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チーフテン戦車





チーフテン戦車は、センチュリオン中戦車とコンカラー重戦車を1車種で統合する新型MBTとして開発され、1960年代に配備されたMBTの中では最高の火力と防御力を備えていた車両である。
本車の開発は1950年代の初めに計画され1954年までには重量最大50t、主砲は120mmライフル砲、傾斜装甲を持つ低い車体、エンジンにはコンパクトなV型8気筒液冷ディーゼル・エンジンを使用するという基本案がまとまり、「FV4201」の試作名称で設計作業がレイランド・モータース社で行われることになった。

FV4201戦車の車体と砲塔は、それまでのイギリス戦車とは異なる斬新なスタイルに設計されていた。
車体を低くかつ前面を滑らかに傾斜させるために操縦手席は大きくリクラインさせられており、砲塔形状は避弾経始を考慮して前部を傾斜の付いた鋭い尖った形にされていた。
足周りについては、センチュリオン中戦車で良い結果の出たホルストマン式サスペンションが引き続き使用された。

1956年、レイランド社はセンチュリオン中戦車をベースに「FV4202」と呼ばれる走行試験用車両を製作した。
続いて1957年に、NATOの協定に基づく新型多燃料液冷ディーゼル・エンジンをレイランド社が開発した。
1958年にはこの新型MBTの最終仕様が決定され、実物大のモックアップが1959年の初めに完成した。
また設計はこの時までに、レイランド社からヴィッカーズ・アームストロング社に引き継がれた。

1959年末、FV4201戦車の最初の走行用試作車(無砲塔)が完成した。
さらに1961年7月〜1962年4月にかけて砲塔付き試作車が6両イギリス陸軍に納入され、1962年5月から各種試験が実施された。
そして1963年5月から生産型の量産が開始され、「チーフテン」(Chieftain:族長)Mk.1戦車として制式化された。

チーフテン戦車は早急な実戦化が求められたため、レイランド社の他ヴィッカーズ社と王立造兵廠でも生産が行われ、1970年初めまでに900両近くが完成した。
チーフテン戦車の最大の特徴は、その強力な主砲であった。
王立造兵廠が開発したこの55口径120mmライフル砲L11は最初の1分間の発射速度が平均10発で、次の4分間に6発発射できた。

発射する砲弾の種類は主として戦車など装甲目標に使われるAPDS(装弾筒付徹甲弾)と、軽装甲目標や建築物などに使われるHESH(粘着榴弾)で、これらは他国の戦車の主砲弾が弾頭と装薬が一体となった固定弾であったのに対して、装薬が別体となった分離方式を採用していた。
チーフテン戦車はAPDSを使用した場合、最大4,000mの距離で当時東欧諸国が装備していたT-55、T-62中戦車などのソ連製MBTを撃破することができた。

このためソ連軍は西側諸国の戦後第2世代MBTの中でチーフテン戦車を最も脅威に感じており、これに対抗するために125mm滑腔砲を装備するT-64、T-72戦車シリーズを開発することとなった。
またチーフテン戦車は機動力を犠牲にして重装甲を採り入れており装甲厚は車体前面で150mmに達し、車体・砲塔共に当時のMBTとしてはトップクラスの装甲防御力を誇っていた。
車体と砲塔の前部は鋳鋼製となっていたが、これは西側の戦後型MBTとしては珍しい部類に入る。

搭載するエンジンはレイランド社製のL60 水平対向6気筒多燃料液冷ディーゼル・エンジンで、1気筒の中に2個のピストンが対向して入る複雑な形式であったが、戦闘重量が50tを超えるチーフテン戦車のエンジンとしては出力不足の感があったことは否めない。
このL60ディーゼル・エンジンは、第2次世界大戦中にドイツのユンカース社が開発したユモ205/207航空機用水平対向6気筒空冷ディーゼル・エンジンを参考にして開発された。

また寒冷状態での始動のために、コヴェントリー・クライマクス社製のH30 直列3気筒補助ディーゼル・エンジンも装備されていた。
最初の生産型であるチーフテンMk.1戦車は先行生産型として40両が完成したもので、エンジンは出力585hpとやや低出力のものが用いられていた。
続いて1966年に登場したチーフテンMk.2戦車は、出力650hpのエンジンに換装した最初の本格量産型である。

1969年に登場したチーフテンMk.3戦車はサスペンションやエンジンなどに改良が加えられ、装備の違いによりMk.3/2、Mk.3/3、イラン向けのMk.3/3(P)が存在した。
1970年に登場したチーフテンMk.5戦車はエンジン出力が750hpに強化され、新型変速機など多くの部分に改良が盛り込まれていた。
イラン向けのMk.5/5(P)と、クウェート向けのMk.5/5(K)も生産された。

チーフテンMk.6戦車はMk.2のエンジンを750hpに強化したもので、チーフテンMk.7戦車はMk.3にMk.6と同じ改造を施したものである。
チーフテンMk.8戦車は、Mk.3/3に対してMk.6に準じる改造を行ったものである。
チーフテンMk.9戦車は、Mk.6のFCS(射撃統制システム)を改良型に換装したものである。
チーフテンMk.10戦車は、Mk.7に改良型FCSを装備した車両である。

チーフテンMk.11戦車はMk.8に対して改良型FCSとNBC防護装置を装備したもので、チーフテンMk.12戦車は同様の改修をMk.5に対して実施した車両である。
なお1986年にはイギリス・ライン派遣軍に所属するチーフテンMk.11およびMk.12戦車に対して、砲塔前部と操縦手席周囲に増加装甲の装着が行われている。


<チーフテンMk.3戦車>

全長:    10.795m
車体長:   7.518m
全幅:    3.657m
全高:    2.895m
全備重量: 54.1t
乗員:    4名
エンジン:  レイランドL60Mk.7A 2ストローク水平対向6気筒液冷ディーゼル
最大出力: 720hp/2,100rpm
最大速度: 48.28km/h
航続距離: 402km
武装:    55口径120mmライフル砲L11A1またはL11A3×1 (53発)
        12.7mm標定銃L21A1×1 (600発)
        7.62mm機関銃L8A1×1 (6,000発)
        7.62mm機関銃L37A1×1
装甲厚:   最大150mm


<チーフテンMk.5戦車>

全長:    10.795m
車体長:   7.518m
全幅:    3.657m
全高:    2.895m
全備重量: 55.0t
乗員:    4名
エンジン:  レイランドL60Mk.8A 2ストローク水平対向6気筒液冷ディーゼル
最大出力: 750hp/2,100rpm
最大速度: 48.28km/h
航続距離: 402km
武装:    55口径120mmライフル砲L11A5×1 (64発)
        12.7mm標定銃L21A1×1 (300発)
        7.62mm機関銃L8A1×1 (6,000発)
        7.62mm機関銃L37A1×1
装甲厚:   最大150mm


<参考文献>

・「パンツァー2006年11月号 回想のイギリスMBT チーフテン」 竹内修 著  アルゴノート社
・「パンツァー2005年5月号 チーフテン戦車 インアクション」 中川未央 著  アルゴノート社
・「パンツァー2007年3月号 チーフテン戦車の開発と構造」 竹内修 著  アルゴノート社
・「パンツァー2003年3月号 チャレンジャー2戦車」 斎木伸生 著  アルゴノート社
・「パンツァー2008年11月号 増加装甲を付けた前世代のMBT」  アルゴノート社
・「パンツァー2017年10月号 イギリスMBTの系譜」 竹内修 著  アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート9 レオパルト1と第二世代MBT」  アルゴノート社
・「世界AFV年鑑 2005〜2006」  アルゴノート社
・「グランドパワー2014年10月号 チーフテン主力戦車」 後藤仁 著  ガリレオ出版
・「世界の戦車(2) 第2次世界大戦後〜現代編」  デルタ出版
・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著  三修社
・「新・世界の主力戦車カタログ」  三修社
・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」  洋泉社
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「世界の最新陸上兵器 300」  成美堂出版


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