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K30「飛虎」(ビホ)対空自走砲





●開発

K30「飛虎」(ビホ)対空自走砲は、韓国陸軍がこれまで運用してきたK263対空自走砲(国産のKIFV歩兵戦闘車の車体に、アメリカ製のM163対空自走砲の武装システムを組み合わせたもの)が旧式化したため、その後継として国内開発された対空自走砲である。
K30対空自走砲の開発の中心となったのはKIFV歩兵戦闘車と同じく大宇重工業で、1983〜91年にかけて開発が行われたが、諸般の事情によりなかなか量産に移行されなかった。

そして大宇グループは、アジア通貨危機の影響で深刻な経営難に陥っていることが1990年代末に発覚し、韓国政府によるグループの解体が実施された。
大宇重工業については造船部門が大宇造船工業(現・大宇造船海洋)、陸上兵器開発を担っていた機械部門は大宇総合機械として2000年10月にそれぞれ分離されることになった。

開発から10年以上経った2002年になって、ようやく大宇総合機械の手でK30対空自走砲の量産が開始されたが、2005年に同社が斗山グループに買収されて斗山インフラコアに改組されたため、以降の生産は斗山インフラコアが引き継いだ。
K30対空自走砲の生産は2016年に終了しており、合計167両が韓国陸軍に引き渡された。

2013年12月には、30mm対空機関砲の後方に国産の「神弓」(シングン)携帯式対空ミサイルの連装発射機を取り付けた改良型のK30対空自走砲が開発され、2015年から量産が開始されている。
これは、地上攻撃ヘリコプターなどが装備する対戦車ミサイルの射程が向上したことで、K30対空自走砲が装備する30mm対空機関砲がアウトレンジされてしまう脅威に対処したものである。
「神弓」対空ミサイルを装備したことで、K30対空自走砲の交戦可能距離は7,000mまで拡大したという。


●構造

K30対空自走砲は開発・運用コストを低減させるため、前作のK263対空自走砲と同じくKIFV歩兵戦闘車の車体をベースとして開発された。
ただしK30対空自走砲の車体はKIFV歩兵戦闘車に比べて延長されており、それに伴って転輪数も1個増やされて片側6個となっている。

またK30対空自走砲は戦闘重量がK263対空自走砲の約2倍の25tに増加しているため、エンジンがドイツのMAN社製のD2840L V型10気筒液冷ディーゼル・エンジン(出力520hp)に強化されている。
この強化型エンジンと、アメリカのジェネラル・ダイナミクス・ランドシステムズ社製のHMPT-500-EK自動変速機(前進3段/後進1段)を組み合わせることで、K30対空自走砲は路上最大速度60km/hの機動性能を発揮することができ、韓国陸軍の主力MBTであるK1およびK2戦車に追随することが可能になっている。

武装は、K263対空自走砲が航空機用の76.2口径6砲身20mmヴァルカン砲の改修型を装備していたのに対し、K30対空自走砲はより射程と破壊力に優れる、スイスのエリコン・コントラヴェス社製の75口径30mm対空機関砲KCBをライセンス生産したKKCBを全周旋回式砲塔の左右に1門ずつ装備している。
KKCBの性能は発射速度600発/分、有効射程3,000mとなっている。

K30対空自走砲の武装システムは2門の30mm対空機関砲KKCB、TPS-830K監視・射撃統制レーダー、電子光学追尾システム(EOTS)、ディジタルFCS(射撃統制システム)などから構成されている。
砲塔の前部に搭載されているアメリカのレイセオン社製の全天候型EOTSは、TVカメラ、前方監視型赤外線装置(FLIR)、レーザー測遠機などを組み合わせており、これらのセンサーから得たデータはディジタルFCSの弾道コンピューターで処理され、30mm対空機関砲を目標に正確に指向する。

砲塔の後部に装備されているTPS-830KレーダーはXバンド(8〜12.5GHz)監視・射撃統制パルス・ドップラー・レーダーで、低空を飛行する航空機に対する利用に特化している。
このレーダーは2m2-RCSの目標を17kmの範囲から捜索することができ、目標の追尾識別距離は最大7kmとなっている。

特徴としてはリアルタイムの早期警戒、複数の目標を検出可能、サブシステムとしての一体型Lバンド(1〜2GHz)敵味方識別装置、パルス圧縮、周波数アジリティー機能、対チャフ対策としての移動目標表示への適応などがある。
レーダーは他の短距離防空システムのため、独立した監視装置として利用するために牽引式発電ユニット付きの5t 6輪トラックなど別の車両にも導入できる。

なお、日本の87式自走高射機関砲やドイツのゲーパルト対空自走砲は目標の捜索用と追尾用にそれぞれ独立したレーダーを備えており、それに比べるとK30対空自走砲は目標への対処能力がやや劣るのではないかと推測されるが、おそらく製造コストとの兼ね合いでレーダーを1基にしたものと思われる。
またK30対空自走砲は目標追尾用に高性能なEOTSを装備しているため、レーダーを2基装備する対空自走砲に比べてもさほど遜色ない性能を持つのかもしれない。

なおK30対空自走砲のEOTSは、TPS-830Kレーダーが動作不能だった場合にさらなる目標追尾能力を提供することでTPS-830Kレーダーを補うが、レーダー警報受信機を装備した航空機に対する奇襲効果を維持するために意図的にレーダーをオフにすることもある。


<K30「飛虎」(ビホ)対空自走砲>

全長:    6.77m
全幅:    3.30m
全高:    4.065m
全備重量: 25.0t
乗員:    4名
エンジン:  MAN-斗山 D2840L 4ストロークV型10気筒液冷ディーゼル
最大出力: 520hp
最大速度: 60km/h
航続距離: 500km
武装:    75口径30mm対空機関砲KKCB×2 (600発)
装甲厚:


<参考文献>

・「パンツァー2011年5月号 韓国の新鋭対空車輌 30mm自走高射機関砲K30飛虎と自走対空ミサイル天馬」
 アルゴノート社
・「パンツァー2014年12月号 韓国陸軍の編成と装備」 竹内修/SSN688/柘植優介 共著  アルゴノート社
・「パンツァー2013年8月号 K1戦車シリーズと韓国MBTの今後」 荒木雅也 著  アルゴノート社
・「パンツァー2007年1月号 新装備トピック 韓国陸軍のK30対空自走砲」  アルゴノート社
・「パンツァー2009年7月号 対空自走砲の歴史と現状」 坂本雅之 著  アルゴノート社
・「パンツァー2014年1月号 国軍パレードにおける韓国軍車輌」  アルゴノート社
・「パンツァー2018年1月号 ソウル ADEX2017」 布留川司 著  アルゴノート社
・「パンツァー2016年7月号 韓国々軍記念日の展示訓練」  アルゴノート社
・「パンツァー2012年6月号 韓国陸軍のK30対空自走砲」  アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート51 スカイスイーパー 対空自走砲」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2018〜2019」  アルゴノート社
・「グランドパワー2007年1月号 韓国の兵器展示会 ディフェンス・アジア2006」  ガリレオ出版
・「グランドパワー2010年4月号 韓国軍の戦闘車輌」 伊吹竜太郎 著  ガリレオ出版
・「世界の戦車パーフェクトBOOK」  コスミック出版
・「世界の装軌装甲車カタログ」  三修社


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