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クロタル対空ミサイル・システム


●クロタル対空ミサイル・システム




「クロタル」(Crotale:ガラガラヘビ)は、南アフリカからの要求でトムソンCSF社(現タレス社)と、マトラ社(現MBDA社)が共同開発した地上発射および艦上発射の対空ミサイル・システムである。
南アフリカが85%、フランスが15%の資金を出して1964年から開発が始まり、1971年に南アフリカ軍に配備された。
同年にフランス空軍にも採用され、1972年には海軍ヴァージョンの開発も始まった。

さらに、「シャヒネ」(Shahine)と呼ばれるクロタルの輸出ヴァージョンの開発も1975年に始まった。
シャヒネの開発はサウジアラビアが全額出資し、クロタルに多くの改良を施した。
この対空ミサイル・システムは、1980年にはサウジアラビア軍に配備された。
1977年にフランス空軍はクロタル中隊を創設し、作戦配備に就いた。

1980年には、フランス海軍でもクロタルが配備された。
使用するミサイルはマトラ社が開発したもので地上発射型が「R.440」、艦上発射型が「R.440N」と呼ばれる。
このミサイルは地上発射型なら高度15~5,500mまでを飛行する攻撃ヘリ、地上攻撃機、ミサイルの迎撃、艦上発射型なら海面スレスレに飛行するシー・スキミング・ミサイルを撃墜することが可能である。

R.440対空ミサイルは全長2.89m、直径0.15m、発射重量85kg、最大飛翔速度マッハ2.3、最大有効射程10,000m、固体燃料式で誘導は指令誘導式である。
ミサイル・システムは自己完結したターレット式になっており、様々な車体に搭載可能である。
システムは通常、左右にコンテナを兼ねたミサイル発射機を2基ずつ装備する全周旋回式ターレットを搭載する射撃ユニット車2~3両と、捜索レーダーを搭載する捜索ユニット車1両で構成され、これが1個小隊の編制となる。


●クロタルNG対空ミサイル・システム




1985年には、アメリカ陸軍の「FAADS」(Forward Area Air-Defense System:前線防空システム)計画に応募するために、発展型の「クロタルNG」(Nouvelle Génération:新世代)の開発が開始された。
プロトタイプ・システムは1988年に完成し、1989年から試験生産が開始された。
名前こそ「クロタル」のままだが、誘導方式はもちろんのこと射程や飛翔速度など大きく向上が図られており、さらにはシステム自体も小型化されて、装備ミサイル数も4発から8発に増える等全くの別物といえる。

ミサイルは新開発の「VT-1」と呼ばれるタイプを使用しており、最大飛翔速度マッハ3.6、有効射程500~11,000m、有効射高15~6,000mとなっている。
クロタルNGは1988年にフィンランド軍に採用され、フィンランド国産のXA-180装輪式装甲車に搭載された。
その他オランダ、フランス、タイ、シンガポール、ギリシャ空軍が基地防衛用に採用している。


<R.440対空ミサイル>

全長:       2.89m
直径:       0.15m
発射重量:    85kg
最大飛翔速度: マッハ2.3
誘導方式:    指令誘導
最大有効射程: 10,000m
最大有効射高: 5,500m


<VT-1対空ミサイル>

全長:       2.29m
直径:       0.165m
発射重量:    73kg
最大飛翔速度: マッハ3.6
誘導方式:    指令誘導
最大有効射程: 11,000m
最大有効射高: 6,000m


<参考文献>

・「グランドパワー2020年10月号 フィンランド軍の戦闘車輌(1)」 齋木伸生 著  ガリレオ出版
・「大図解 世界のミサイル・ロケット兵器」 坂本明 著  グリーンアロー出版社
・「パンツァー1999年10月号 新装備トピックス」  アルゴノート社
・「パンツァー2001年9月号 海外ニュース」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2021~2022」  アルゴノート社
・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著  三修社
・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著  グランプリ出版
・「最新陸上兵器図鑑 21世紀兵器体系」  学研
・「戦車名鑑 1946~2002 現用編」  コーエー
・「ミサイル事典」 小都元 著  新紀元社


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