ISU-122重駆逐戦車
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+概要
チェリャビンスクに疎開していた第100キーロフ工場では、KV重戦車の後継となる新型重戦車ISの開発と、このIS重戦車が実用化されるまでの繋ぎとしてKV-85重戦車の生産を行っていたが、同工場に置かれた第2特別設計局(SKB-2)はIS重戦車の開発を1943年11月に完了した。
戦車生産委員会は引き続きIS重戦車の車体を流用して、28.8口径152mm加農榴弾砲ML-20Sを限定旋回式に装備する火力支援自走砲を、「ISU-152」の呼称で開発するようSKB-2に命じた。
さらに、このISU-152重突撃砲の車体と戦闘室をそのまま用いて、122mm野戦加農砲M1931/37を車載用とした46.3口径122mm加農砲A-19を限定旋回式に装備する駆逐戦車型への発展を指示し、その具現化として登場したのがISU-122重駆逐戦車(オブイェークト242)である。
ISU-122重駆逐戦車の戦闘室はISU-152重突撃砲と全く同じものがそのまま流用され、主砲を換装しただけである。
併せて、戦闘室内の主砲弾薬ケースが122mm砲弾専用のものに改められている。
主砲の122mm加農砲A-19は弾頭重量25kgのBR-471徹甲弾を使用した場合、砲口初速780m/秒、射距離1,000mで161mmのRHA(均質圧延装甲板)を貫徹可能であった。
しかし尾栓が隔螺式のために、発射速度が1.5〜2発/分と遅いのが欠点であった。
ISU-122重駆逐戦車は、122mm戦車砲D-25T(元々A-19の改修型)を全周旋回式砲塔に搭載するIS重戦車の車体に、なぜ122mm加農砲A-19を限定旋回式に搭載するのかと、存在理由が謎とされていたことがある。
しかし、開発当初のIS重戦車は85mm戦車砲搭載を予定していたこと、および、152mm加農榴弾砲ML-20と共用できる砲架を用いた122mm加農砲A-19の砲身生産に余力があったこと等の事情により、強力な搭載砲を持つ重自走砲を1両でも多くとの前線の希望に沿うために、ISU-122重駆逐戦車が開発されたというのが真相である。
ISU-122重駆逐戦車の生産は1943年末に開始され、1944年に入り122mm戦車砲D-25T搭載のIS-2重戦車の量産が開始された後になっても本車の量産は継続され、ISU-152重突撃砲と合計で独ソ戦終結までに4,075両が生産された(両型の内訳は不明)。
そしてISU-152重突撃砲と同じく、当初は軍団直轄独立重自走砲連隊(21両)、1944年11月からは戦車軍直轄独立重自走砲旅団(65両)に編制され、ドイツ本国への反攻で活躍した。
ISU-122重駆逐戦車は、ISU-152重突撃砲と比べてより明確に対戦車任務に重きを置いて運用された。
例えば、独ソ戦末期のソ連戦車軍は独立重自走砲旅団数個を持っていたが、堅固な防御拠点攻撃にはISU-152編制旅団を、そして機甲部隊の反撃が予想される戦線側面にはISU-122編制旅団を、その他の特別戦車駆逐旅団(各種の対戦車砲兵多数で編制)と共に配置するといった具合であった。
この運用によりソ連軍は、強力な戦車(パンター中戦車やティーガーII重戦車等)を先頭としたドイツ軍機甲部隊の反撃を幾度か粉砕することに成功している。
こうした対戦車戦闘においてISU-122重駆逐戦車の、弾頭重量25kgの凄まじいエネルギーを持つ徹甲弾を発射する低伸性が良い122mm加農砲の威力は絶大だった。
重量25kgの徹甲弾が命中した場合、ティーガーII重戦車でも装甲内面が剥離して吹き飛んだり、砲塔が旋回不能になる等大損害が避けられなかった。
その上、IS重戦車とは異なり装填手2名が配置されているため、発射速度が早いのも特徴であった。
さらにISU-122重駆逐戦車の主砲を、新開発の60口径122mm加農砲BL-7に換装して火力の強化を図ったSU-122BM重駆逐戦車(オブイェークト243)も1944年に試作されたが、結局採用には至らなかった。
1945年からは、ISU-122重駆逐戦車の主砲をIS重戦車と共用の43口径122mm対戦車砲D-25Sに変更した、改良型のISU-122S重駆逐戦車(オブイェークト249)が生産された。
122mm対戦車砲D-25Sは鎖栓式の尾栓を採用しており、発射速度が3発/分に向上した。
砲身先端には二重作動式の砲口制退機が標準装備され、発砲時の後座量も低減されている。
また、ISU-122S重駆逐戦車では防盾周りの形状もリファインされ、SU-85駆逐戦車などと同型式のボールマウント式防盾となった。
ISU-122S重駆逐戦車の生産は戦後間もなく終了したが、1947年に再開された。
1947〜52年にかけて、およそ3,130両のISU-122S重駆逐戦車が生産されている。
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<ISU-122重駆逐戦車>
全長: 9.85m
車体長: 6.77m
全幅: 3.07m
全高: 2.48m
全備重量: 45.5t
乗員: 5名
エンジン: V-2-IS 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル
最大出力: 600hp/2,000rpm
最大速度: 37km/h
航続距離: 150km
武装: 46.3口径122mm加農砲A-19×1 (30発)
12.7mm重機関銃DShK×1 (500発)
装甲厚: 20〜90mm
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<ISU-122S重駆逐戦車>
全長: 9.85m
車体長: 6.77m
全幅: 3.07m
全高: 2.48m
全備重量: 45.5t
乗員: 5名
エンジン: V-2-IS 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル
最大出力: 600hp/2,000rpm
最大速度: 37km/h
航続距離: 150km
武装: 43口径122mm対戦車砲D-25S×1 (30発)
12.7mm重機関銃DShK×1 (500発)
装甲厚: 20〜100mm
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<ISU-122BM重駆逐戦車>
全長:
車体長: 6.77m
全幅: 3.07m
全高: 2.48m
全備重量: 47.0t
乗員: 5名
エンジン: V-2-IS 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル
最大出力: 600hp/2,000rpm
最大速度: 34km/h
航続距離: 150km
武装: 60口径122mm加農砲BL-7×1 (30発)
12.7mm重機関銃DShK×1 (500発)
装甲厚: 20〜90mm
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兵器諸元(ISU-122重駆逐戦車)
兵器諸元(ISU-122E重駆逐戦車)
兵器諸元(ISU-122BM重駆逐戦車)
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<参考文献>
・「世界の戦車イラストレイテッド2 IS-2スターリン重戦車 1944〜1973」 スティーヴン・ザロガ 著 大日本絵画
・「パンツァー2014年11月号 歴代戦車砲ベストテン」 荒木雅也/久米幸雄/三鷹聡 共著 アルゴノート社
・「パンツァー2001年2月号 ソ連・ロシア自走砲史(5) ISU-152/ISU-122」 古是三春 著 アルゴノート社
・「パンツァー2009年9月号 ISU重自走砲とソビエトの重車輌開発事情」 佐藤慎ノ亮 著 アルゴノート社
・「パンツァー2001年7月号 AFV比較論 ISU-122/ヤークトティーガー」 白石光 著 アルゴノート社
・「パンツァー2006年11月号 ベルリンに入る赤軍機甲部隊」 佐藤慎ノ亮 著 アルゴノート社
・「パンツァー2003年6月号 ロシアAFV インアクション」 三崎道夫 著 アルゴノート社
・「グランドパワー2013年3月号 ソ連軍重自走砲(2)」 斎木伸生 著 ガリレオ出版
・「ソビエト・ロシア戦闘車輌大系(上)」 古是三春 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー2001年12月号 ソ連軍自走砲(1)」 古是三春 著 デルタ出版
・「世界の軍用車輌(1) 装軌式自走砲:1917〜1945」 デルタ出版
・「異形戦車ものしり大百科 ビジュアル戦車発達史」 斎木伸生 著 光人社
・「図解・ソ連戦車軍団」 斎木伸生 著 並木書房
・「戦車名鑑 1939〜45」 コーエー
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