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BMD-2空挺戦闘車





1979年12月のアフガニスタン侵攻作戦と、その後のムジャヒディン(回教徒ゲリラ)との戦闘に投入された経験から、BMD-1空挺戦闘車の主砲である30口径73mm低圧滑腔砲2A28「グロム」(Grom:雷鳴)は、対ゲリラ制圧戦闘ではその短い有効射程と低い命中精度、擲弾の低い威力が問題とされた。
そこでBMP-2歩兵戦闘車の登場に倣って、これと同じ80.5口径30mm機関砲2A42を搭載する空挺戦闘車の開発が1983年よりヴォルゴグラード・トラクター工場で始められ、1985年から量産に入った。

30mm機関砲を装備する新型砲塔をBMD-1空挺戦闘車とほぼ同じ車体に搭載した本車は、「BMD-2」(オブイェークト916)と称された。
BMD-2空挺戦闘車の砲塔はBMP-2歩兵戦闘車とは違って1名用のものであるが、武装の2軸安定化装置が装備され、走行間にも30mm機関砲や同軸の7.62mm機関銃PKTをもって目標に有効弾を集中できる。

主砲の30mm機関砲2A42は550発/分の発射能力を有しているが、BMD-2空挺戦闘車に搭載している弾薬数はスペースの関係から300発となっている。
30mm機関砲弾は弾種毎に2つの装弾トレイに区別して充填され、発射弾種の切り替えは機関砲装填口へのトレイの継ぎ替えで行われる。
通常、徹甲弾180発と高性能榴弾120発の組み合わせで砲弾は搭載されている。

また砲塔上面には9M111/9M113半自動誘導対戦車ミサイルの発射機を取り付けることができ、3発のミサイルを車内に搭載する。
BMD-1空挺戦闘車では車体前端両側に7.62mm機関銃PKTが固定装備されていたが、BMD-2空挺戦闘車では左側の機関銃が廃止され右側1挺のみとなっている。
固有の乗員は操縦手、車長兼砲手の2名で、その他に5名の空挺隊員を搭乗させることができる。

車体最後部は機関室となっており、5D20 V型6気筒液冷ディーゼル・エンジン(出力240hp)を縦置きに搭載している。
BMD-2空挺戦闘車は、BMD-1空挺戦闘車に比べて戦闘重量が約700kg増加したため路上最大速度がBMD-1空挺戦闘車の70km/hから60km/hに低下しているが、逆に路上航続距離はBMD-1空挺戦闘車の320kmから500kmに大きく延伸している。

BMD-2空挺戦闘車はロケット・ブースター式着地緩衝システム付きパラシュート降下装置PRSM925を用いて、Il-76またはAn-22大型輸送機より高度500〜1,500mからパラシュート投下できる。
乗員は別途パラシュート降下し、着地点で本車に乗り込むようになっている。
BMD-2空挺戦闘車は現在は生産が停止されているが、BMD-1空挺戦闘車等と共に空挺部隊での配備と運用は現在も続いている。


<BMD-2空挺戦闘車>

全長:    5.91m
全幅:    2.63m
全高:    1.97m
全備重量: 8.225t
乗員:    2名
兵員:    5名
エンジン:  5D20 4ストロークV型6気筒液冷ディーゼル
最大出力: 240hp/2,600rpm
最大速度: 60km/h(浮航 10km/h)
航続距離: 500km
武装:    80.5口径30mm機関砲2A42×1 (300発)
        7.62mm機関銃PKT×2 (2,940発)
        9M111ファゴット/9M113コンクールス対戦車ミサイル発射機×1 (3発)
装甲厚:   6〜23mm


<参考文献>

・「パンツァー2000年8月号 ソ連・ロシア装甲車史(最終回) BMD・BTR-70/80/90シリーズ」 古是三春 著
 アルゴノート社
・「パンツァー2000年4月号 続 垣間見えてきた旧ソ連の戦車技術」 二木巌 著  アルゴノート社
・「パンツァー2010年10月号 ソ連空挺戦闘車輌の系譜」 竹内修 著  アルゴノート社
・「ロシア軍車輌写真集」 古是三春/真出好一 共著  アルゴノート社
・「グランドパワー2020年4月号 赤の広場のソ連戦闘車輌写真集(4)」 山本敬一 著  ガリレオ出版
・「グランドパワー2020年5月号 赤の広場のソ連戦闘車輌写真集(5)」 山本敬一 著  ガリレオ出版
・「世界の軍用車輌(3) 装軌/半装軌式戦闘車輌:1918〜2000」  デルタ出版
・「異形戦車ものしり大百科 ビジュアル戦車発達史」 齋木伸生 著  光人社
・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著  グランプリ出版
・「世界の最強陸上兵器 BEST100」  成美堂出版
・「世界の最新陸上兵器 300」  成美堂出版
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「世界の装軌装甲車カタログ」  三修社


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