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M48シャパラル対空ミサイル・システム





M48「シャパラル」(Chaparral:低木の茂み)は、1968年にアメリカ陸軍への配備が開始された対空ミサイル・システムで、同時期に開発されたM163対空自走砲と並んで、1990年代までアメリカ陸軍機甲師団の主力防空兵器として運用が続けられた。
1980年代末から後継のアヴェンジャー対空ミサイル・システムの配備が開始されたことに伴い、1998年までに全システムがアメリカ陸軍から退役している。

M48シャパラルとM163対空自走砲は、いずれもM113装甲兵員輸送車の車体をベースとした防空兵器であるが、M163対空自走砲が武装として20mmヴァルカン砲を装備しているのに対し、M48シャパラルはより射程が長い対空ミサイルを装備しているのが最大の相違点となっている。
M48シャパラルが装備するMIM-72対空ミサイルは、アメリカ海軍が1950年代にレイセオン社と協力して開発にあたった、AIM-9「サイドワインダー」(Sidewinder:ヨコバイガラガラヘビ)空対空ミサイルをベースとしている。

本システムの開発はアメリカ陸軍が1965年初めに、フィルコ・フォード社(現フォード・エアロスペース社)のエアロニュートロニクス部門に対して、AIM-9Dサイドワインダー1C空対空ミサイルの車載型の開発を要求したことから始まった。
同年夏には試作ユニットによる試験が開始され、1966年4月から「MIM-72A」の制式呼称でミサイルの生産が開始された。

車載化に際しては、M113装甲兵員輸送車から発展したM548装甲貨物運搬車がベース車体として用いられているが、ミサイルの搭載にあたってキャブは新設計のものに変わり、荷台も専用のタイプに改められており「M730」に呼称が変更されている。
MIM-72A対空ミサイルはM730自走車台の車体後部に、左右それぞれ2基ずつのミサイルと発射機から成るM54武装システムに装着された形で搭載されるが、システム全体は「M48シャパラル」と呼称される。

M54武装システムは全周旋回が可能で−5〜+90度の俯仰角を備えており、その最大有効射程は6,000mとされている。
MIM-72A対空ミサイルは、自らが備える赤外線シーカーによって捜索と追尾を行ういわゆる撃ちっ放し式ミサイルで、その後全方位攻撃能力を持つMIM-72C、射程を延長したMIM-72Fに段階的に発展している。
また自走車台も、改良型のM730A1に発展した。

M48シャパラルはアメリカ陸軍向けとして5,323両が生産されたのに加えて、輸出用として197両が生産された。
アメリカ陸軍のM730A1自走車台の内500両前後は、エンジンをデトロイト・ディーゼル社製の6V-53ディーゼル・エンジン(出力212hp)から、同社製の6V-53Tターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力275hp)に換装したM730A2自走車台に改造されている。


<M48シャパラル対空ミサイル・システム>

全長:    6.09m
全幅:    2.69m
全高:    2.89m
全備重量: 13.1t
乗員:    5名
エンジン:  デトロイト・ディーゼル6V-53T 2ストロークV型6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 275hp/2,800rpm
最大速度: 60km/h
航続距離: 410km
武装:    MIM-72対空ミサイル4連装発射機×1 (12発)
装甲厚:   28.58〜44.5mm


<MIM-72対空ミサイル>

全長:       2.91m
直径:       0.127m
翼幅:       0.63m
発射重量:    86.2kg
最大飛翔速度: マッハ1.0
誘導方式:    赤外線
有効射程:    15〜9,000m
有効射高:    15〜3,000m


<参考文献>

・「グランドパワー2018年2月号 戦後の米軍装甲兵員輸送車」 後藤仁 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2022年12月号 M113装甲兵員輸送車」 後藤仁 著  ガリレオ出版
・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」  デルタ出版
・「大図解 世界のミサイル・ロケット兵器」 坂本明 著  グリーンアロー出版社
・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著  三修社
・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著  グランプリ出版
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「世界のAFV 2018〜2019」  アルゴノート社
・「世界の最新陸上兵器 300」  成美堂出版
・「ミサイル事典」 小都元 著  新紀元社


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