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FV102ストライカー自走対戦車ミサイル





FV102ストライカーは、アルヴィス社がFV103スパータン装甲兵員輸送車をベースとしてスウィングファイア対戦車誘導ミサイル・システムを搭載した簡易型対戦車車両で、1976年から部隊配備が開始されている。
スウィングファイア対戦車ミサイルは、1969年にイギリス陸軍への配備が始められた第2世代の対戦車ミサイルで、同時期に開発、実戦化されたTOW対戦車ミサイルやHOT対戦車ミサイルと比べると、イギリス独自の発想が見られる。

まず第1世代の対戦車ミサイルと同じく有線誘導方式を採用しているが、これは発射機と誘導装置を最大75mまで離して射撃と誘導を行うために採用されたものである。
これは「スウィングファイア」(Swingfire)の名称の由来にもなった、発射直後自動的に大きく向きを変えて誘導員の照準装置で捉え易くするという他に例を見ない方式を採ることで、発射地点を発見されることを避けるのがそのメリットであり、いかにもイギリスらしい発想といえよう。

さらに弾頭重量が7kgと大きいことで、当然ながらこれは装甲貫徹力の強化を図ったものであるが、このために発射重量は28kgとこれまた大きく、車載型として使用することが当初から考えられていたことを暗示しており、最大有効射程も4,000mとこれまた大きい。
車載化にあたっては、スパータン装甲兵員輸送車の車体をベースとして車体上部構造を一部変更することで、車体後部上面にスウィングファイア対戦車ミサイル5発を収容する箱型の発射機を装備している。

このミサイル発射機は発射時には後方を支点として40度前後の仰角が与えられ、車体には左右55度まで振ることが可能なミサイル操作員用の熱線映像式照準機が装着されており、夜間および全天候下での戦闘能力を備えている。
この照準機は1倍と10倍に切り換えることができるが、前述のようにスウィングファイア対戦車ミサイルの特性を考えると、照準機自体の旋回はあまり必要性が無いものと思われる。

もちろん必要に応じて操作員は誘導装置を持って、車体から離れた位置で発射と誘導を行うことが可能である。
車体前部右側にはパワーパックが、前部左側には操縦手がそれぞれ配されており、その後方にあたる車体中央部左側に車長が、右側にミサイル操作員が位置している。
操縦手にはハッチが、車長にはキューポラが備えられ、キューポラの左側にあたる車体上面に車内からの操作が可能な7.62mm機関銃GPMGを自衛用として装備する。

車内には予備ミサイル5発が収容されているが、再装填に際しては車外に出て操作を行う必要がある。
なおイギリス陸軍のFV102ストライカーは1990年から、「ACLOS」(Automatic-to-Command Line-of-Sight:自動指令照準線誘導)と呼ばれる新型のミサイル誘導装置への換装作業が開始され、目標に対する自動誘導を可能としている。
この換装作業は、1996年末までに全て完了している。


<FV102ストライカー自走対戦車ミサイル>

全長:    4.826m
全幅:    2.28m
全高:    2.28m
全備重量: 8.346t
乗員:    3名
エンジン:  ジャギュアJ60 No.1 Mk.100B 直列6気筒液冷ガソリン
最大出力: 190hp/4,750rpm
最大速度: 80.5km/h
航続距離: 483km
武装:    スウィングファイア対戦車ミサイル5連装発射機×1 (10発)
        7.62mm機関銃GPMG×1 (3,000発)
装甲厚:


<参考文献>

・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」  デルタ出版
・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著  三修社
・「世界の装軌装甲車カタログ」  三修社
・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著  グランプリ出版
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「世界のAFV 2018〜2019」  アルゴノート社
・「世界の最新陸上兵器 300」  成美堂出版


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