプレートの前方に、主砲防盾が設置される。 撃発停止装置は、砲を射撃(撃発)できないようにするための安全装置である。 この装置は車長によりコントロールされるもので、砲手はこの装置が作動していると通常の方法ではもちろん、ショック・ジェネレイターによる緊急方式でさえ撃発を行うことができない。 センサーインターフェイスボックスは、砲システムに設置されたセンサーとFCSを結び付けるためのものである。 砲システムには、砲耳の傾きや薬室温度などを測定するセンサーが付随しており、このインターフェイスボックスを通じてFCSに情報が伝達される。 薬莢受けは、砲尾から排出される薬莢底部を受け取る装置である。 また、砲尾開放時に砲腔内から流出する発射薬燃焼ガスを戦闘室内に流入させない役目も果たす。 その動作を説明すると、薬莢受けは薬莢底部を排出するために開放された砲尾に覆い被さり、排出された薬莢底部は薬莢受けにぶつかって下にある排薬莢箱に落ちる。 そして発射薬燃焼ガスも、薬莢受け内に漏れ出す。 この時、薬莢受け内に発射薬燃焼ガスを吹き飛ばすための高圧ガスが噴出される。 このガスの圧力で発射薬燃焼ガスは、砲口から車外へ放出される。 砲部、揺架部、その他の外部装置を含めたCN-120-F1システムの全長は6,931mm、重量は2,800kgである。 |
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+主砲弾薬の構造
ルクレール戦車の主砲である120mm滑腔砲CN-120-F1が使用する弾薬は、OFL-120-F1(最新バージョンはOFL-120-F1A)およびOFL-120-F2と呼ばれるAPFSDSと、OECC-120-F1と呼ばれるHEAT-MP(多目的対戦車榴弾)、OE-120-F1と呼ばれるHE(榴弾)が実戦用に用意されている。 また現在開発中の弾薬として、「ポリネージュ」と呼ばれる誘導砲弾が存在する。 この他、射撃演習用の弾薬としてOFLX-120-G TPFSDSとBSCC-120-F1 HEAT-TPが運用されている。 実戦用や射撃演習用の弾薬は、120mm滑腔砲CN-120-F1と同様にSTANAG 4385の要求事項に準拠しており、同じ規格に準拠している120mm滑腔砲Rh120やM256でも使用できる。 また前述のようにCN-120-F1用の弾薬は半焼尽薬莢式であり、射撃後に薬莢が底部以外全て燃焼してしまう。 半焼尽式の薬莢は側面の円筒部と金属製の底部から構成され、円筒部は発射薬と同質のニトロセルロース(燃焼剤)、化学繊維(補強材)、合成樹脂(粘結剤)、化学安定剤で作られている。 また湿気や水、炭水化物の接触に対して性状が変化しないように表面処理が施されている。 薬莢底部は燃焼ガスの漏洩を防ぐ機能を持ち、直径15cm×高さ8cm程度の鉄製である。 底部の中央には、発射薬点火用の電気式火管が付けられるようになっている。 ●OFL-120-F1/F2 APFSDSの構造 OFL-120-F1はGIAT社とラインメタル社が共同で開発したAPFSDSで、1993~94年頃に「OFL-120-F1」としてフランス陸軍に制式採用された。 一方、ドイツ陸軍ではこのAPFSDSに「DM43」という呼称を与えたものの、火管にドイツの基準では問題と見なされる点があり採用されなかった。 その後DM43は、ドイツにおいて改良が施された。 改良点は火管の変更(フランス製からドイツ製のDM132A1へ)と、発射薬をフランス製のGB19-166からドイツ製のL1/M2400に変更した2点である。 改良されたAPFSDSは、1995~96年頃に「DM43A1」の呼称が与えられた。 DM43A1はドイツ陸軍では採用されなかったが、アメリカで「KEW-A1」の呼称でライセンス生産が行われることになった。 このKEW-A1にも、若干のローカルな変更が生じている。 それは、半焼尽式薬莢のコーティングの変更(より燃え易いタイプに)と、アメリカの要求事項に準拠する電気的に絶縁された火管の採用である。 なおDM43A1がドイツ陸軍で採用されなかった理由については、すでに新型のDM53 APFSDSの開発に目処が立っていたためと推測される。 一方KEW-A1はアメリカ陸軍では採用されていないが、アメリカからエジプトに輸出されたM1A1/A2戦車の主砲弾薬として採用されており、エジプトに10,040発が輸出されている。 OFL-120-F1は他のAPFSDSと同じく、細長く後部に安定翼の付いた矢弾(侵徹体)に、装弾筒と呼ばれる鞘を被せた構造の運動エネルギー弾である。 砲内では、装弾筒を被せた状態で発射薬燃焼ガスの圧力に押されて加速され、砲口から飛び出すと同時に装弾筒が分離して侵徹体だけが目標に向かって飛んでいく。 目標に命中すると、侵徹体の持つ重さと速度(運動エネルギー)で装甲を貫徹し、目標内部に破壊効果を与える。 APFSDSの侵徹体の材質はタングステン合金が主流であるが、アメリカ陸軍のM1A1/A2戦車などは劣化ウラン合金製の侵徹体を用いたAPFSDSを運用している。 OFL-120-F1は、主流であるタングステン合金製の侵徹体を使用している。 OFL-120-F1の諸元は完成弾重量20.5kg、発射体重量7.3kg、発射薬重量8.3kg、砲口初速1,790m/秒と公表されている。 装甲貫徹力に関しては公表されていないが、射距離2,000mで590mmのRHAを貫徹できると推測されている。 一方OFL-120-F2は、OFL-120-F1の侵徹体の材質を劣化ウラン合金に変更したもので、諸元は公表されていないが一説によると発射体重量がOFL-120-F1に比べて0.5kg重く、発射薬重量は同じで砲口初速が50m/秒ほど遅いといわれている。 フランスは国内発電量の約80%を原子力発電で賄っている原発大国であるため、発電の際に多量の劣化ウランを含む放射性廃棄物が発生する。 希少金属で高価なタングステンに比べて、廃棄物である劣化ウランはAPFSDSの侵徹体材料としてはコスト面で非常に安上がりであるが、劣化ウラン合金を用いたAPFSDSは強い放射線を発生させるため取り扱いに注意が必要で、戦車乗員の被曝の問題も指摘されているためフランス陸軍におけるOFL-120-F2の配備数は少なく、輸出も行われていない。 ●OECC-120-F1 HEAT-MPの構造 ルクレール戦車は対装甲目標用の主砲弾薬としてAPFSDSを主用するが、それ以外の目標に対してはOECC-120-F1 HEAT-MPが用いられる。 OECC-120-F1は滑腔砲から発射されるHEAT-MPであるため、他の弾種と同様に翼安定方式を採用している。 通常のHEATは成形炸薬弾頭を持つ対装甲目標用の弾薬であるが、HEAT-MPは成形炸薬弾の弾体を調整破片化し、装甲目標のみならず非装甲目標に対し榴弾的にも使用できるようにしたものである。 OECC-120-F1の諸元は完成弾重量24.3kg、発射体重量14.4kg、発射薬重量5.8kg、砲口初速1,100m/秒と公表されている。 具体的な装甲穿孔力については公表されていないが、射距離に関わらず700mm以上のRHAを穿孔可能と推測されている。 つまり対装甲威力だけで考えるとOECC-120-F1はOFL-120-F1を上回るが、HEAT-MPはAPFSDSに比べて砲口初速がかなり遅いため移動目標に対する命中精度が低い。 また敵の車両が複合装甲や空間装甲を備えている場合、成形炸薬弾は装甲穿孔力が大きく低下する。 このため、対装甲目標にはAPFSDSが優先して使用される。 ●OE-120-F1 HEの構造 HEは、戦車の黎明期から非装甲目標に対して用いられている主砲弾薬で内部に炸薬を内蔵し、これを爆発させることにより飛び散る破片と爆風で目標を破壊する。 これまで西側MBTは120mm滑腔砲用の弾薬として装甲目標用のAPFSDSと、装甲目標と非装甲目標のどちらにも使用可能なHEAT-MPを主用してきたが、HEAT-MPは非装甲目標に対して用いた場合、HEに比べて威力が劣るという欠点があった。 また現用のMBTは複合装甲や空間装甲を備えているものが大半であるため、HEAT-MPで大きなダメージを与えることが困難になっている。 このように中途半端な存在になってしまったHEAT-MPに代えて、非装甲目標用の弾薬として昔から使われているHEを復活させることになったのである。 GIAT社の資料によると、OE-120-F1は2003年末にフランス国防省より10,000発の発注がなされたということである。 OE-120-F1は従来のHEAT-MPの代替として運用されることになっており、開発はスウェーデンのNammo社とGIAT社の共同で行われた。 Nammo社は先にスウェーデン陸軍の保有するレオパルト2戦車シリーズ向けに、イスラエルのIMI社と共同で120mm滑腔砲用のHEを開発しており、そのノウハウを活かしたものと思われる。 OE-120-F1の諸元は完成弾重量25.5kg、発射体重量16.1kg(炸薬重量3.2kg、破片重量9.2kg)、発射薬重量6.0kg、砲口初速1,050m/秒、有効射程距離5,000mと公表されている。 信管は弾頭信管で、「着発」と「延期」の2種類のモードを選択できる。 暴露目標を攻撃する場合は着発モードを選択し、着弾と同時に破片をばら撒いて目標を破壊する。 また、ブンカーや建物などの内部に隠れた目標を攻撃する場合には延期モードを選択し、壁を貫いた後に爆発して目標を破片と爆圧で破壊するのである。 将来的には、時限信管も搭載できるようにする予定である。 |
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+副武装の構造
●12.7mm重機関銃TTIの構造 主砲の右横には、主砲と同軸で俯仰する12.7mm重機関銃が設置されている。 この機関銃は、西側各国に広く普及しているアメリカのブラウニング火器製作所製の12.7mm重機関銃M2をライセンス生産したもので、「TTI」という型式呼称が付いている。 このTTI機関銃は、主に軽装甲車両やソフトスキン車両を攻撃するのに使用される。 主砲同軸機関銃なので主砲と同様に安定装置にマウントされており、高い命中精度を持っている。 弾薬はNATO標準の12.7mm×99弾を使用し発射速度は600発/分、銃口初速810m/秒、搭載弾薬数は800発となっている。 射撃は、車長席または砲手席の操砲ハンドルに付いている撃発ボタンを押すことで行われる。 射撃モードは、バーストと連射の2モードがある。 バーストモードでは、撃発ボタンを1回押すごとに8発の弾丸が発射される。 連射モードは、撃発ボタンを押している間中ずっと弾丸が発射され続ける。 射撃モードは、砲手用メインパネルと車長用サブパネルのスイッチで切り替えることができる。 ●7.62mm機関銃NF1の構造 ルクレール戦車には対空用として、NATO標準の7.62mm×51弾を使用する「NF1」と呼ばれる機関銃が装備されている。 この機関銃は元々、戦後のフランス軍の標準機関銃としてMAS社(Manufacture d'Armes de Saint-Étienne:サン・テティエンヌ造兵廠)が1952年に開発した7.5mm機関銃AA-52を原型としているが、AA-52はフランス独自の7.5mm×54弾を使用していたため、他のNATO加盟国と弾薬を共用できない欠点があった。 このため1960年代にAA-52をNATO標準口径に改めたものが、7.62mm機関銃NF1である。 NF1は全長1,080mm、重量9.75kg、発射速度900発/分、銃口初速830m/秒、ベルト給弾式で側面に付く弾薬箱に200発の弾薬を装備している。 車内には、弾薬箱15個(3,000発)の弾薬が搭載される。 NF1の装備位置は車長または砲手用キューポラのマウント部で、通常どちらかの一方に装備している。 ●GALIX防御システムの構造 ルクレール戦車は砲塔部に、エティエンヌ・ラクロア社とGIAT社が共同開発した「GALIX」と呼ばれる防御システムを装備している。 GALIX防御システムは擲弾発射機7基を1セットとして、砲塔後部の左右に合計2セットが配置されている。 GALIXにはGALIX3、GALIX13、GALIX6、GALIX4の4種類の弾薬があり、直径はいずれの弾薬も80mmとなっている。 GALIX3は3つの発煙ポットを内蔵した発煙弾で、全長400mm、重量4.9kgである。 射程距離は60mで、可視光を遮る煙幕が50秒未満の間継続する。 GALIX13はGALIX3と同様の構造を持った発煙弾だが、煙幕が赤外線も遮るタイプに変更されている。 このため重量が5.3kgに増加し、継続時間が30秒未満に低下している。 射程距離は、20mと60mの2種類がある。 GALIX6は赤外線誘導方式の対戦車ミサイルの誘導や、赤外線映像装置による探知を妨害するためのデコイ弾(囮弾)である。 全長265mm、重量3kgで1つの赤外線デコイを内蔵している。 デコイは、発射と同時に強い赤外線を放出する。 GALIX13発煙弾で自車からの赤外線放出を遮ると同時に、GALIX6デコイ弾を発射することで赤外線による追尾や探知を妨害するのである。 GALIX4は、対人用のHE-FRAG(破片効果榴弾)である。 全長265mm、重量3.7kgで2つの球形の爆弾を内蔵している。 射程距離は5~50mで、1つの球形爆弾の威力半径は12mである。 GALIX4 HE-FRAGは、自車に接近する敵歩兵を攻撃するのに使用される。 なおルクレール戦車の試作車のGALIXシステムでは、合計で18基の80mm擲弾発射機が装備されていた。 装備位置は砲塔後部左側に7基、後部右側に11基で、砲塔後部右側の11基の内の4基は砲塔上面に垂直に埋め込まれる形で搭載されていた。 この時の各種弾薬の搭載数は発煙弾が左右4発ずつの合計8発、HE-FRAGが左右3発ずつの合計6発、デコイ弾が右側の垂直発射機に4発となっていた。 ルクレール戦車の生産型では右側の垂直発射機4基が省略され、擲弾発射機の外観も試作車のものと変更されている。 |
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+DNG/DCL戦車回収車
フランス国防省は1986年頃から、GIAT社が輸出用に開発したAMX-40戦車の車体をベースとした戦車回収車の開発を計画していた。 この計画は開発コストの低減を図るため、先の標準戦車計画やナポレオン/KPz.3計画と同様に、フランスと西ドイツの共同で行われることになった。 計画された車両はAMX-40戦車の車体をベースに、西ドイツのMaK社(Maschinenbau Kiel:キール機械製作所)がレオパルト2戦車をベースに開発した、「ビュッフェル」(Büffel:水牛)戦車回収車の回収機材を搭載するというものであった。 AMX-40戦車の車体が選ばれた理由は、GIAT社が多額の資金をつぎ込んで1983年に自主開発した同車を採用する国が全く現れなかったため、GIAT社が経営難に陥ることをフランス政府が危惧したためである。 またこの計画にはAMX-40戦車の車体をベースにした装甲工兵車、戦車橋、地雷処理車両などの開発も含まれており、これらの車両を合計で300両製造するという計画であった。 当時はまだ冷戦時代の最中であったため、フランス国防省はワルシャワ条約機構軍の圧倒的な機甲戦力に対抗するため、当時開発中であったルクレール戦車を1,500両調達することを計画しており、サポート車両もこれだけの数が必要と考えられたのである。 しかし1991年のソヴィエト連邦崩壊と冷戦の終結によって、状況が大きく変化した。 当初1,500両生産される予定だったルクレール戦車の生産数は600両へと大幅に減らされ、結局406両しか生産されなかった。 これに伴ってAMX-40戦車ベースのサポート車両の開発計画も、全てキャンセルされた。 そして肝心のルクレール戦車の回収作業は、ルノー社製のTRM-10000トラックに吊り上げ能力20tのクレーンと牽引能力18t(プーリータックルを使用すると36t)のウィンチを搭載した車両である、TRM-10000CLDで行うことになった。 ただし、この車両の能力はルクレール戦車をサポートするには決して充分なものではなかった。 一方で、UAE陸軍にトロピック・ルクレール戦車が配備されることが決定した。 当時のUAE陸軍には、戦車回収車としてGIAT社製のAMX-30Dが配備されていた。 AMX-30DはAMX-30戦車をベースとした戦車回収車であるが、クレーンの吊り上げ能力は最大で15tしかなく、車体前部のウィンチの牽引能力も35tしかない。 この能力では、57tもの戦闘重量を持つトロピック・ルクレール戦車を回収するには充分でないと判断された。 またルクレール戦車の砲塔は20t近い重さがあり、AMX-30Dのクレーンでは持ち上げることができないことも問題だったようである。 そこでUAE国防省は1993年4月に、トロピック・ルクレール戦車を回収できる戦車回収車の開発をGIAT社に要求した。 GIAT社はこれに応えてトロピック・ルクレール戦車の車体をベースとし、ビュッフェル戦車回収車に装備されている回収機材を流用した戦車回収車を開発した。 この戦車回収車は「DNG」(Depanneur de Nouvelle Generation:新世代回収車)と呼ばれ、最初の試作車は1994年の春に完成し、同年6月には兵器展示会「ユーロサトリ '94」で公開された。 その後UAE陸軍に引き渡され、1995年の夏に運用試験が行われた。 この運用試験はUAEの灼熱の砂漠で5週間に渡り実施され、その間にDNGの試作車は1,600km以上もの距離を走破した。 そしてその6カ月後、2両目の試作車がUAEに到着しより実際的な運用試験が行われた。 運用試験は成功裏に終了し、UAE国防省はDNG戦車回収車の陸軍への採用を決定した。 そしてGIAT社に対し、46両のDNG戦車回収車を生産発注した。 UAE陸軍においてDNG戦車回収車の採用が決まる一方で、フランス国防省は宙に浮いていた次期戦車回収車のトライアルを実施した。 このトライアルにはGIAT社のDNG戦車回収車の他、MaK社のビュッフェル戦車回収車、イギリスのヴィッカーズ・ディフェンス・システムズ社のCRRAV(Challenger Repair and Recovery Armoured Vehicle:チャレンジャー装甲修理・回収車)が参加した。 CRRAVはチャレンジャー1戦車の車体をベースとした戦車回収車だが、DNGと比較するとウィンチの牽引能力が直接牽引(プーリータックルを使用しない状態)でも52tと非常に強力であるのに対し、クレーンの吊り上げ能力が6.5tと非常に小さいという特徴があった。 選定においてCRAAVは、その能力の特異性から早々に候補から外された。 ウィンチの牽引能力は無駄に大きく、クレーンの吊り上げ能力が完全に不足していると判断されたのである。 DNGとビュッフェルは、ほぼ同じ回収機材を装備しており性能が拮抗していたが、最終的にはルクレールと共通のコンポーネントを持つDNGが選ばれた。 なおフランス陸軍向けのDNG戦車回収車は、「DCL」(Depanneur de Char Leclerc:ルクレール戦車回収車)と呼ばれている。 DNGとDCLの違いは、エンジンに寒冷地始動用の「flamstart」という装置が付いている点と、無線機がPR4Gに変更されている点であり、その他の部分はほぼ同一である。 フランス国防省はGIAT社に30両のDCL戦車回収車を発注したが、製造は4つの生産ロットに分けられ第1生産ロットが15両、第2~第4生産ロットが各5両となっている。 DCL戦車回収車は2003年の時点で12両が部隊配備されており、2008年までに30両全てが引き渡された。 |
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<ルクレールRT5戦車> 全長: 9.87m 車体長: 6.88m 全幅: 3.71m 全高: 2.53m 全備重量: 56.0t 乗員: 3名 エンジン: Wärtsilä SACM V8X-1500 4ストロークV型8気筒液冷ハイパーバー・ディーゼル 最大出力: 1,500hp/2,500rpm 最大速度: 72km/h 航続距離: 470km(外部燃料タンク装着時 610km) 武装: 52口径120mm滑腔砲CN-120-F1×1 (40発) 12.7mm重機関銃TTI×1 (800発) 7.62mm機関銃NF1×1 (3,000発) 装甲: 複合装甲 |
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<トロピック・ルクレール戦車> 全長: 9.87m 車体長: 7.03m 全幅: 3.71m 全高: 2.53m 全備重量: 57.0t 乗員: 3名 エンジン: MTU MT883Ka-501A 4ストロークV型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 1,500hp/2,700rpm 最大速度: 70km/h 航続距離: 470km(外部燃料タンク装着時 610km) 武装: 52口径120mm滑腔砲CN-120-F1×1 (40発) 7.62mm機関銃NF1×2 (3,000発) 装甲: 複合装甲 |
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<参考文献> ・「パンツァー2015年10月号 フランスらしい時代の先端を行くアール・ヌーヴォー戦車 ルクレール戦車」 竹内修 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2002年4月号 フランス第3世代MBT ルクレール戦車の開発と機能・発展」 齋木伸生 著 アルゴ ノート社 ・「パンツァー2008年11月号 ステップアップを続けるルクレール戦車」 三鷹聡 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2022年1月号 30年目のルクレールの真実」 毒島刀也 著 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021~2022」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2005年8月号 フランス最新鋭戦車ルクレールの開発と構造(1)」 一戸崇雄 著 ガリレオ出 版 ・「グランドパワー2005年9月号 フランス最新鋭戦車ルクレールの開発と構造(2)」 一戸崇雄 著 ガリレオ出 版 ・「グランドパワー2005年10月号 フランス最新鋭戦車ルクレールの開発と構造(3)」 一戸崇雄 著 ガリレオ出 版 ・「グランドパワー2005年11月号 フランス最新鋭戦車ルクレールの開発と構造(4)」 一戸崇雄 著 ガリレオ出 版 ・「グランドパワー2019年11月号 フランス戦車発達史(戦後編)」 齋木伸生 著 ガリレオ出版 ・「世界の戦車(2) 第2次世界大戦後~現代編」 デルタ出版 ・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著 三修社 ・「徹底解説 世界最強7大戦車」 齋木伸生 著 三修社 ・「新・世界の主力戦車カタログ」 三修社 ・「戦車名鑑 1946~2002 現用編」 コーエー |
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ET MODEL 1/35 フランス軍戦車 ルクレール シリーズ2 グリル (タミヤ 35279用) EA35-111 | |||||
エウレカXXL 1/35 フランス軍 ルクレール戦車 牽引ワイア ER-3543 | |||||
J's Work 1/35 フランス軍 ルクレール戦車 エアブラシ用迷彩マスキング PPA5147 | |||||
JULES CRAFTER 1/43 フランス軍 ルクレール戦車 ペーパーキット | |||||
ドイツレベル 1/72 フランス軍 ルクレールT5戦車 プラモデル 03131 | |||||
ドイツレベル 1/72 フランス軍 ルクレールT5戦車 プラモデル 03341 | |||||
SSMODEL 1/72 フランス軍 ルクレールT4戦車 V1.9 プラモデル SS72756 | |||||
デアゴスティーニ 1/72 コンバット・タンク・コレクション 12号 フランス陸軍 ルクレールT5戦車 フランス・1997年 完成品 | |||||
デアゴスティーニ 1/72 コンバット・タンク・コレクション 89号 UAE陸軍 ルクレールT5戦車 UAE・1996年 完成品 | |||||
ギガント フランス軍 ルクレール戦車 長袖Tシャツ | |||||
ギガント フランス軍 ルクレール戦車 半袖Tシャツ |