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K2「黒豹」戦車





●開発

K2「黒豹」(フクピョ)戦車は、韓国陸軍がK1戦車の後継として開発を進めている新型MBTで、2007年3月に初めて試作車が一般公開された。
前作のK1戦車は韓国にとって初めての国産MBTであったが、当時の国内メーカーはMBTを一から新規開発するには技術・経験が不足していたため、実際の開発作業はM1エイブラムズ戦車の開発を手掛けたアメリカのクライスラー・ディフェンス社(現ジェネラル・ダイナミクス・ランドシステムズ社)が中心となって行われた。

そして、現代精工(現・現代ロテム社)など国内メーカーの手で1984年からK1戦車の量産が開始され、国内メーカーはK1戦車の生産を通じて技術と経験を蓄積していった。
そしてMBTを国内開発するのに充分な基盤が整ったとして、K1戦車の後継MBT「XK2」を国内メーカーが中心となって開発することが1995年に決定された。

当時すでにK1戦車の改良型として、主砲をアメリカ製の44口径120mm滑腔砲M256のライセンス生産型であるKM256に換装し、装甲防御力も強化したK1A1戦車の開発が開始されていたが、K1戦車は120mm砲を搭載するには車体が小柄過ぎたため、K1A1戦車は砲塔内の作業スペースが狭く主砲の俯仰角も制限され、主砲弾薬がわずか32発しか搭載できないなど様々な問題点が露呈していた。
このため、最初から大口径砲を搭載できるよう設計されたMBTを新規開発する必要が生じたのである。

K2戦車の開発は現代ロテム社が中心となり、1998年から主要コンポーネントの試作が開始され、2003年には最初の試作車が完成した。
2005年にはモックアップが一般公開され、同年に増加試作車が完成したといわれる。
2007年には試作車が一般公開され、2008年の建国60周年記念パレードにも参加した。
K2戦車は当初600両の調達が計画されたが、後に予算の削減に伴って200両に縮小された。

生産型の量産は2011年に開始されることになっていたが、搭載する予定だった国産パワーパックの開発過程で様々なトラブルが発生したため、量産開始が大幅に遅れることとなった。
国産パワーパックの不具合は解決の見通しが立たなかったため、止むを得ずK2戦車の第1次生産分100両はドイツ製のユーロ・パワーパックを搭載して生産されることになり、第2次生産分100両には国産パワーパックを導入することになった。

K2戦車の第1次生産分は2014年6月から韓国陸軍への引き渡しが開始され、2014年中に35両の引き渡しが完了した模様である。
しかし国産パワーパックの不具合は現在も解決していないため、K2戦車の第2次生産分の引き渡しがいつになるかは不透明である。

またトルコ陸軍は、次期MBTを「アルタイ」(Altay)の名称でK2戦車をベースに韓国と共同開発することを2007年に決定し、現在開発作業を進めている。
しかし、アルタイ戦車に搭載する予定の韓国製パワーパックの開発が難航しているため、トルコ陸軍はアルタイ戦車に韓国製パワーパックを採用せず、別のパワーパックを海外メーカーと共同開発する方針に変更したようである。


●攻撃力

K2戦車の主砲は、ドイツのレオパルト2A6戦車に搭載されているラインメタル社製の55口径120mm滑腔砲Rh120-L55を、WIA(World Industries Ace)社でライセンス生産したものが採用されている。
当初は、ラインメタル社が新たに開発した140mm滑腔砲を搭載することが検討されたらしいが、仮想敵である北朝鮮軍のMBTに対抗するには120mm滑腔砲で充分と判断されたため、この砲が採用されたようである。

この砲に、フランスのルクレール戦車用の自動装填装置をベースにGIAT社(現ネクスター社)が開発したベルト給弾式の自動装填装置を組み合わせて搭載しており、装填手が不要となったため乗員は車長、砲手、操縦手の3名となっている。
この自動装填装置により、K2戦車は15発/分の速度で主砲を発射することが可能となっている。

K2戦車の主砲はラインメタル社製のDM53 APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)を使用した場合、砲口初速1,750m/秒、射距離2,000mで810mm厚のRHA(均質圧延装甲板)を貫徹することが可能で、西側MBTの戦車砲の中では最高の威力を備えている。
K2戦車の主砲弾薬は主にK279 APFSDSとK280/K277 HEAT-MP(多目的対戦車榴弾)が使用されるが、現在開発中である「KSTAM」(Korean Smart Top-Attack Munition)と呼ばれる誘導砲弾を使用することもできる。

KSTAMはミリ波レーダーを内蔵しており有効射程は2〜8kmで、戦車にとって大きな脅威である地上攻撃ヘリコプターに有効な攻撃を行えるだけでなく、装甲車両の弱点である車体上面や遮蔽物に隠れた歩兵へのトップアタックを行うことも可能である。

K2戦車はFCS(射撃統制システム)も高度なものを搭載しており、車長用には赤外線映像装置を内蔵したパノラマ式のサイトが装備されている。
砲手用には電子光学センサーとレーザー測遠機を備えたサイトが装備されており、捕捉した目標を自動追尾する機能も有している。

車長用と砲手用のサイトは連動しており、砲手が目標を攻撃している間に車長が次の目標を捜索・捕捉し、目標情報を砲手に渡すハンター・キラー的な運用が可能になっている。
またK2戦車は、最近MBTにとって必須の機能となりつつあるC4I(Command(指揮),Control(統制),Communications(通信),Computers(コンピューター),and Intelligence(情報))機能も持っており、慣性航法装置とGPS航法装置を連動させた車両間情報伝達システムや高度な敵味方識別システムを備えている。


●防御力

K2戦車の車体と砲塔はK1戦車と同じく圧延防弾鋼板の全溶接構造で、被弾確率の高い車体前面と砲塔の前/側面にはモジュール式の追加装甲が装着されている。
このモジュール装甲の下には、セラミックを封入した複合装甲が導入されている。
K2戦車の具体的な装甲防御力については不明であるが、セラミック系の複合装甲を採用していることからHEAT弾や対戦車ミサイル等のCE(化学エネルギー)弾に対する防御力はかなり高いと推測される。

K2戦車の砲塔の構造やモジュール装甲の形状はルクレール戦車のものに良く似ており、これはルクレール戦車を開発したGIAT社の技術協力によるものという推測もある。
砲塔上面にはトップアタック対策として、ERA(爆発反応装甲)が装着されている。
またK2戦車の砲塔には、ソフトキルタイプのAPS(アクティブ防御システム)が装備されている。

これは、ロシアのKBM(コロムナ機械製造設計局)の技術協力を受けてADD(Agency for Defense Development:国防科学研究所)と三星タレス社が共同開発したもので、砲塔の前後左右に4基設けられたレーザー検知機で対戦車ミサイルや誘導砲弾の誘導用レーザーを感知した際に、砲塔上面後部に装備されている8連装のランチャーから電子撹乱物質などの弾体を発射して誘導を妨害するようになっていると推測される。
またK2戦車の砲塔にはもう1つ、ハードキルタイプのAPSも装備される予定であった。

これは、KBMが開発した「アレーナ」(Arena:円形競技場)システムをさらに改良したものと喧伝されたが、予算の都合やソフトキルAPSとの相互干渉等の問題で搭載が見送られた。
ちなみに「アレーナ」APSは、砲塔に装備されたAPSレーダーが自車に向かってくる対戦車ミサイルや砲弾を感知した際に、有効射程に入った段階で砲塔に26基装備された擲弾発射機の内、適切な方向の擲弾発射機から自動的に迎撃用擲弾を発射してこれらを撃墜するシステムである。


●機動力

K2戦車の足周りはK1戦車と同様に前方の誘導輪、後方の起動輪と片側6個の複列式転輪で構成されている。
サスペンションは、K1戦車が油気圧式サスペンションとトーションバーで3軸ずつ懸架するハイブリッド方式だったのに対し、K2戦車はS&T大宇社が開発した油気圧式サスペンションで全軸が懸架されている。
K1戦車は油気圧式サスペンションを伸縮させて車体の前後方向の姿勢制御を行うことが可能だったが、K2戦車では前後方向に加えて左右方向の姿勢制御を行うことも可能になっている。

これはK2戦車以外では、日本の74式戦車と10式戦車しか実装していない機能である。
K2戦車のパワーパックは、試作車ではドイツのMTU社製のMT883Ka-501A V型12気筒多燃料液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力1,500hp)と、レンク社製のHSWL295自動変速機(前進5段/後進3段)を組み合わせたユーロ・パワーパックが搭載されたが、生産型では斗山インフラコア社、S&T大宇社、ADDが共同開発した国産のパワーパックを搭載することになっている。

しかし現在、この国産パワーパックは主に素材の強度不足が原因で予定された性能を発揮できていないらしく、これがK2戦車の量産が大幅に遅れている原因となっている。
韓国陸軍は止むを得ず、K2戦車の第1次生産分には試作車と同じユーロ・パワーパックを搭載して量産に踏み切ったが、このまま国産パワーパックの不具合が解決しなければ、残りの生産分も全てユーロ・パワーパックを採用することになるかも知れない。


<K2戦車>

全長:    10.0m
車体長:   7.5m
全幅:    3.6m
全高:    2.5m
全備重量: 55.0t
乗員:    3名
エンジン:  MTU MT883Ka-501A 4ストロークV型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 1,500hp/2,700rpm
最大速度: 70km/h
航続距離: 430km
武装:    55口径120mm滑腔砲Rh120-L55×1 (40発)
        12.7mm重機関銃K6×1 (3,200発)
        7.62mm機関銃M60×1 (12,000発)
装甲:    複合装甲


<参考文献>

・「パンツァー2015年2月号 「韓国国防白書2014年」では読み解けない国産戦車K2”斗山型”の前途多難」
 アルゴノート社
・「パンツァー2015年6月号 韓国の新鋭国産MBT K2戦車の最新情報」 竹内修 著  アルゴノート社
・「パンツァー2013年8月号 K1戦車シリーズと韓国MBTの今後」 荒木雅也 著  アルゴノート社
・「パンツァー2006年4月号 韓国陸軍 K1戦車の開発と発展」 三鷹聡 著  アルゴノート社
・「パンツァー2009年7月号 韓国の新MBT K2戦車」 前河原雄太 著  アルゴノート社
・「パンツァー2009年9月号 韓国の最新型MBT K2戦車」 三鷹聡 著  アルゴノート社
・「パンツァー2016年5月号 韓国第11/20師団 K2戦車の射撃訓練」  アルゴノート社
・「パンツァー2012年8月号 10式と各国MBTの通信簿」 竹内修 著  アルゴノート社
・「パンツァー2014年11月号 韓国K2戦車 いよいよ部隊配備か」  アルゴノート社
・「パンツァー2006年2月号 トピック 韓国陸軍の次期MBT K2」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2018〜2019」  アルゴノート社
・「グランドパワー2010年6月号 韓国のK2主力戦車」 高松武彦 著  ガリレオ出版
・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」  洋泉社
・「世界の戦車完全図鑑」  コスミック出版
・「新・世界の主力戦車カタログ」  三修社


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