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試製10cm対戦車自走砲





●開発

試製10cm対戦車自走砲は、アメリカ軍のM4中戦車や将来登場するであろう敵の新型戦車に対抗するために、射距離1,000mにおいて200mm厚の装甲板を貫徹できる10cm対戦車砲を搭載した、対戦車任務を兼ねる自走砲として開発が計画されたものである。
第一陸軍技術研究所の最初の提案は1943年で、同年6月30日の陸軍軍需審議会幹事会を経て同年度の陸軍兵器行政本部研究計画に追加され、正式に開発が決定している。

本車は試製7.5cm対戦車自走砲(ナト車)と同じく、新型対戦車砲を開発するに当たって最初から自走式とすることを前提に車台の開発も並行して進められており、既存の車台を利用して牽引砲を後から自走化したタイプの自走砲とは開発コンセプトが異なる。
本車の主砲として開発された「試製10cm対戦車砲」(カト砲)は、試製五式砲戦車(ホリ車)の主砲である「試製10cm戦車砲(長)」(ホリ砲)と同じく口径105mmであったが、計画自体はあくまで対戦車砲として始まっている。

ただしカト砲は初期開発の段階ではホリ砲の設計をベースとし、ある程度の進捗が見えたところで対戦車砲へと派生させることになっていた。
カト砲の設計は1944年6月に終了し、終戦間際に大阪造兵廠における試作が完了したといわれる。
一方車台の方は、第四陸軍技術研究所の1944年度計画で四式中戦車(チト車)の車体をベースとすることが決まった。

計画の起案図によれば、転輪(チト車より1個多い片側8個)やサスペンション、エンジンはチト車と共通化されていたものの、限定的に装甲の施されたオープントップ式の車体やエンジン配置、主砲の搭載方法、防盾の形状など全体的にナト車をそのまま拡大したデザインになっていた。
主砲の搭載を含む車台の開発は、三菱重工業東京機器製作所に発注された。
終戦時には試作車体のエンジンが完成しており、車体は工程50%の状態まで作業が進んでいたという。


●攻撃力

本車の主砲として開発された「試製10cm対戦車砲」(カト砲)は、第一陸軍技術研究所がホリ車の主砲として開発した「試製10cm戦車砲(長)」(ホリ砲)から派生したものであり、1944年6月6日に設計が完了し1945年5月に大阪造兵廠にて2門の試作砲が完成した。
カト砲はホリ砲と同じく口径105mmで、薬室を含めた砲身長もホリ砲と同程度の55口径前後と推定される。

カト砲は弾頭重量16kgの砲弾を砲口初速900m/秒で撃ち出し、射距離1,000mで厚さ150mmの均質圧延装甲板を貫徹することが可能であった。
砲弾の重量は30kgもあり、砲尾の自動開閉装置と砲弾の半自動装填装置が付属した。
砲は限定旋回式で旋回角は左右各45度ずつ、俯仰角は−10〜+20度となっており、車内には砲弾45発が搭載されることになっていた。


●防御力

本車の装甲厚は前面25mm、側面20mm、上面12mmとかなり薄く、小火器弾の直撃や榴弾の破片に耐えるのがやっとであり、敵の戦車砲の直撃に耐えられる防御力は備えていなかった。
従って本車の運用法は、ドイツ軍のマルダーやナースホルンなどの対戦車自走砲と同様、強力な主砲の威力を活かして敵戦車をアウトレンジから撃破することが想定されていたと思われる。
なお本車の乗員は車長、砲手、操縦手、通信手、装填手2名の計6名が予定されていた。

本車の車内レイアウトは車体前部が機関室、車体中央部前寄りが操縦室、その後方が戦闘室となっており、車体中央部後方寄りに主砲が限定旋回式に搭載されていた。
操砲員を保護するため、主砲の前/側/上面は装甲板で構成された防盾で覆われていた。
主砲の射撃時には巨大な砲尾の後座するスペースと乗員の作業スペースを確保するため、戦闘室の側面装甲板を外側に90度倒せるようになっていた。


●機動力

本車に搭載される予定だったエンジンは、チト車用に開発された四式 4ストロークV型12気筒空冷ディーゼル・エンジン(最大出力412hp、排気量37.7リットル)である。
本車は巨大な主砲を搭載するためにチト車より車体が延長されており、転輪数もチト車より1個増やされて片側8個とされたが、チト車に比べて装甲がかなり薄いため戦闘重量はチト車と同程度の30tに収まった。
機動性能についてはチト車よりやや劣っており、路上最大速度は40km/hに留まった。


<試製10cm対戦車自走砲>

全長:    7.567m
車体長:   7.392m
全幅:    2.85m
全高:    2.85m
全備重量: 30.0t
乗員:    6名
エンジン:  四式 4ストロークV型12気筒空冷ディーゼル
最大出力: 412hp/1,800rpm
最大速度: 40km/h
航続距離:
武装:    試製55口径10cm対戦車砲×1 (45発)
装甲厚:   12〜25mm


<参考文献>

・「パンツァー2008年11月号 日本陸軍の対戦車自走砲」 高橋昇 著  アルゴノート社
・「日本軍兵器総覧(一) 帝国陸軍編 昭和十二年〜二十年」  デルタ出版
・「帝国陸海軍の戦闘用車両」  デルタ出版
・「戦車機甲部隊 栄光と挫折を味わった戦車隊の真実」  新人物往来社
・「日本軍戦闘車両大全 装軌および装甲車両のすべて」  大日本絵画
・「帝国陸軍 戦車と砲戦車」  学研


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