第2次世界大戦の進展に伴いイギリス陸軍ではハンバー装甲車の需要が増大していったが、同車の生産を担っていたハンバー社の生産能力では必要数を供給することができなかった。 そこでイギリス陸軍は、アメリカのジェネラル・モーターズ社の子会社であるカナダのGMカナダ社に対してハンバー装甲車のノックダウン生産を行うよう要請した。 ただしこれはハンバー装甲車をそのままノックダウン生産することを求めたのではなく、足周りや動力系統に関してはGMカナダ社に一任するというものだった。 GMカナダ社の設計陣は新型装甲車の開発にあたって、同社製のCMP(Canadian Military Pattern:カナダ軍用型)トラックのシャシーに、ハンバー装甲車の装甲ボディと砲塔を組み合わせた折衷型として開発する方針を採った。 ちなみにCMPトラックはイギリス軍の規格に合わせてカナダ軍向けに開発された軍用トラックであり、GMカナダ社製とフォード・カナダ社製の2種類が存在し細部の仕様が異なっていた。 こうして誕生した「フォックス」(Fox:狐)装甲車は、 装甲ボディと砲塔はハンバーMk.III装甲車と同じものが用いられたため外観上はオリジナルと識別し辛かった。 性能面でも、武装がアメリカのブラウニング社製の12.7mm重機関銃M2と7.62mm機関銃M1919A4の組み合わせに変更された点と、路上航続距離が250kmと短くなった点が目立つ程度で大差無かった。 ただしリアの操向機構に関しては欠陥を抱えており、度々不具合が生じていたようである。 フォックス装甲車は終戦までに1,506両が完成し、北西ヨーロッパに展開する部隊に配備された。 第一線から退いた後は、オランダやポルトガルなどへ輸出されている。 |
<フォックス装甲車> 全長: 4.60m 全幅: 2.30m 全高: 2.40m 全備重量: 8.0t 乗員: 4名 エンジン: GMC 270 直列6気筒液冷ガソリン 最大出力: 106hp 最大速度: 71km/h 航続距離: 250km 武装: 12.7mm重機関銃M2×1 7.62mm機関銃M1919A4×1 装甲厚: 最大15mm |
<参考文献> ・「パンツァー2012年10月号 第二次大戦におけるイギリス軍装甲車の系譜(1) 装甲戦闘車」 久米幸雄 著 アルゴノート社 ・「アメリカ・イギリス陸軍兵器集 Vol.2 装甲戦闘車輌」 ガリレオ出版 ・「第2次大戦 イギリス・アメリカ軍戦車」 デルタ出版 |