HOME研究室(第2次世界大戦後〜現代編)対空自走砲対空自走砲(イギリス)>ファルコン対空自走砲


ファルコン対空自走砲





「ファルコン」(Falcon:ハヤブサ)対空自走砲は、どうしても高価になり易い対空自走砲を安価で提供しようという意図の下に、ヴィッカーズ社が自社資金で開発した対空自走砲である。
本車の開発は1960年代末に開始され、1970年に試作第1号車が完成した。
開発コストを低減するため、ファルコン対空自走砲の車体は当時ヴィッカーズ社がイギリス陸軍向けに生産を行っていたFV433「アボット」(Abbot:大司教)105mm自走榴弾砲のものが流用されていた。

試作第1号車の車体はオリジナルのアボット自走榴弾砲のものが用いられていたが、続いて製作された試作第2号車の車体は「ヴァリュー・エンジニアド・アボット」と呼ばれる改良型車体が用いられた。
射撃時の安定性を高めるため、サスペンションにはロック機構が追加されていた。
ファルコン対空自走砲の武装は、2名用の全周旋回式砲塔にフランスのイスパノ・スイザ社製の75口径30mm対空機関砲HSS831Lを連装で装備していた。

砲は−5〜+85度の俯仰角を有し、最大射程は3,000mとなっていた。
弾薬はHEI(焼夷榴弾)、SAPHEI(半徹甲焼夷榴弾)、APDS(装弾筒付徹甲弾)が用いられ、各種弾薬合わせて1門当たり310発がベルトにより給弾され、20発/秒のバースト射撃を20回行うことが可能であった。
また弾薬はFV721「フォックス」(Fox:狐)装甲偵察車や、FV107「シミター」(Scimitar:三日月刀)装甲偵察車などが装備している81.3口径30mmラーデン砲L21と互換性があり、対空・対地両任務に用いることが可能であった。

砲塔内には右側に車長、左側に砲手が位置しており、砲手は光学照準機を用いて目標を捕捉し、弾道コンピューターを介して見越し射撃角が自動的に計算されて、照準機に表示することで命中精度を高めていた。
ヴィッカーズ社はファルコンを、「安価に調達できる対空自走砲」という触れ込みでイギリス陸軍や海外に対して積極的に売り込んだが、当時すでに対空自走砲はレーダーを装備するのが当然になってきており、光学照準機しか装備していないファルコンは、いくら安くても性能的に時代遅れという理由でどこからも採用されずに終わった。


<参考文献>

・「パンツァー2000年3月号 イギリス陸軍の105mm自走砲アボット」  アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート51 スカイスイーパー 対空自走砲」  アルゴノート社


HOME研究室(第2次世界大戦後〜現代編)対空自走砲対空自走砲(イギリス)>ファルコン対空自走砲