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コンドル装甲車





西ドイツのラインシュタール社が1960年代後期に開発したUR-416装甲車は、手堅い設計ながら費用対効果の高い小型装輪式装甲車として好評を博したが、この成功を受けて同社は後継となる新型装輪式装甲車の開発を自社資金で開始した。
それが、「コンドル」(Kondor:南米のアンデス山脈に生息する猛禽類)装甲車である。

コンドル装甲車もUR-416装甲車と同じく高い不整地走破性と良好な整備性、そして費用対効果を重視してダイムラー・ベンツ社(現ダイムラー社)製の汎用高機動車両ウニモグの足周りを用いていたが、ベース車体は1974年に登場した新型のウニモグ425シリーズに変更され、エンジンも新型となったことで出力が向上している。
なおメーカーのラインシュタール社は1976年にティッセン・ヘンシェル社、1996年にヘンシェル・ヴェアテクニク社に改組され、2000年にラインメタル・ラントジステーム社に吸収合併された。

コンドル装甲車の車体は生産性の高いモノブロック(一体)方式で組み立てられており、車体の全4面は圧延防弾鋼板が避弾経始の効果を発揮するように傾斜角を付けて溶接されている。
防弾能力は全周に渡って7.62mm徹甲弾の直撃や、至近距離で炸裂した榴弾の破片に耐えることができる程度になっている。

車内レイアウトは車体前部右側に機関室、前部左側に大きな防弾ガラスで視界を確保した操縦手席、その後ろに車長席が配置されており、車体中央部から後方は兵員室となっている。
操縦手席の防弾ガラスは戦闘時には装甲プレートでカバーされるようになっており、操縦手席と車長席の天井にはそれぞれ円形のハッチが設けられている。

機関室と操縦室を車体最前部に配置したのは、車体中央部から後部にかけて兵員室の容積を広く確保するためで、APC(装甲兵員輸送車)、小型砲塔を搭載したIFV(歩兵戦闘車)、対戦車ミサイルや迫撃砲を装備した自走発射機などに幅広く改修できるよう考慮している。
コンドル装甲車の車体は4輪装甲車の割に長く全長6.13mもあるため、基本型である無砲塔のAPCヴァージョンでは乗員2名の他に、完全武装の兵員12名を後部兵員室に収容することができる。

車体の左右側面と後面にはそれぞれ乗降用のドアが設けられており、いざというときに兵員を迅速に展開させられる。
エンジンは、ダイムラー・ベンツ社製の2種類のディーゼル・エンジン(OM352A 直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル(出力168hp)、またはOM366LA 直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル(出力204hp))からユーザーが選ぶようになっている。

変速機は安価な手動式(UG3/40-8/13.85GPA、前進8段/後進8段)、サスペンションはコイル・スプリングと油圧ショック・アブソーバーの組み合わせとなっている。
コンドル装甲車の機動力は路上最大速度100km/h、路上航続距離900kmで装輪式装甲車の基準をクリアしており、さらに本車は浮航能力も有している。
車体後面下部に備えられたスクリュー・プロペラ1基によって、10km/hの速度で川を渡ることができる。

コンドル装甲車のヴァリエーションには、アメリカのブラウニング社製の12.7mm重機関銃M2を装備するKUKA社製のタイプ605銃塔を搭載したAPCヴァージョン、スイスのエリコン社製の85口径20mm機関砲204GKと、7.62mm機関銃を同軸装備するイギリスのHELIO社製のFVT900砲塔を搭載したIFVヴァージョン、装甲救急車、装甲指揮車、装甲回収車ヴァージョンなどが用意されており、安価な割に出来の良い装甲車なのでマレーシア(457両)、ウルグアイ(64両)、トルコ(25両)、タイ(19両)、ポルトガル(12両)の5カ国に合計577両が輸出されている。

2004年にはベース車体を新型のウニモグ5000シリーズに変え、エンジンも新型のOM906LA 直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力228hp)に換装した改良型のコンドル2装甲車が誕生している。
外観自体は前型のコンドル1装甲車とほとんど変わらないが、後部兵員室の収容人数は無砲塔のAPCヴァージョンで10名に減少しており、アメリカのボーイング社製の87口径25mm機関砲M242と、7.62mm機関銃を同軸装備するHELIO社製のFVT800砲塔を搭載したIFVヴァージョンでは7名となる。

ただし2000年代以降、様々な国で新しい装輪式装甲車が多数開発されているため、基本設計が古いコンドル2装甲車はクウェートに8両採用されただけで終わっている。
クウェートに輸出されたコンドル2装甲車は軍ではなく国家警備隊に配備され、車体前面にドーザー・ブレイドが取り付けられて国内の治安任務に用いられている。

またマレーシア軍のコンドル1装甲車は、1992年のソマリアPKOにも派遣されて現地で武装勢力と交戦しており、特に映画「ブラックホーク・ダウン」で有名になったモガディシオの戦闘においては、旧ソ連製のRPG-7携帯式無反動砲の直撃を受けて全損、乗車していた将兵は死亡する激しい戦闘を経験している。


<コンドル1装甲車 FVT900砲塔搭載型>

全長:    6.13m
全幅:    2.47m
全高:    2.79m
全備重量: 12.4t
乗員:    2名
兵員:    12名
エンジン:  ダイムラー・ベンツOM352A 4ストローク直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼルまたは
        ダイムラー・ベンツOM366LA 4ストローク直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 168hp/2,800rpmまたは204hp/2,600rpm
最大速度: 100km/h(浮航 10km/h)
航続距離: 900km
武装:    85口径20mm機関砲204GK×1 (220発)
        7.62mm機関銃×1 (500発)
装甲厚:


<参考文献>

・「パンツァー2014年4月号 あまり知られていないドイツ製装輪装甲車」 柘植優介 著  アルゴノート社
・「パンツァー2007年9/10月号 マレーシア第4機械化旅団の主力車輌」  アルゴノート社
・「パンツァー2005年7月号 海外ニュース」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2021〜2022」  アルゴノート社
・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904〜2000」  デルタ出版
・「世界の戦車パーフェクトBOOK」  コスミック出版
・「新・世界の装輪装甲車カタログ」  三修社
・「世界の装輪装甲車カタログ」  三修社
・「世界の軍用4WDカタログ」  三修社
・「世界の軍用4WD図鑑PART2」  スコラ


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